第22話 学院初日
あっと言う間に登校開始の日がきた。
朝食中に「ふわぁぁあ」と大きなあくびをしてしまった。
「コトコ寝不足かい?」
リビングへ降りてきた、レナードさんが聞いてきた。
「そうなの、コトコ、昨日興奮してあまり寝られなかったみたい。ウフフフ」
「アハハハ、緊張? それとも楽しみなのかな?」
あたしは苦笑いである。まさか、この年で興奮して寝付けないなんてことがあるとは思ってもみなかった。服装、小物、鞄、書類、を何度も確認! 子供の頃は適当に準備してたけど。
持っていくもの多すぎだよ。大学やバイトより大変だよ。それに、会ったことも無い同級生たちに囲まれて勉強することになると思うと。ともだちできるかなぁ、とか。色々な学院トラブルに巻き込まれないか、とか。心配でなかなか寝られなかった。そのため、5時頃まで自己紹介の練習をしていたのだ。
「今日は僕もキクノも付いて行くんだから、そんなに緊張しないで大丈夫だよ」
いやいや、子供の世界と大人の世界は違うんですよ、大変なのですよっと心の中で叫んだ。
ナンシーさんが、朝食を運んできてくれた。
「コトコ様。 もう、制服に着替えたんですか? 朝食で制服が汚れたら大変ですよ」
そう言うと、エプロンをあたしにかけてくれた。あたし、中身は21歳だったはず……。ちょっとメンタル削られた。よくできた、17歳である。
「ほらほら、レナード様は早く朝食を食べないと寝巻のままなんですから、準備を考えるとのんびりしてられませんよ」
フフフ、45歳でも怒られてる。ちょっとメンタルが回復した。
キクノさんは優雅にコーヒーを飲みながらこちらの様子を見守っていた。
「さあさあ、時間ですよ」
ナンシーさんに、急かされ玄関を出た。太陽が眩しい、空は雲一つないいい天気だ!
あたしが、ぼーっと景色を見てると。
「コトコ、車に乗って」と声がかかった。
おっ、カッコいいシルバーのスポーツタイプっぽい車だ。レナードさんの車かな? キクノさんが、ドアを開いて待ってくれていた。あたしは急いで駆けていって車に乗り込んだ。あたしが乗り込むと、ゴオオンと勇ましいエグゾースト音を鳴り響かせて走り出した。
「学校までどれくらいかかるんですか?」
「うーん、車で30から40分、って、とこかしら」
「まあまあ、遠いんですね」
「この辺りだと近いほうだよ」とレナードさんが答えた。
「帰りはコトコがナンシーに連絡を入れたら、迎えに行くことになってるから」
「はい、わかりました」
しばらくすると……、
「コトコ、あれがアメリア学院よ」
キクノさんが指で示した。それは石造りの建物だった。正面には大きな時計塔、その左右へ校舎が広がり、装飾が施された校舎は周囲の木々に馴染んで、まるで中世のお城の様だった。豪華な装飾の正門を抜け、離宮の庭園の様なところを抜けると学院の入り口に着いた。
「さあ、コトコ、行きますか!」
「はい!」と返事をし、あたしは車から降りた。
続いて、キクノさんが車から降りる。スーツスカートでビシッと決めている。最後にレナードさんが車を降り、守衛さんにキーを渡した。そして、スーツを整え歩きだした。いやー、あたしの保護者カッコいい!
