第45話 元老院
あたしとマリアちゃんは元老院の方々に、くるりと囲まれていた。顔には簾が垂れており、表情が分からないようにしてあった。
「君がコトコちゃんかね?」
「はい、そうです」
簾でよくわからないが、マリアちゃんの方を見た気がした。
「あのー、クリスティちゃんの監禁場所を教えてもらえるってことで、来たんですけど」
「おお、そうじゃったな。その前にわしらの希望を叶えてもらおうかのう」
「はい、あたしが、応えられることなら……」
「その胸のアクセサリーのことじゃが」
あたしは胸のアクセサリーにチラリと目をやった。マリアちゃんも、あたしをチラリと見た気がした。
「そう、その胸のやつ、君はただのアクセサリーだと思っているかも知れんが」
「そんなことは思っていませんけど。大切なものなので」だってこれが、あたしの本体なのだから。
「そうかの、じゃあその宝石が賢者の石ってことは知ってるんじゃな? わしらはレッドレアクリスタルと呼んでおるが」
「えっ! 賢者の石? これが? あの? いろいろな物語に登場する賢者の石ですか?」
「そうじゃ!」
頭の中で何かがカチリと噛み合った。これがあると、量子をコントロールできる。人体が生成できる。賢者の石があると、それを触媒に人体錬成したり蘇らせたり。
「…………」
「わあぁぁぁぁあ!」
「なっ、なんじゃ急に!」
「君らは学院で習ったかな? AIの暴走で現在機械が占拠しておる地域がある。そこに、レッドレアクリスタルの鉱脈がある。そこから取れる鉱石が賢者の石なんじゃ。その鉱石を使って、わしらは寿命を延ばし生き永らえてきた。だが、AIたちとの戦いが始まってから、入手が困難になってしまった。わしらは軍を動かし、機械が占拠している地域を取り戻そうと100年戦っている」
「なるほど、そういうことだったんですね」
「しかし、純度の高い大きなものはなかなか出てこないんじゃが、コトコちゃんのそれは相当な代物じゃな。最高級品じゃ!」
「こっ、これはあげられませんよ。わしらも、そんな大それた代物は使い道に困る」
あたしはふたたび胸のアクセサリーを見た。
「大それた代物……」
「でっ、コトコちゃんはそれを何処で手に入れたんじゃね?」
「元老院の方々と同じ場所だと思います。 なんじゃと! なぜ、いま、あそこから入手できるんじゃ?」
あたしはマリアちゃんの方を見た。マリアちゃんは黒い瞳をパチクリさせ、あたしを見返した。そして、こてりと頭を傾けた。
あたしはマリアちゃんにニッコリほほ笑み、元老院の人たちの方に向き直った。
ふーっと息を吐くと、覚悟を決めた。
「あたしは機械の国から来たのです!」
チラリとマリアちゃんを見る。相変わらずキョトンとしている。何のことやらよくわかってない感じだ。
「じゃあその鉱脈に出入りできれば、機械の国と仲良くしてくれますか?」
「わしらとて、戦争がしたいわけじゃ無いのでな、レッドレアクリスタルを融通してくれるなら和解するぞい」なんか、あっさり話がついてしまった。
「では軍隊を引いてください。あたしが機械の国と話をつけます。っと言うかもともと和平を結ぶために来たのです」
「うぉぉぉぉ! コトコちゃんは救世主じゃ! わしらのアイドルじゃ! いや既に学院のアイドルじゃったな」
「でっ、クリスティちゃんの監禁場所はどこですか? 先にそちらを片付けないと!」
「おお、そうじゃったな。ほれ、座標を教えてあげなさい」
白装束の者があたしに近づいてくる。そしてあたしに何か端末を渡した。
「そこにクリスティの居場所が表示されておる。早速助けに行ってあげなさい。わしらは訳あって、動き回ることができん。今あの子を助けられるのはコトコちゃんだけじゃろう。なかなかの危険なミッションになるかもしれん。そのミッションに挑戦するかね?」
「コトコが助けるしかないでしょ!」ポシェットから、茶々丸が顔をだした。
「また、カットインしたな。茶々丸! わかってますって、行きますよ!」
「わしらはコトコちゃんの成功を祈っておるぞ!」
「クリスティちゃんの救出が済んだら、ここへ戻って来ればいいんですか?」
「わしらはここからまた移動し、しばらく姿を隠す。すべてが整えば、また合えるじゃろう」
「リムジンで、元の場所まで送ってあげなさい」
白装束の者は「はっ!」といって、あたしたちを車に乗せた。キュキュキュとリムジンを急旋回させて、来た道を戻っていった。
ブンブン丸まで戻ると、あたしとマリアちゃんは乗り込んだ。
「怖い思いしてるかもしれない、早く助けてあげよう。クリスティちゃんのとこまで行こう」っとあたしは言った。




