第30話 一気に情勢を変えるのだ!
わたしたちは格闘技クラブへ向かって校内を歩いていた。
「フフフ、うまくいったねコトコ」
おいおい、マリアちゃん黒い笑みがこぼれてますよ。
「格闘技クラブも行くの? もう、人数の心配いらないんじゃない」
また、大変なことになったらやだなぁ。
わたしは企画研究クラブの一件ですっかり怖気づいていた。
「この勢いに乗って一気に情勢を変えるのだ!」マリアちゃんはご機嫌である。
格闘技クラブに着くとこないだの先輩が近づいてきた。
「コトコちゃん、今日はクラブ長きてるよ」
「すみません、今日はちょっと別件です」こないだの先輩は首を傾げている。
わたしは、ちらっ、ちらっと、マリアちゃんに視線を向けた。
マリアちゃんが一向に動かない。袖を引っ張り小声で聞いた。
「ここからどうするの?」
「考えてなかった」
「おーーーい」
「ちなみに幽霊クラブ員と言うのは誰?」
マリアちゃんはスイーーーっと腕を上げ、指さした。指さす先を見るわたし……。
「うそ、なんで?」
指さす先にはブルースと同じくらいマッチョな、格闘技クラブのクラブ長がいた。
あまりの違和感と好奇心からか、スススイーーー、っとクラブ長の前に行って聞いた。
「クラブ長って、発明クラブにも所属してるんですか?」
ポカンとした顔でこちらを見つめるクラブ長。
わたしは慌てて自分の行動を見返した。
「失礼しました。先日はご迷惑をおかけしました!」
「いや、こちらこそ済まなかった。久しぶりの好敵手にちょっとはしゃぎすぎたようだ。体は大丈夫だったかい?」
「はい、このとおり」わたしは両手を上げて、マッスルポーズぽい格好をした。
「ハハハ、よかった。さっきの話だが、発明クラブには所属してるよ」
「なんか、クラブ長と発明クラブの接点が見つからないんですが」
「いや、メカ挌闘戦って種目があってね。メカを使って格闘技をやるんだよ。クラスも小・中・大と3クラスある。それに参加するために発明クラブに所属してるんだよ」
「なるほどー」
これなら、説明すればすぐにでも活動してもらえそうだよ。
「おう、マリアじゃないか」
様子を見てマリアちゃんも近づいて来たようだ。
「今日来たのは発明クラブの活動期限が切れそうなので、お知らせに来ました」
「そうか、そうだったのか。ここのところ忙しかったからな。じゃあ今から行こう、今日は特に予定は無いからな」
そう言うとクラブ長は立ち上がり、脇にあった荷物を手にドスドスと歩き出した。
わたしたちも、クラブ長に続いて格闘技クラブを後にした。
わたしたちは発明クラブへ続く長い森の石畳を歩いていた。
「発明クラブのクラブ棟は遠いから、忙しいと休みがちになってしまうな」
「クラブ長はそんなに忙しいんですか?」
「アメリア連邦共和国の代表選手をしているからな」
「どちらか一方に集中した方がいいんじゃないですか?」
ぐいぐいわたしの服が引っ張られた。振り向くとマリアちゃんが怖い顔で睨んでいる。しっ、しまった!
「俺は軍人を目指しているからな、どちらも取り組んでおきたいんだ」
ほーっと、安堵の息を吐いた。
「これで人数問題は解決したんじゃない」っとマリアちゃんの方へ振り向く。
「うん、そうだね。でも、できればヒメ先輩にも参加してもらいたい」
「そうか、発明クラブは人数が少ないからな。済まなかった。発明クラブが無くなると俺も困る」
などと、話していると発明クラブのドックに到着した。
ドック内にメガネ君がいた。
「クラブ長!」
マリアちゃんが大きな声で呼びかけた。そして、左右に目を向けた。二人が同時に反応している。
「マリアちゃん、クラブ長が二人いてややこしいよ!」
「カイトさん、グレンさんでいいですか」
「うん、それでいいよ」
「俺も、それでいい」
「わかりました。これからはその呼び方にします。ではさっそく、カイトさん、クラブ活動してもらうためにグレンさんをお誘いしてきました」
「グレンよかったのか? 格闘技の方が忙しかったんじゃないのか?」
「いや、今日来てもらって丁度良かった。参加しないとなっ、とは思っていたんだ」
「しかし、今用意できるマシンがヨッチーくらいしかないんだ」
「それで大丈夫だ。久しぶりだから、ヨッチーで肩慣らしさせてもらおう」
「了解! クリスティ、どうだ行けるか?」
クリスティちゃんが、背中の方からひょっこり姿を見せた。
「はい、大丈夫です。いけます」
マイペースな反応で答えた。ハッチを閉め運転席へ移動する。この辺りの動きはテキパキなんだよなぁ、っと感心する。グオオんと起動音を鳴らしてヨッチーが歩き出す。ドックを出るとグルングルンと腕を回して動きの確認をする。そして、ササッとヨッチーから離れた。
「グレン先輩どうぞ」また、おっとりしたクリスティちゃんに戻っていた。
「グレン、旧校舎からできるだけ離れてくれ!」
「おう、わかった!」
ズンズンズンと旧校舎から離れていく、準備運動の様に各部を回転させた。
そして、格闘の技を繰り出し始めた。正拳突き! 払い! 型を一つ一つ確認していく。機械でここまでできるものかと思った。その後の回し蹴りの動作でヨッチーがよろめいた。トトトとっと、ヨッチーの足が地面に着いたり、離れたりしながら旧校舎へ近づいて行く。




