第48話 衛星兵器無人ちゃん8号
その頃国防省指令室では。
「衛星兵器無人ちゃん8号の抵抗が厳しくコントロール権の奪還の成功率は5パーセント。既に衛星の方にもずいぶん損傷が出ていて、軌道から外れてきております! この起動のまま降下すると、80パーセントの確率でアメリア本土に衛星は墜落します!」
「軌道上で破壊してしまうのだ!」
「不可能です、成功確率ゼロパーセント残弾が切れたので帰還します!」
「感情のない兵隊だとこうなるのか……」
「まさかこんなことになるとは」項垂れる大佐。
「墜落地点を計算し、住民を避難させましょう!」
「そうだな、それしかないな」
その時指令室のドアが、轟音とともに開いた。というか、吹っ飛んでいた。
「ちょっと、マリアちゃん。ドアの前に人がいたらどうするの、危ないなぁ」
「いやー、ほんとに手薄だったね。トラップなしで司令室にこれちゃったよ」
あたしたちはパワードスーツでドアをぶっ壊して、司令室に侵入していた。
ポカンとした顔でこちらを見る、大佐と副官。
その時、あたしの体は自動的に動いた。何だか久しぶりだなー、この感覚。
「コトコ、ハッチ開けたら危ないって!」
「お、お父さん! やめて! 事故に遭ったあたしを助けてくれたのはロボットたちなの!」
それを聞いてショックな顔をしている副官。
「えっ? お父さん? 大佐って独身じゃなかったんですかー!」
「お、お父さんって? コトコ、謎すぎて何が何だかわからないよもう」
マリアちゃん、とクリスティちゃんの、脳内はプチパニック状態だ。
「キミが何故ここへ?」
あなたが色々いらん事してくれるから、来たんですよ! と言いたいところだが、現在この体は本来の持ち主の制御下にあった。
「お父さん!」涙を流して、大佐に駆け寄る、あたし、じゃない、あたし。
「ヒナ、ヒナなのか?」
「うん!」
「本当にヒナなのか?」
「うん! うん! なんなら、お父さんの秘密を話そうか」
耳元で何やらささやくヒナちゃん。
あのー、あたしには聞こえちゃってますよ。
そして、ヒナちゃん感動の御対面のところ何なのですが、なにか、モニターに恐ろしい映像が映ってますよ! あたしの信号が脳へ伝わり、モニターの方へ眼を向けるヒナちゃん。
副官も、それに気が付く。
「大佐、衛星の方を何とかしないと」
「もう遅い人工衛星の落下はとめられない。すまないヒナ」
「すまないヒナじゃなーーーーい! 生き延びるのを諦めるなーーーー!」
娘に怒鳴られ驚く大佐。ヒナちゃんも驚いている。ごめん、あたしの声が漏れただけなんですけどね。
「そうだな、あきらめちゃだめだな」
あたしはヒナちゃんに情報を送った。
「ヒナちゃん、あたしを、首のアクセサリーを手のひらに乗せて、両腕を水平に広げて」
頷くと、あたしを首から外し、両手を広げた。
「よし、じゃぁそのままね」
そして、あたしは量子の体を構築した。ここで、お姉さんのあたしが現れたら、さらにややこしそうなので、みんなのことを考え10歳の体にした。
「え?! コトコちゃんが二人にー!」
「ヒナが二人に?!」
驚くこの部屋にいる面々。
そこへブルースのパワードスーツもやってきた。
「なに? なぜコトコが二人?」
「二人の見分け方はアクセサリーを付けてる方がコトコです!」
あたしが、説明を入れる。
「もう、戦闘は必要なさそうだな。パワードスーツから降りるブルース」
そして、モニターに近づく。
「衛星兵器無人ちゃん8号が、落下するのか?! このまま、落ちれば相当な被害がでるな」
「…………」
再び、部屋中に重い空気がひろがった。
その重い空気を打ち破って、ブルースが口を開いた。
「コトコなら止められるだろう。さあ、行ってこい!」
「え!?」
「…………」
このフロアの皆が、あたしを見つめている。そして、転生してから、あたしを助けてくれた人たちの顔が次々と浮かんだ。同時に、あたしは思考を巡らせた。
「…………」
「……よし! 行ってくるよ!」
みんなは呆けた顔であたしをみつめていた。
「ヒナちゃん、あたしの携帯端末がポシェットに入ってるのでください。一緒に入ってるハムスターはそのままで」
「えっ!? なんで!? ぼくも行くよ!」
「茶々丸は待ってて、ちょっとあたしに考えがあるから」
「分かったよ。変なフラグが立たないように黙っとくよ」
あたしは、ニッコリほほ笑んだ。
「マリアちゃん、クリスティちゃん。あたし、今から凄いことになるけど驚かないでね。ほんと、凄いよ! もう、ともだちやめよかなって思うかもしれない」
あたしはみんなの驚きが少しでも半減するように振舞った。
「大佐、ちょっとここの窓消しますね。あたし出るのに邪魔なので。あと、この敷地の地面随分荒れるかもしれません。緊急事態ってことで許してください」
そして、あたしは窓ガラスに手をあて消し去った。 ザワワ、驚くこの部屋の面々。
次に、あたしは窓際に立った。
「そこ、危ないよ、落ちたら死ぬよ!」とマリアちゃんが声をかけた。
「…………」
「大丈夫! では、ちょっと行ってきます!」
「こら、コトコ、そこ飛び降りたら、行くのは天国か地獄だよ!」
「大丈夫! まあ、みててよ!」
そして、あたしは窓から飛び降りた。




