第47話 乗車定員1名
通信を終了し周囲に目を向けると、クリスティちゃんとマリアちゃんが慌ただしくなっていた。
「どうしたの?」
「なぜか、連邦軍が、連邦警察よりも早く来た。みんな、ブンブン丸に乗り込め!」
「ブンブン丸は乗車定員1名だよー」クリスティーちゃんが、おっとりと話す。
「えっ!? あたしとマリアちゃん、さっき二人で乗ったよ」
「さすがに三人は無理だと思う」
頬に手をあて、思案顔で、搭乗席を見つめるクリスティちゃん。
「早く! 早く! 無理でも何でも乗るんだよ!」
マリアちゃんは運転席に乗ってあたしたちを急がせる。
「早く、乗って!」あたしはクリスティちゃんを押し込んだ。そして、すかさず乗り込む。
「コトコちゃん、痛いよぅ」っとクリスティちゃん。
「誰だよ、僕の頭踏みつけたの!」
「ごめん、誰だかわかんない!」
あたしはペロリと舌を出した。この角度だとマリアちゃんには見えない。
マリアちゃんは踏みつけられた頭を押さえながら、ムッとして言った。
「ちょっとみんな、お菓子食べ好きなんじゃないの!」
「それって、太ってるって言ってるの?」
あたしは売り言葉に買い言葉で、返してしまった。
「コトコちゃん、それ以上言ったらともだち関係に亀裂がはしるよー。みんな、お互い様だと思うよー」っとおっとり、厳しいことを言うクリスティちゃん。
「ほら、みんな乗れたから、とりあえずこの話題はやめよう。早く逃げよ。逃げるが勝ち!」マリアちゃんはブンブン丸を最高速で走らせる。
「マリアちゃんの操縦テクニックは結構なものだから。いやいや、仕事している人には負けないよ」
あたしは身を乗り出し、マリアちゃんの耳元で話した。
「マリアちゃん。どこ向かってるの?」
「向かってるんじゃなくて、逃げてるんだよ!」
マリアちゃんは真剣な顔で、忙しくマシンを操作している。
「とりあえず国防省へ向かって!」
「国防省ってどこだよ!」
「マリアちゃん、国防省の場所知らないの? このまえ学校で習ったじゃないかぁ」
「なに! 僕が勉強してないとでも言うのか!」
「いや、そういう話じゃなくて!」
あたしはバタバタと手を動かして、弁解する。
たまりかねて、こちらを振り向くマリアちゃん。脇見運転で、ブンブン丸が街路樹に突っ込みそうになる。
「マリアちゃん。まえ、危ないよ」とクリスティちゃん。
ササッっと、パワードスーツを操作し交わす。マリアちゃん。
「じゃあ、どう言う話なの!」
「二人ともともだち関係に亀裂が入るから辞めてぇ」
とクリスティーちゃんがまた、おっとりと言う。
「じゃあ、あたしの言う通りブンブン丸を走らせて!」また、あたしが道を指示する。
「アメリア軍の車、まだついてくるよぅ」
しっかりと後方のモニターを確認してくれる、クリスティちゃん。
「あれれ? よく考えたら、あっちは車、こっちはパワードスーツ。ぶっつぶせばいいんじゃないのかなぁ」過激なことを言い出す、マリアちゃん。
マリアちゃんの過激な一言からひらめく。
「ぶっ潰すのはどうかと思うけど。ひっくり返しましょうか」
「よし! それだ!」
マリアちゃんはブンブン丸を急激に反転させた。
遠心力でクリスティちゃんが、あたしの方に、のしかかってきた。
「いてててて!」っとあたし。
急に振り返ったブンブン丸に驚く、アメリア軍の装甲車。
危険を察知したのか急激なスピードでバックしていく。
追いかけるブンブン丸。銃撃してくる軍の装甲車。
「ちょっと傷つくじゃないか!」装甲車をひっくり返すマリアちゃん。
「ふぅう、これで大丈夫」
マリアちゃんは額の汗を片手で拭うと、満面の笑みを浮かべた。
「よし、国防省へ向かうぞ!」
「おおーっ!」上方へ、こぶしを突き上げる三人であった。
あたしたちは国防省に到着していた。
少し距離を取り、生い茂った街路樹にブンブン丸を隠す。
「どうしよう、もう乗り込んで行って大丈夫かな?」とマリアちゃんが言った。
「ブルースが来るまで待とう!」とあたし。
「ブルース? ブルースって、コトコちゃん。エドナ重工のブルースさん? ブルースさんのこと知ってるの?」
「あっ!」っと口を両手で押えるあたし。
