第25話 格闘技クラブ
登校2日目からは授業が午後までバッチリあった。
ここはお坊ちゃま、お嬢様が上流階級にふさわしい。教養、各種マナー、交友関係を身に付けるために用意された一貫校だ。ロー、ミドル、ハイスクールまであり、授業内容も中々ハードである。中でもクラブ活動には力を入れており、多岐にわたる。ハイスクールの学生になると、かなりの経験を積んでいて、プロの団体に所属しているものもいるらしい。
あたし的に気になったのはミドルスクール、ハイスクール、それぞれから。学院生活をサポートしてくれる、お兄さん、お姉さんを決めるシステムだ! まっ、マリみてかよ! 思わず心の中でツッコミ入れましたよ。
「マリアちゃん、クリスティちゃん、学院内兄弟はいつ決めるのかな?」
「あれはいつでもいいんだよ。あの先輩にサポートしてほしいとか。この後輩の面倒を見てあげたいとか。そう思ったときにバッチを交換するんだよ」
あー、あたしのお兄様、お姉様はどこにおられるのかしら。コトコ、リボンが曲がっていてよ。はい、お姉さま! なんてねー。
「ぷっ、ぷふふふー」っと一人でウケた。
「コトコちゃん、大丈夫?」クリスティちゃんは青い瞳を潤ませ、一人でニヤニヤしてるあたしを心配そうに見ていた。
「大丈夫だよ。昔見たアニメ思い出しちゃって」
マリアちゃんが話しかけてきた。「それはそうと、発明クラブ入ってくれる気になった? なっ、一緒にやろうよ楽しいよ!」マリアちゃんは今日も元気である。あっ、圧がグイグイくるなぁ。
昨日も家に帰ってから大変だった。夕食で、レナードさん、キクノさんと顔を合わせると。その第一声が、「コトコも、発明クラブに入るって!」である。
「なっ、ナンシーさん!」
「あっ! 言わないほうが良かったですか?」
いや、微妙に情報が歪んでますよね? それとも、わざとか? わざとなのか? あたしがジト目で訴えていると。ナンシーさんは首を傾げペロリと舌をだした。
いゃー、てへペロされてもなー、可愛いけども。
「まだ決めたわけではないのだけど」
「なっ、なんだ、そうなのかー」一同ガックリである。そんなに、いいのかなぁ、発明クラブ。
あたしはしゃんとして、マリアちゃんに言った。
「とりあえず一度見学に行くよ」
「そうして、きっと気に入るよ。そんじゃぁ行きますか!」
マリアちゃんは自分の荷物をまとめ始めた。
「ちょ、ちょっとその前に、見学に行きたいクラブがあるんだけどいいかな」
「ん? 何のクラブ?」
「格闘技クラブ」
「えっ、コトコちゃん格闘好きなの?」
「うんまー」
小声で。「軍に入隊するため、それと」ボリューム上げて。「護身のために鍛えておこうかなーっと。あと少しは強くなりたいから」と言った。
三人は格闘クラブの道場の前にいた。道場の中には100名ほどの生徒がいた。その道場はあたしが前世で見たような、和風の作りだった。この世界のどこかにも、和テイストの国があるのかも知れない。何畳あるのだろうか、道場は相当な広さだった。床の間の掛け軸には毛筆の文字が描かれていた。イメージは同じだが、文字はあたしが知るものとは違った。そして、畳のいい香りがした。
入り口の前で、うろちょろしていると、上級生のお姉さんが、あたしたちに声をかけてきた。
「入部希望者ですか?」
「そうですね、入部したいとは考えているんですが皆さんの実力が知りたいので、体験入部できませんか?」
「え、えーっと、何年生? 名前はなんていうの!」女子の先輩は自分が想像していたのとは違う返答が返ってきたのか? アワアワしていた。すると後方から、女子の先輩と同じ年頃の男子生徒が数人やってきた。
「なんだおまえ、見たところロースクールの5年生くらいじゃないか。何か武道の経験があるのか?」
「言っておくがな、ロースクールとハイスクールでは実力が全然違うぞ!」
「その違いとやらを体験してみたいんです」
「なっ、なまいきだぞおまえ!」
その学生はあたしの襟首をつかみあげた。
「やめてください!」あたしは護身術を応用し、相手の腕をひねり上げた。
痛みに耐えきれなくなった学生は自分から飛び転んで、痛みから逃れた。
床に叩きつけられ、グハッと言ってうずくまった。
それを見た他の男子学生が、次から次へとあたしに挑んできた。その攻撃を難なく交わし、逆に投げ飛ばしていった。思ってた以上に手応えがなかった。
うーん、これならクラブ入る価値無いかも。
「もう、相手になる人はいませんか?」
丁度そのときあたしの後方から声がした。
「これはいったい全体どうしたんだい?」
あたしは全く彼の気配に気が付かなかった。
振り返ると、身長2メートルはあろう大男がいた。その男からはオーラが出ている様な気がした。倒れていた一人の生徒が言った。
「すみません、クラブ長。この女子生徒にやられました」
圧力を感じ、あたしは一歩も動けなくなった。さらに、凄まじいオーラが、見えた気がした。
「これを君が一人でやったのか?」
あたしはコクリと頷いた。
「ほー、なかなかやるもんだな。一つ俺と対戦してみるか」
あたしはその大男と対戦することになった。
「小さいキミにハンディをやろう。俺は左手しか使わないからな。いつでもかかってきなさい」
それから数分、あたしは初めの攻撃をだせずにいた。
「君から来ないならこちらから行くぞ!」と、言って彼の足が動いた。続いて正拳付きが来た。そしてあたしの顔面の手前で止まった。舐められている。
ムッときたあたしはツキや蹴りを矢継ぎ早に繰り出した。その全力の攻撃をすべて左手だけで交わし、さらに、隙をつかれて投げられてしまった。
ドドーン! と勢い良く床に叩きつけられた。あまりの衝撃に、あたしは気を失ってしまった。
気が付くと暗い顔をした、マリアちゃんとクリスティちゃんが目に入ってきた。
あたしが目を覚ましたのに気づいた二人は、明るい表情に変わった。
「コトコちゃん、大丈夫?」
「ちょっと体が痛いけど、大丈夫みたい」
あたしが体を起こそうとすると、二人が補助してくれた。傍らにいた、ナンシーさんが飛びついてきた。
「コトコさま、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫」
よかったー、連絡が入ったときは心配しましたよー。涙目のナンシーさんに連れられ、家にかえった。




