第29話 マリアの笑顔を守れ!
そして、次の日。昨日あんなことを言った手前。しばらくは発明クラブが優先だ。マリアちゃんを泣かせるわけにはいかない! あの笑顔が頭から離れない。昨日のマリアちゃんの笑顔を思い出し、あたしの顔は緩みまくっていた。他人が見たら酷い顔だったに違いない。緩みまくった顔のまま、旧校舎へ到着した。さっそくあたしは会議を開いた。
「でっ、あたしが入ったことで人数問題は解決って話しだったけども、本当に大丈夫なのかな?」
机に両肘をついて、両手を顔の前で組んだ。そして、かけても無いのにメガネがキラリと光ったような気がした。マリアちゃんは目を合わさない。
「ちょっと、まだ足りないの? そもそも、何人必要なの?」
「最低6人、できれば9人」
「…………」
「な・ん・だ・と、全然足りてないじゃないかー!」
「コトコちゃん、来ていないクラブ員がいるの」クリスティちゃんの方を見た。
「幽霊クラブ員ってこと?」二人が頭を縦に振る。
「そうなの、幽霊クラブ員が三人いるの」
「なるほど、じゃあ確かに人数はOKじゃないかー」
「それが、6ヵ月クラブ活動に参加してないと除名になるの」
「な・ん・だ・と」
「それで、困ってるわけなんだよ」
気まずそうに上目遣いであたしの方をみる、マリアちゃんであった。
「じゃあ、その幽霊クラブ員に活動してもらおう。で、その三人は何をしてるの? サボリ? 塾とか?」
「それぞれ、いま熱いクラブ活動があるみたい。ヒロト先輩は企画研究クラブで学院アイドルをプロデュースしようと企んでるみたい。そして、グレン先輩は格闘技クラブと言うか格闘技全般、いろいろな代表に選ばれて忙しいみたいなんだよね。ヒメ先輩は生徒会活動、学院の為に頑張ってくれていて、相当忙しいみたい」
「あれれ、ちょっと待って。生徒会に発明クラブの先輩いるのなら、融通してもらえるのでは?」
「いやそれが、超真面目な先輩だから無理なんだよー」
「なるほど! ヒメ先輩はなかなか難しそうだから最後にしよう」
「ヒロト先輩から行ってみましょうかねー」
「コトコって、意外と行動力があるんだね」
貴方の笑顔を守るためですよ! あと、死ななければどうってことないだけだよ。先輩としゃべって死ぬとかだったら行きませんけどね!
「みなのもの! では参りましょう!」
あたしとマリアちゃんは企画研究クラブの前にいた。クリスティちゃんはヨッチーの開発のためドックに居残りだ。しかし、最近毎日同じようなことが続いてる気が……。
「コトコちゃん、早く入ったら!」
「ちょ、ちょっと待って。心の準備が……」
「土壇場で怖気付くタイプなんだね!」
「…………」
あたしの目の色が変わった。
「コトコの性格わかってきたかも」マリアちゃんが、不敵な笑みを浮かべた。
「ヒロト先輩いますか?」扉を開けると同時に言い放った。
「人選が90パーなんだよこの企画は! なんなら100パーだよ!」
「しかし、何度も頼みに行ってますが、最近では虫ケラ同然の扱いで」
何やら奥では激論が繰り広げられていた。
「ヒロト先輩は今大事な話し中!」そう言って、ドアの近くにいた生徒はあたしを見た。そして、動きを止めた。目をギンギンに見開いてこちらを凝視している。こっ、怖い!
「…………」
「先輩! ヒロト先輩!」声を張り上げて先輩を呼んだ!
「なんだ、今大事な話し中!」
「…………」
あたしを見てヒロト先輩も動きを止めた。目をギンギンに見開いてこちらを見ている。こっ、怖い! 一瞬の間の後、もの凄い速さであたしに近づき手を取った。
「アイドルになってください!」
そして、あたしをどうぞどうぞと、ソファーへ連れて行く。
「おいおい、俺のリストになかったよこの子」
「そういえば、2、3日前に編入してきた子がいたような」
企画研究クラブ員が答えた。
「そういう報告はしっかりしなさい!」
ヒロト先輩は満面の笑みで、接待してくる。
「ほらほら、お茶とお菓子を用意しなさい!」
その一部始終を後ろで観ていた、マリアちゃんの目がキラリと光ったような気がした。
「ヒロト先輩! 勝手に交渉を進めないでもらえますか?」
「なんだ、マリアか! 何しに来たんだ!」
「酷い対応ですね! そんな、対応だと僕の友人は譲れません!」
「なに、マリアの友人?」
なんか、あたしを置き去りにして話がすすむ。
しかも、ヒロト先輩はあたしの手を掴んだままだ。あたしはいつものプチパニック状態に突入していた。あたまの中がグルグルだ。そんな中二人の話はどんどん進む。
「ヒロト先輩が発明クラブに顔を出さないから、廃部寸前なんですよ!」
「いやだって、あのくそメガネが居るから行きたくないんだよ! 俺が新しいことを始めようとすると、それは発明じゃないとかいいやがるから。思い付きってものは全て発明でしょーにっ!」
「愚痴は置いといてください! でっ、コトコをどうしたいんですか?」
「この子は素晴らしい素材だよ! 逸材だよ! 国民的アイドルになるよ!」
「そうなんですか? 僕はその辺のことはよくわからないですが、分かりました!」
いったい何が分かったんですかマリアちゃん!
「企画研究クラブから3名、発明クラブにくださいトレードしましょう」
なんの交渉ですか、交渉人マリアちゃん!
「3名は無茶だ! 無茶苦茶だ! せめて2名にしてくれ。こちらも人手が必要なんだよ!」
「わかりました。2名で手を打ちましょう。その条件で、コトコを貸し出すこととします!」
「なに! 貸出! くそープロダクションかよ!」




