第35話 発明コンテスト授賞式
「マリアちゃん、おはよう!」
「おはよう! コトコ」
いつもなら、あたしより先に机に座っているクリスティちゃんの姿がなかった。
「あれ? クリスティちゃん休み?」
「クリスティは軍の式典に出席してるんだよ」
「なんで、軍の式典なんかに出席してるの?」
「そっか、コトコが来る前の話だから知らなかったんだな」
「えっ、なに?」
「旧式パワードスーツ引退の式典なんだけど、学生発明コンテストの授賞式も合わせて行われるんだ。クリスティの制作したパワードスーツが賞を取ったので、表彰式に出席するために行ったんだよ」
「そうなんだ」
「僕も行きたかったんだけど、参加者が2名になってて、行けなかったんだよー」
「わーーーん」っと泣きながらあたしに抱きついてきた。
「ちょっとマリアちゃん、あたしの胸モミモミしないで! マリアちゃんの制服パンツスタイルだから、ビジュアル的にいろいろ問題あるよ」
「あっ!」ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「何かまた、いらんこと思いついたんじゃないでしょうね!」
一方アメリア軍の方では。
「アニー、あの学院の発明クラブの構成員については調べてくれたか」
彼女はパソコンに向かいながら答えた。
「はい調べました。確かにあの子はエドナ重工会長の孫娘ですね」
「やはりな」
「それで、調べてどうするんですか?」
「まぁ、使えるかも知れんからな」
「あんな可愛い子たちに、怖いことしないでくださいよ」
「周囲の監視カメラの映像はどうだった?」
「いま見ています。なぜか、あのあたり監視カメラが少ないんですよね」
「この映像はなんだ?」
「これは校舎の方の監視カメラですね。お姫様だっこで、誰か運んでるみたいです。病気か何かで倒れたのかな?」
「この後、発明クラブ員が続いて校舎へ入っていってるな。大きな量子の動きと直接繋がらないが、何か気になる。抱えられてる少女のアップの映像はないのか?」
「このカメラはどうでしょう? これなら顔がわかりますね」
「…………」
「大佐! どうかしました? 何か気になる点でも?」
「…………」
「この子が首に掛けてるアクセサリー、レッドレアクリスタルに似てますね。本物ならあり得ない大きさになりますが……」
「まさかな……」
「ですよねー」
大佐はモニターを熱心に見つめている。数分の沈黙があった。そして、その沈黙を破るように、アラームが鳴った。
「ピロピロピロ」
「あっ、もうこんな時間だ。そろそろ式典へ行く時間ですよ」
アメリア連邦平和記念公園では。
「おはよう、クリスティ」
「あっ、カイト先輩、おはようございます」
「あっ、ブンブン丸だぁ」
ぽてぽてとブンブン丸に駆け寄るクリスティ。
ブンブン丸と呼ばれたパワードスーツが賞を受賞したマシンである。
「クリスティ式典が終わるまで、ベタベタ触らない」
カイトの方を振り返り、コクリと頷くクリスティ。
「当然だが、たくさんの軍人が来ているな……」
二人がキョロキョロしていると、場内案内の係員が近づいてきた。
「アメリア学院の方ですか? アメリア学院の座席はこちらになります」
「ありがとうございます」
カイト先輩の服の袖をつまんで、後方に控えるクリスティ。
「クリスティ行くよ」
「はい」
大勢の軍人の隙間を歩いて座席まで行く。その途中でクリスティのよく知る姿があった。
「あっ、お祖父様」
「おおー、クリスティ。わしらの予定が合うのはめったにないからな。しっかり見守らせてもらうよ」
すると傍らにいた男が立ち上がり、深々とお辞儀をした。身長2メートルはあろう、大男だった。
「会長こちらは?」と男は言った。
「この子はクリスティ、わしの孫娘じゃ」
「そうですか、こちらがお孫さんでしたか」
クリスティがびっくり顔で大男を見上げていると。
「彼はブルースくん、わしのボディーガードをしてくれている」
「クリスティお嬢様。ブルースです。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。ブルースさん」
「ほら、席に向かいなさい。仲間がお待ちかねじゃ」
深々とお辞儀をするカイト先輩。
少し離れたところからその様子を伺う二人の姿があった。
「あっ、オニール大佐。エドナ会長とあの娘さんじゃないですか。調べる必要なかったですね」
「あはは」と笑う副官アニー。
式典の開始を知らせるファンファーレが鳴り響いた。軍楽隊の音楽が、式典の雰囲気を盛り上げる。アナウンサーが開会を宣言する。
「AJ88の引退の式典を開会します。本日は晴天に恵まれ、AJ88は30年の務めを果たしました。搭乗されて来られた兵士と共に、30年の功績をたたえる式典を開会します」
順番に、退屈なお偉い方の話しが続く。クリスティはそんな話をブンブン丸が帰ってきたらどんなカスタマイズを施そうか、などという考えを巡らせ回避をした。
アナウンサーが次のプログラムを知らせた。
「AJ88に搭乗してこられた軍人の方の功績を称え、勲章の授与を行います」
続いて、AJ88に搭乗してきた軍人の勲章授与式が始まった。
それにはヨッチーの修正箇所を脳内で洗い出したり。AJ88廃棄するのなら、お祖父様に頼んで発明クラブへ寄贈してもらおう。などと考え、退屈を回避した。
また、アナウンサーが次のプログラムを知らせた。それではアメリア連邦軍主催の学生発明コンテストの表彰式に移ります。
その言葉に反応し、クリスティーの頭脳が現実世界に戻ってきた。
「銅賞、リット州立学院。リット州立学院代表前へ」
二人の学生が舞台に上がっていった。軍のお偉いさんが、賞状を手渡した。二人は深々と挨拶し舞台を後にした。客席からは拍手とエールが送られた。
「銀賞、ジーニス州立学院。ジーニス州立学院代表前へ」
二人の学生が舞台に上がっていった。軍のお偉いさんが、賞状を手渡した。二人は深々と挨拶し舞台を後にした。客席から、先程より大きな拍手とエールが送られた。
あまりの退屈さに、クリスティーの頭脳が現実逃避しかかった。
「金賞、アメリア連邦国立学院、発明クラブ前へ」
そのアナウンスで、クリスティの頭脳は一気に現実に戻った。
「いくよ、クリスティ」
「はい」
二人が舞台へ上がると一際大きな拍手とエールが巻き起こった。
その頃アメリア学院では。
「マリアちゃん、屋上へ出てどうするの?」
「ドローンで式典の様子を見よ」
「ちょっと、マリアちゃん。だめ! やめて!」
「軍の式典にドローンなんか飛ばしたら撃ち落とされるよ! 逮捕されるよ!」