入り口で受付を済ませると。受付の守衛さんが、手続きをする部屋まで案内をしてくれた。廊下の柱や窓枠にも装飾が入っており、ここも豪華なイメージだ。この学院と比べると、前世での学校が監獄に感じるよ。
「さあ、こちらへどうぞ」
あたしたちは学校の応接室に通された。これまた、豪華な部屋だった。キョロキョロと内装や調度品に目をやっていると、美しい声が聞こえた。
「ご苦労様です。ペンデルトン様、コトコ様のクラスを担当するエリス・ターナーと申します」
そこには絶世の美女がいた。スラリとした長身、褐色の肌に、煌めく金色の髪、ブルーの瞳、なんて美しいシルエット……。耳が……。
あれ? あれれ? こんな人ゲームで見たことあるなー、うーん……。エルフだっけ? 我が保護者二人の顔を見た。いたって普通の表情で、自然な反応だ。あれー? 怪訝な顔で首を傾げているあたしにエリス先生が聞いてきた。
「どうかしましたか?」
「い、いえ、何でもありません」
保護者の二人に入学後の簡単な説明をし、残りの書類へのサインを促した。書き終わると、書類を丁寧に確認した。
「これで手続きは完了です。また、保護者へのお知らせがある場合は生徒の方にお知らせします。直接のお知らせがある場合は書面またはお電話でお伝えします」
レナードさんとキクノさんの二人はふーっと一息ついた。
「では保護者のお二人には帰って頂いて。さあ、行きましょう。コトコさん、学院生活の始まりですよ」
部屋を出るとき、レナードさんとキクノさんに、ニッコリ微笑んで、手を振った。
「頑張ってきます!」
「うん、頑張っておいで!」
エリス先生の後ろに続いて、教室の前まで行った。わー、ドキドキする。もう一度こんな気分味わうことになるなんて。
「コトコさん、私が呼んだら教室に入ってくださいね」そう言い残すと教室に入っていった。
「皆さん、静かにしてください! まずは編入生を紹介します。どうぞ入ってください」
あたしが中に入ると、教室内がザワザワした。き、緊張してきた。
「はい、自己紹介をお願いします」
あたしの長期計画はここから始まるのだ! この学校でやらなければならないことが頭によぎった。
1、この世界の事を知って理解しなければならない。
2、影響力・発信力のある人間に成長しなければならない。
3、AI・メカ好きの仲間、同志を集めなければならない。
そのためにはこの自己紹介すらおろそかに出来ないのだ! き、緊張している場合では無い! 頑張れあたし!
「コトコ・ペンデルトンです! あたしが興味あるのは機械を組み立てたり、考案したりすること。それと、パソコンでプログラミングを組むこと。あたしと同じ趣味趣向の人声をかけてね!」
よし、バッチリだ。
クラスの空気がヒンヤリとし、皆の顔がキョトンとなっている。うぅー、何かやらかしましたか?
「コトコさん、プログラミングはハイスクールからです、未成年はプログラミングが法律で禁止されてるんですよ!」
「えっ!」
「気をつけてくださいね!」
エリス先生から、注意をうけた。いやー、優しい先生でよかったよー。まさか、プログラミング禁止とはAI対策とかかな?
「じゃあ、とりあえず席をどうしようかな」エリス先生は周囲を見回した。クラスの席はひと席三人掛けになっている。すると一人の生徒が立ち上がって手を挙げた。
「僕たちの席が空いてます!」
ショートカットで、スラッっと長身で、顔も小顔の美少年だ。同じ席の女の子がエッっといった、不安そうな顔でその子を見上げている。美少年と貴方との至福の学校生活に邪魔が入るかも知れないのだから、そんな顔にもなるでしょう。
勢いよく、教壇の方まで駆けてきてあたしの手を掴んだ。いつもこんな感じなのか、もう誰も止められないようだ! しかし、入学早々トラブルに巻き込まれたくはない。どっ、どうすればいいのー、かっ、考える間がない!
「そうねそれがよさそうね!」なっ、何か方法はないのかー、その時エリス先生が彼の名前を呼んだ。
「じゃあ、マリア、よろしくねっ」
「えっ?! マリア?! 女の子?!」
たしかに手も柔らかいし、いい匂いもするし、えっ、えーっと、あたしはプチパニック状態だ!
「コトコだっけ?」
「うっ、うん」
「じゃあ、コトコは真ん中! クリスティ真ん中空けて!」
「大丈夫ですか? マリアさん、クリスティさん目パチクリしてますけど」
「僕とクリスティでフォローするから!」
全然話を聞いてない。よけてくれたクリスティさんに、あたしは小声で「ごめんねと言った」
「大丈夫だよ、ちょっとスピード感について行けなかっただけ」
彼女はニッコリ微笑んだ。
クリスティさんは栗色の髪色で、肩くらいで内側にカールしており、小柄な割に豊満な体型をしていた。確かに、話し方もおっとりした感じだった。
初日は年間カリキュラムの説明や、本の配布くらいで終了した。




