第43話 コンサート
あたしのコンサートが始まった。ヒロト先輩の話では、一貫校に途中で編入してくる子は少ないらしい。学院では可愛い子が学院に編入してきたと噂になり水面下で既にファンがついていたらしい。さらに、企画研究クラブのネットでの宣伝もあり、外部からも可愛い幼女を一目見ようと大人のおともだちが、学院に押しかけて来ているとかなんとか……。まあ、とにかく予想以上の盛り上がりを見せていた。
「わぁー! レナード、コトコのイベントが始まるわよ」
「さすがアメリア学院、設備が本格的だね」
「朝から来たのに、コトコ様と会えませんでしたね」
手で、ひさしを作って、キョロキョロと周囲を見渡すナンシー。
「コトコの出番は午後からだから、午前中はともだちと出店巡りするって言ってたわ。ともだちと楽しんでたんでしょう」
「それなら仕方ありませんね」
ナンシーは周囲の状況を観察していた。するとある所で視線がとまった。
「あれ?! ジェームズおじ様。しかも、私服でこんな所に来てるなんて、なんだろう?」
「本当だ、オニール大佐じゃないか。まさか、こんな所で軍の仕事でも無いだろう」
「ちょっと、挨拶してきますね」
「そうだね、そうしてあげなさい」
「はい!」っとオニール大佐の方へ向かうナンシーであった。
その時、観客席では。アニーのレッドレアクリスタル計測器が鳴り響いていた。
「大佐もの凄い反応です! あんなものいったいどこで手に入れたんだろう」
副官は瞬きもせずアクセサリーを見つめる。
一心不乱にコトコをみつめるオニール大佐。そこへナンシーが近づく。
「ジェームズおじ様、ご無沙汰しております。何か取り込み中でしたか?」
「ナンシーちゃんじゃないか。なぜ、こんなところに?」
「あたしはここの卒業生だから、そんなにおかしくも無いんですけど……。でも、まあ、今日はこのコンサートが本命です! おじ様の方こそどうしたんですか?」
意味ありげにほほ笑むナンシー。
「このコンサートを観にきた? 彼女はキミの知り合いなのか?」
「はい!」
「ナンシーちゃん、あの子は誰なんだ?」
「ヒナに似てますか?」
オニール大佐の横顔を覗き込むナンシー。
「ああ、あの頃のヒナを見てる様だ」
「ペンデルトン家の娘のコトコ様です」
「なに、彼の娘は私のヒナと同じ旅客機事故で……」
「初めて見た時は私も驚きました。でも、ヒナは生きていれば、私と同じ17歳です。私は持病の喘息のせいで、あのツアーには参加出来ませんでした。おかげで命拾いしましたが、多くの友人を亡くしました。ペンデルトンさんたちはその、ショックでふさぎ込んでいた私に手を差し伸べてくださいました。自分たち自身も、苦しい最中にです。そして、今度はコトコ様を養女として迎え入れ、さらに前を向いて歩き出しました。ヒナはおじ様にもそうなって欲しいと願っていると思いますよ」
「俺は妻も子も失ったんだ! やつとは違う」
そこへ、耳打ちする男が現れる。大佐が何か指示をだした。群衆の中に消える男。
「私は用事ができたので失礼する。ナンシーちゃんに会えてよかったよ」
オニール大佐は振り返って舞台から遠ざかった。
そして、アニー副官に囁いた。
「行くぞ、あれを決行する」
「ほんとにやるんですか?」
「ああ、我々の作戦は動き始めたもう止められない」
「気が進みませんけど、しかたないですね」
そう答えた彼女の表情は暗かった。
「レッドレアクリスタルはどうするんですか」
「先程部下に指示を出しておいた」
その頃、発明クラブ一同はコンサートに歌声に引き込まれていた。そんな最中、突然マリアちゃんの携帯電話が鳴った。
「こら、マリア、ちゃんとスマホはオフにしておきなさい!」
カイト先輩に睨まれるマリアであった。
「あれ、ヒメ先輩どうしたんですか?」
「クリスティちゃんそこにいる?」
「いいえ、いませんけど、そういえば戻ってくるの遅いなぁ」
皆に気を使って席から離れるマリア。
「学生警備隊の方から報告があって、学院の誰かが誘拐されたみたいなの」
「ええーっ?!」
「その人物像がクリスティちゃんに似ていたの」
旧校舎へ向けて走り出すマリアであった。
あたしのコンサートはヒロト先輩の予想通り大盛況だった。
あたしは全楽曲を歌い終わって舞台裏に戻った。アンコール! アンコール! っとあたしの再登場を求める歓声が沸き起こっていた。
その時、あたしの本体に直接通信が入った。
「えっ! ブルース、この通信って使っていいの?」
「もうコソコソする必要もなくなったんだ。コトコのアクセサリーに、違う意味で興味を持たれてる。コトコの本体に組み込まれているクリスタルは量子をコントロールする触媒になる素材なんだ」
「えっ、そうだったの? でもまあ、そうか、それがないと量子コントロールできないもんね」
「そして、クリスティーが誘拐されたんだ!」
「えっ?!」




