第4話 ああ、やっぱり
「バージョン10008、稼働に問題が無いかを確認!」
その、管理者からの号令で、あたしの身体は自動的に立ち上がった。
「なっ! なに、どう言うこと?」
手足の動き、各部の関節が稼働し、問題の有無を確認しているようだ。他人ごとのように言っていると思うだろうが、そうなのだ。あたしの身体は先程から自分の意志とは関係なく動いている。管理者からの指令とあたしからの意思で、この身体が稼働しているということだ。完全に自由な体でないというのが不満だが、人間だった頃も学校や社会に縛られていたので同じかなとも思った。
「あっ、体が動く!」そして、装備を行うよう指示がきた。「装備? 何の装備?」
周囲を見回した。ベッドに銃らしき物と短剣を見つけた。
「なっ、なっ……、なんで、こんなの必要なの?」コテッと頭を傾けた。
銃と剣を手に取ると、腰の辺りに収納した。
「じっ、自分の腕が勝手に! 自動の部分と自分で動かす部分があって、ややこしいよ!」
「バージョン10008、問題が無ければ速やかに出撃しなさい」
「えっ、出撃? やっぱり、戦うの? いきなり、何と?」
あたしの意思とは関係なく、出撃に向けて準備が続く。
またも、足が勝手に動き移動した。あたしの体を後ろから操作している感覚、まるで操り人形である。必死に操りに抵抗をする。
「あっ! あぅう! どうなってるのいったい!」
近くにあった、アニメでよく見るような、カタパルトにセットされた。
こんどはそのカタパルトがガクんっと動いて上昇していく、凄いスピードだ。
「わっ! わぁぁぁぁぁあ!」
あまりの速度に驚いて目を瞑った。次の瞬間カタパルトは止まり、あたしだけがほうり出された。
「うおぉぉぉぉぉぉお!」
周囲を確認するために目を開ける。凄い、広い、澄み渡る青空、す、素晴らしい景色! そして、無数の戦闘機とロボット兵器……。
「いやぁぁぁぁぁぁあ! むっ、むりぃぃぃぃぃい!」
あたしは空を飛んでいた。敵がいなければ最高のロケーションなんだけど、そこは戦場の真っ只中だった。
周囲には60体ほどの戦闘ロボットが空中に浮いていた。識別コードのようなものがあって、敵と味方との区別があるのが自然とわかった。すでに戦闘は始まっていて、そこに援軍として導入された感じだ。均衡していた戦場が、一気に見方優位に傾いたような感じではあるが……。
「怖いよぉぉお! やだよぉぉお! 神様のあほぉぉぉぉぉお!」
仲間もいるが何も喋らない。考えがよくわからない。い、生き延びたい! 死にたくない! 一度は死んだけど死にたくない。
あたしは腰に収納していた銃を取り出し、出来るだけ後方で目立たないようにしていた。それでも、時折攻撃を仕掛けて来る者がいた。それを銃の乱射で、なんとかしりぞけた。
1時間半もすると、敵の劣勢が濃厚になってきた。引き際と見て取ったのか、敵の残存兵力が撤退を始めた。この戦いは我が軍の勝利となった。
「よ、よかった。生き延びた!」
自動的にドックに帰還。そして最初にいたベッドに戻された。
とにかく、訳が分からない。情報が欲しい。でも、あの記憶のフォルダは除きたくない。
ここはどこで、なにと戦っているのか? その中であたしはどんな存在で、これから何をしていくのかを知りたいと思った。
そのためには自由に動き回らなければならない。しかし、あたしの体はあたしの指示だけで動くわけではないのだ。
とりあえず、指令を出してきた管理者の方へ意思を送ってみることにした。
「あのー、ちょっと自由にしたいのですけど駄目ですか? この建物を見て回りたいのです」
あたしに違和感を感じたようで、返答が帰ってきた。
「バージョン10008、君も感情を手に入れたのですか?」
思いがけない返答に、「感情というかなんというかえーっと記憶があるというか?」しどろもどろになっていると、また言語が届いた。
「今から経路を送ります。速やかにこちらに出向きなさい!」
ベッドから起き上がり指示された目的地へ体が自動的に向かっているような、経路を自分でたどっているような、不思議な今まで味わったことのない感覚で向かっていった。
移動中キョロキョロと周囲を見回した。
無機質な通路が延々と続いており、所々に横道や扉があった。壁が発光しているのか特定のライトは見当たらなかったが、凄く明るかった。
どのくらい歩いただろうか、一つの壁の前で立ち止まった。立ち止まされたと言ったほうがいいだろうか? しばらくすると、スーッと壁が消えた。




