第31話 旧校舎危機一髪
皆が、終わったと思った。これで、この発明クラブはおしまいだと……。
コトコの脳裏に悲しみにくれるマリアちゃんの顔が浮かんだ。マリアちゃんの笑顔はあたしが守る! コトコは量子コントローラーを使った。旧校舎を守るように一心不乱に量子をコントロールした。どう使ったのか分からないが、ヨッチーは旧校舎の手前で四つん這いになって止まっていた。
「ふーーー」っと全員安堵の息を漏らす。
ドサリ、という音とともにマリアの横でコトコが倒れた。かなりヘビーな処理だったのか、コトコは機能を停止してしまった。そのため肉体のコントロールが出来なくなっていた。
「えっ! なんで? そんなに、ショックだったのか? 確かに一貫の終わりだとは思ったけども」皆がコトコに駆け寄った。
「コトコはよく倒れるなー」マリアは少し慣れてぼくしまっていた。
「おいおい、本当に大丈夫なのか?」カイト先輩は心配そうだ。
グレン先輩はヨッチーから降り、コトコに駆け寄った。格闘技をやってるので慣れているのだろう。脈拍や呼吸を調べて問題ないことを確認した。
「俺が、保健室へ連れて行こう。しばらくすれば目を覚ますだろう。これでコトコを運ぶのは2度目だな」
「グレンがいうなら大丈夫だろう。任せたよ」
「なんで僕の言うことは、信用してくれないんですかー!」
マリアはぷんぷん怒っている。
その時、機械の国、人間の国の双方で強大な量子の動きを感知していた。
「なっ、なんだこの強大な量子の動きは!」
さらに機械の国ではコトコのアラートが鳴った。
「コトコ機能停止! コトコ機能停止!」
観測者とジャックが心配そうにモニターを見つめる。
「いったい何があったんだ」
その頃、ブルースもコトコのアラートを拾った!
「茶々丸感知したか?」
「うん!」
「俺は急にここを離れられん、茶々丸コトコを頼む!」
「分かった!」
「茶々丸量子コントローラーを使え! おまえの大きさなら、小さく使えば感知もされにくいだろう」
茶々丸は頷くと、ドローンに姿を変えた。そして、高度を上げ光学迷彩を展開した。
「いったい何があったんだ。この国でそんな危機に巻き込まれるとは」
ブルースは天を仰いだ。その危機とは旧校舎の危機だったのだが……。
茶々丸はアラートの位置情報を手がかりに駆けつけた。上空から校舎に担ぎ込まれるコトコが見えた。地上に降りると目立たない場所で量子コントローラーを解除し、光学迷彩を解いた。
そして、コトコを追いかけ校舎に入った。皆が保健室と書いた部屋に入って行く。
茶々丸も保健室に駆け込んだ。コトコはベッドに寝かされ、保健の先生に診察されていた。肉体の方は問題ないみたいで、誰も気付いていない。
茶々丸は布団の中に潜り込んだ。ジュエリーの横に行き、コトコの回線に接続した。
コトコは完全にシャットダウンしている。茶々丸はコトコを再起動した。起動を確認し、コトコの顔の横まで移動した。
「あれ? また、保健室?」
「量子コントローラーに負荷をかけすぎたから、安全装置が働いてシャットダウンしたんだよ。それで僕がリスタートをかけた」
「あっ、茶々丸! そうだったのかー」
「みんな、コトコが気付いたよ」
笑顔のマリアちゃんが近づいてきた。なんか、デジャブ感。あれ……。 どうなったんだっけ? そうだ、旧校舎が危なかったんだ。
「旧校舎は?」
「大丈夫だよ、奇跡的に旧校舎の手前でヨッチーが止まったんだ」
「へー、よくあそこから止まれたね」
「確かに不思議なんだけどね。まあ、結果オーライって事で」
数時間後、二人のアメリア連邦の軍人が発明クラブの敷地内にいた。アメリア連邦軍は早速動いていたのだった。
「なんだこの昔の飛行場のような場所は!」
男は周囲を見回してつぶやいた。歳は40と言ったところか、身長は175センチほど、銀髪の短髪で、ガッチリした体形をしていた。
「ほんとに何でしょうね? 飛行機でも飛ばしてるんでしょうか? 大佐! ここに表札が掛かってます。発明クラブって書いてます。何を発明してるんだろ……」
彼女はあちこちに興味の目を向けている。こちらは歳の頃は28といったところか、身長は160センチほどで、目はブラウン、肩辺りで切りそろえた髪の毛は日本人形を連想させた。
「しかし、学院に入るのに随分かかったな」
「軍といえども有事でなければ、学院内に入るのは簡単では無いのです」
「十分有事であろう」
「機密が多すぎて、説明が難しいのですわかってください」
「大きな量子レーダーの反応があったのに、もうすっかり何の表示もされないではないか」
「元老院の方ではこの旧校舎と言う建物に、目をつけているようですが何のためなんでしょうかね」
「元老院が考えてることなど、私にはわからんよ。生徒たちも帰ってるようだし、また後日伺おう」
「そうですね、そのほうがよさそうですね」




