第3話 ここは何処ですか
ルル、ル……ル……ル、ポコ、ポコ……ポ。
最後にポコン、となって、全てのピクセルが流れ着いた。
あたしの破片が、綺麗に流れ込んでしまった。真っ白だった景色が色図いて見えてきた。視覚が徐々に開けていく。しかし、人間の時とは違う感覚だ。
さらに、肉体に近い感覚を感じ動かしてみたが、動かすことができなかった。今可動できるのは視覚だけの様だ。動かせる範囲で周囲を確認してみた。機械のアームやカメラが、忙しく動いているのが確認できた。工場? あたしの記憶と照合すると、この景色は工場に類似していた。
また、何かの言語が流れ込んできた。
「バージョン10008、状況はよろしいようですね」
あたしはその言語が管理者からの発信だとなぜかわかった。
「重要なデータは無事だったようです。また、問題なく差分データとの結合を完了しました。自立稼働用の新しいボディを準備中です。準備には3時間を要します」
相変わらず、アームやカメラが忙しく動き回っている。新しい感覚が追加されていく。テストと確認を繰り返しているのか、接続されたり、切断されたりする。今まで味わったことのない感覚に頭がついて行けない。
「うっ、うぅぅう。気持ちが悪い」
あたしはAIか機械的な何かに、生まれ変わったのだろうか?
これからはAIの時代、AIが世界を変える、AIは人間を超える、AIが仕事を奪うなどと言われてきた。しかし、2050年現在、まだ、シンギュラリティには到達できていなかった。
まあ、自立稼働用のボディを頂けるようなので、完成したら自由に行動できるかも知れない。
「3時間かぁあ、長いなぁあ」
仕方ないので考えを巡らせて暇をつぶす。
もし、機械の体だったら、半永久的に生きられるかもしれないぞ! まさに、あたしの希望通り。アニメを見て憧れていた機械の体が手に入るかも知れないのだ。あたしはアニメや特撮の世界で、主人公が特殊な体を手に入れ苦悩していたが、いったい何が不満なのか分からなかった。「長生きできるんだから、最高じゃぁあ、ないですか! いやならあたしにください!」と思っていたくらいだ。そんな、機械の体が手に入るのかも知れない状況なのだ。
ひょっとすると足が無かったり、キャタピラーかも知れないなぁあ。足なんて飾りですよ。お偉いさんには分からないんですよ。
また、足どころか手すら無いかもしれないなどと心配したり。いや、まて、何か作業用のアームが無ければ、自立稼働する意味ないんじゃないか? などと考えていると、稼働できる箇所が増えたみたいなので動かしてみた。
「むむっ、これは手かもしれない」
目の前にそれを持ってくる。それは人と同じ5本の指で、見た目は金属かプラスチックの様な質感で、そして、スムーズに動いた。
「ナニコレ、あたし、機械? ロボット?」またはアンドロイドか人造人間か?
「わぁぁぁぁぁぁぁぁあん、すっ、素敵!」
こんな状況を難なく受け入れてる自分が凄いと思うが、一度死んだと覚悟したし、アニメやマンガや特撮で蓄積した、知識や擦り込みが役に立ってると思う。
次に足の感覚が追加された。動きを確認してみる。
「二本あしだ!」
二本あしって現実的には合理的ではないような気もするが、あたし的には大歓迎だ。人に近いもんね!
「いやー、神様! ありがとうございます! この体なら長生きできそうだぁあ」
しかし、2時間ほど経ったが、周囲の状況については何もわからないままだ。
ただ、この体になってから、気になっているデータがある。イメージで言うと自分の記憶以外にフォルダがあって、別の記憶データが入っているのが分かる感じだ。けれど、開けるのが怖いのでそっとしている。そこを開けば色々なことが、分かりそうな気がする。
どこからともなく、カウントダウンの情報が流れてきた。
「作業完了まで、60秒……」作業用のアームなどが、あたしから離れていく。
「50秒……40秒……30秒……20秒……10秒・9・8・7・6・5・4・3・2・1、作業が完了しました」
ボディの準備が整ったようだ。
あたしの横たわっていたベッドが、ガクんと自動的に起き上がっていく。
その動きに合わせて視界がさらに広がった。
アームやカメラ以外に、作業用の機械・ロボットが働いていた。そして、あたしと同じように横たわっているロボットも複数いた。
見ためは人間にスーツを着せた様な形態だが、膝・肘・肩にカバーが装着していて。関節が動くための隙間があって……。そんなロボットがたくさんいた。
周囲のロボットを見て、おおむね自分の容姿も想像できた。
「ちょっと待て神様! 半永久的な命は希望通りだが、あたしは可愛い少女で胸は大きめを希望してましたよね! 胸っぽいふくらみはあるけども、どちらかと言うとマッチョなイメージでしょ! 金属だし! 柔らかく無いし! こんなの求めてませんよ!」
しかも、この物々しいイメージのこの場所、パワードスーツが出撃の準備や待機をしているドックの様なこの場所は……。嫌な予感しかしない。




