第27話 えっ? ここって
あらためてよく見ると、それはロボットの足だった。
あたしは眼鏡さんの方を振り返った。この人は微動打にしていない。こんな事は日常茶飯事なのだろうか?
「コラ、見通しが悪い場所でマシンを走らせない!」
「あっ、クラブ長すみませーん。あれっ、コトコ」
あたしは尻もちのまま、ひきつった顔で手を上げ答えた。
「コトコ、格闘技クラブは良かったの?」
マリアちゃんは傾いたパワードスーツの上から、何事も無かったように話しかけている。
あたしはまだ放心状態のままだ。
「マリア! マシンを元に戻しなさい」
眼鏡さんが冷静に指示を出した。
ゴゴゴ、っと大きな音と共に足下の土と敷石を引っ掻き回しながら、パワードスーツを立ち上がらせた。
眼鏡さんは右手で自分の頭を抑え、困った顔になっている。
「すまないね。見学早々失態を見せてしまって」
「マリアちゃんはあたしの友人ですから、ある程度は把握してます」
「めったに人は来ないけども、すぐに直さないと」
そう言いながら、眼鏡さんは林の奥へ歩いて行った。
あたしも急いで立ち上がり、お尻の砂をはたいて駆けて行った。林を抜けると第二次世界大戦の、ゼロ戦のラバウルなんちゃらの様な建物があった。
「なっ、なんじゃこりゃ!」
どんどん、歩いて行くと小屋に見えていたのは老築化しているが、結構大きな飛行機を入れておくドック? の様な建物だった。
中を覗き込むと、こちらを見て驚いているよく見る顔があった。
「クリスティちゃん、どっ、どうしたのその格好!」
クリスティちゃんは恥ずかしそうに俯きながら小さな声で答えた。
「汚れるから、ここでは何時もこの格好なの」
あたしは上から下へ目をやった。ピンク色の上下が繫がった作業服を着ていた。頭にはゼロ戦のパイロットの帽子の様な物をかぶっていた。ゴーグル付である。
「意外と似合ってる。なんか、萌えるよ!」
あたしの台詞を聞いて、困惑顔で青い瞳をぱちくりさせる。だめだ、ますます可愛い! そこへマリアちゃんがマシンを歩行させてやって来た。
「クリスティ! ヨッチー、ちょっと操作がピーキーになりすぎたかもだぞ、デリケートな動きが難しい!」
「分かった、調整するね」
ドックに入った、ヨッチー。ヨッチーとはパワードスーツの名前らしい。そのパワードスーツの各部のハッチを開け、手際よく作業を始めた。
「なんか、凄い! しかも、早い!」いつものクリスティちゃんからは想像できない素早さだ!
マリアちゃんが、あたしの横にきて話しかけてきた。
「このマシンはクリスティが全部組み上げたんだよ」
「えっ! えーーーーー!」
「凄いでしょ! クリスティはドワーフだから、機械には強いんだよ」
ん? 今聞き慣れてるけど、違和感のある単語が入ったような?
「どっ、ドワーフ? クリスティちゃんが?」
「そう、ドワーフ」
「クリスティちゃんって、人間じゃ無かったのーーー?!」
「こっ、コラー! ヒト属! 同じヒト属だよ! コトコはたまに驚くこと言うなー」
丁度いい、もう一つ気になっていたことをこの機会にマリアちゃんに聞いておこう。
「あのー、エレナ先生は?」
「エルフだよ」
今日の朝ご飯はフレンチトーストくらいなノリで、エルフだよって言ったよ! あたしはかなり混乱していた。右へ左へと行ったり来たりしている。
「ちょっと、コトコどうしたの?」
やっ、やっぱり、ここは異世界だったのかー!
「ちなみにですが、マリアちゃん、魔法ってあるの?」
「魔法はあるけど、この国はどちらかと言うと化学や技術かなー、魔法は随分と廃れてる感じだよ」
あるのはあるのかーーー! 完璧に異世界だよ。
いやー未来に転生したと思ってたのに異世界だったとは、思ったより違和感少ないけど……。わーい! あたしって異世界転生してたんだー。って喜んでる場合かー。
「今日のコトコはなんか、忙しいね」マリアちゃんは困惑顔であたしを見ていた。




