第41話 あの人、誰?
大きな量子の動き。レッドレアクリスタルの反応。あの学院には何かある。収穫祭は外部の人間が自由に出入りできる。
絶好の機会だと、大佐と副官はアメリア学院に来ていた。
「へー凝ってますね! 大盛況ですね!」
二人とも今日は私服だ。目的の人物を見つけようと、周囲に眼をやる大佐。
「わー、凄い人ですよ! 探すの大変ですね。部下に任せた方が良かったのでは。まあ、私は嬉しいですけど……」チラッと大佐を見る。大佐は気にも留めていない感じだ。
「しかし、あの子の胸のアクセサリーが、本物のレッドレアクリスタルだとすれば、あり得ない大きさです。まさかとは思いますが、計測はしときますね」アニーは片手でやっと持てるほどの大きな端末をかばんから取り出し、何やら操作を始めた。
「よし、セット完了! これで、半径30メートル以内に対象が入れば反応がでますよ」そう言うとアニーはかばんに端末を戻した。
大佐は周囲に目をやり対象を探している。
アニーも周囲に目をやる。すると、たくさんの屋台が目に入った。
「それはそうと、大佐。おなかすいてませんか? 何か食べましょうよ」
「遊びに来たんじゃないんだぞ」
「だけど、何もせず、キョロキョロしてたんじゃ怪しまれますよ」
「それもそうだな。アニー、君に任せる」
「わかりました。何にしようかなー。焼きそば、たこ焼き、焼きとうもろこしはすぐ行動できないしなぁ。ちび丸カステラとか良いんじゃないですか?」
アニーはちび丸カステラの屋台に近づいた。
「おじさん、ちび丸カステラ、2つくださいなー」
「おっ、可愛いおネーチャンだね! サービスだ! 多めに入れとくよ」
「ありがとう御座います」
屋台のおやじは大佐とアニーを交互に見ると、茶色い袋をふたつ手渡した。そして、アニーに向けて、エールを送るようにぐっと親指を立てて見せた。
アニーは頬を少し赤く染めると、くるりと振り返って大佐のもとへ駆けていった。
「大佐、ちび丸カステラ買ってきましたよ。おまけもしてもらいましたー」
ちび丸カステラを、はいっと手渡す。大佐はちび丸カステラを手に周囲を見渡す。アニーは早速ちび丸カステラを口に入れていた。
「美味しい! 久しぶりに食べると美味しいなぁ」
周囲を捜索する大佐は一向に口にしない。見かねたアニーはカステラを大佐の口に近づける。
「はいっ! あーん」アニーはポカッと頭を殴られた。
「いったーい! 酷いです大佐」
「お前が変なことするからだ」
「大佐も少しは気を抜かないと、倒れますよ」
そんな他愛のないやり取りをしていると、ピロン! ピロン! ピロン! っとアラームが鳴った。
「えっ! まさか?! レッドレアクリスタル計測気に反応が出てる。大佐! 反応が出てます」
大佐は周囲を見回し必死に反応元を探した。
「何処だ! どこにいるんだ!」
あたしたち三人は屋台近くのベンチを確保したところだった。屋台で購入した食べ物を口に運ぶ。
「マリアちゃん、クリスティちゃん、焼きそば美味しいね」
収穫祭の出し物がプログラム後半のあたしたち三人は、今しか祭りを回る時間がないってことで、屋台を満喫していたのだ。
「うん、美味しい。確かに美味しいけど……。 なんで、ヒロト先輩までついてきてるんですかー!」マリアちゃんはご立腹だ。
「コトコくんが逃げないようにね! それはそうと、コトコくん、青のりつけて舞台に上がらないでくれよ」
みんなで、ワイワイ屋台を堪能していると、あたしは肩を叩かれ振り向いた。
「ん? だっ、誰だ?」
あたしが、キョトンとしていると。ガシッと両肩を掴まれた。
「君は誰なんだ?」両肩を捕まれ揺すられる。
「えっ? あ! ちょ、ちょつと、貴方こそ誰なんですか? そんなに揺すらないで下さいよー!」相手はそんなつもりは無いのかも知れないが、大人の男の人の力は強かった。ぐらんぐらん揺すられる。
「やめて! 焼きそばがこぼれるー。あて、あてててて」
あたしは頭を抱えて蹲った。また頭痛が! 急な出来事に、マリアちゃんも、クリスティちゃんも、反応できずにいた。視線をあちこちにやり、状況把握に務めている。
「あっ! よく見たらこないだの大佐だ! 僕のともだちに何するんですか?!」
マリアちゃんはあたしと大佐の間に入り引き剥がしにくる。大佐の腕力に無理だと悟った、マリアちゃんが叫んだ!
「痴漢でーす! 痴漢がいまーす!」大佐は慌てて手を離した。
すかさず、マリアちゃんはあたしの手を掴んで走り出した。それに続いてクリスティちゃんも走る。マリアちゃんは校舎に駆け込んだ。
「ふー、ここまで来れば大丈夫じゃないかな。このエリアは部外者立ち入り禁止にしてあるから、入って来れないでしょ」
「ちなみにあの人、誰?」
「アメリア軍の大佐らしいよ。前に発明クラブに何かの調査に来てた」
あたしは焦っていた。まさか、目を付けられた?
例によって、小規模通信を使って茶々丸と相談する。
「ちょっと、茶々丸! バレないって言ってたじゃないかー!」
「量子コントローラーを使ったのはあの、一瞬だけだったから大丈夫だと思ったんだけどなぁ」
「大丈夫じゃ無いし! 大佐来てるし! がっしり肩掴まれたし!」
ピロピロピロピロ……。皆がビックっとする。
クリスティちゃんが、おっとり口を開いた。
「そうだ、アラームセットしてたんだった。マリアちゃん、そろそろ模擬戦の時間だよ」
「えっ! もうそんな時間? どっ、どうしよう」