「ああ、またボロがでたよ。コトコはもうボロボロなんだよ。秘密だらけのボロボロなんだよ。帰って落ち着いたら。こと細かく教えてもらうことになってるんだ。お茶と、お菓子を用意して、ゆっくり話を聞かせてもらおうね!」
マリアちゃんの顔が怖い……。
「あっ!」何かを思いついたマリアちゃんが、口を開いた。
「収穫祭で使ったドールが積んであるんだった。ちょっとドールで中の様子を見てくるよ」
「あっ、あれか」
話を聞いていたクリスティちゃんが、トランクを見つけてマリアちゃんに手渡した。
マリアちゃんはトランクを開いてベレー帽をかぶった。ドールが目を開いた。
「プフフ、やっぱり可愛すぎるよ」
「ちょっと行ってくるね」
「あれ? なんかちょっと、喋り方も女の子っぽくなってない?」
「いちいち細かいことに、注目しないでくれるかなぁ」とドールがしゃべった。
クリスティちゃんが、ハッチを少し開いた。
ドールはその隙間から飛び出ていった。
そして、あっという間に国防省の中に消えていった。
「あのドール、小さいのに凄い運動能力だね」
あたしたちはドールのモニターを見守っていた。モニターを見ながら思った。
確かに手薄だね。機械の国の殲滅に全精力を傾けてるんだな。
国内はエドナ重工と元老院を抑えておけば、気にするところはさほどないものね。
マリアちゃんは物陰や死角を使って奥へと進んで行く。
「ちょっと……、うますぎなんじゃ……。いつもこんなことやってるんじゃないでしょうね」
そうこうしてると、通信が入った。
「待たせたな、コトコ!」
パワードスーツで、颯爽と現れたブルース。そして、仲間パワードスーツ3台も連れている。
「クリスティちゃん、ブンブン丸の通信って使える?」
コードを伝えると、クリスティちゃんがささっと、設定してくれた。ブンブン丸のスピーカーから音声が流れ、モニターにブルースが映った。
「聞こえるか?」
「うん、聞こえるよブルース。クリスティちゃんも一緒に乗ってるよ」
「クリスティお嬢様。無事でよかった!」
「すみません、ブルースさん」
自分が誘拐されるなんて思ってなくって。
「無事だったんだから、いいんですよ。それより、次の問題をなんとかしましょう。最低限の警備は残っていると思うが、全精力を機械の国の殲滅に傾けているので、国防省は手薄だ。乗り込んで指令室を制圧する」
ブルース、いまあたしのともだちが内部の偵察に行ってるので、ちょっと待ってて。
「おい、内部の偵察に行ってるって、大丈夫なのか?」
「大丈夫みたい。っていうかなんかすごく手馴れてる。アハハ」
そうこうしていると。ドールがハッチの隙間から入ってきた。マリアちゃんが、目を開いた。
「コトコ、乗り込もう! 普通の警備しかいなかった」
ブルースが驚いて言った。
「おいおい、ともだちって子供じゃないか!」
「そりゃそうでしょ。あたしのともだちなんだから!」
「よく考えるとコトコたちが行くと、二人が危険だ!」
「なに! あたしは危なくないってことか!」
ブルースはあたしを見てニヤリとした。まあ、仕方ないんだけど。ちょっと傷ついた。
「あたしはどうしてもオニール大佐に会わないといけないから、そっちに乗せてくれる」
あたしがハッチから出ようとすると。がっしり二人につかまれた。
「僕たちも行く!」
二人の眼力にあたしはたじろいだ……。
「ぶ、ブルース。国防省は手薄なんでしょ。みんなで行こう! そしてあたしたちをしっかり守って」
「相変わらず無茶を言う。じゃあ俺についてきてくれ」
「ブンブン丸を含め5台のパワードスーツで、国防省へ乗り込む」
国防省に侵入すると、守備隊がこちらに気付き応戦してきた。ブルースたちが、それに対応してくれる。
「コトコ、国防省の見取り図を送っておいた。第一指令室に向かへ、そこにオニール大佐がいる」
「マリアちゃん。あたしの指示に従って走って!」
「わかった!」
「コトコちゃん。ブルースさん見取り図を送ったって言ってたけど、いったいどこに送ったの?」
「クリスティ。コトコのこと気にしてたらキリがないからさぁ、さっき言ってたお茶会で教えてもらおう」
「うん、わかった」
「フフフ、お茶会楽しみにしとこうね!」
怖い、怖いよ、マリアちゃん。オニール大佐に会う前に、あたしのメンタルぶっ壊れちゃいますよ。




