第19話 キクノさんのお手伝い
「どこへ行ってたのですか?」
ナンシーさんがあたしを見つけて駆け寄ってきた。
「ハァー、ハァー、ハァー」と息をあらげている。
「庭に出てました」
「外へ行くときは声をかけてください! 心配しました」
「ごっ、ごめんなさい」すっかり子供扱いである。
うーん、見た目が子供だからかな? でも10歳くらいだよ! 過保護すぎだよ!
しかたない、テレビでも見よ。
情報収集のため、チャンネルをくるくる変えてみるも、機械の国との戦争については何も報道していなかった。やっぱり、確かに戦争してる感ゼロだもんなぁ。
あと、この世界なんか少し古い感じがする。テレビやリモコンが前世の記憶よりレトロだ。そして、パソコンをまだ見ていない。頭がゴチャゴチャしてきたので、ソファーにひっくり返って寝てしまった。
キクノさんとレナードさんが、家に帰ってきた。二人とも、コトコー、っとハグをして、ほっぺたにすりすりしてきた。
夕食のときキクノさんに、明日は仕事の手伝いをしたいからついて行きたいといった。
「仕事の都合で連れて行けないことが多いと思うけど、明日ならいいわよ!」
次の日は約束通り朝からキクノさんの仕事に付き合った。
「まず、うちの店にいきます」
「はい!」っと返事をし、トラックの助手席へ乗り込んだ。30分も走ると到着した。
「ここが私の店1号店だよ」
ファミリーレストラン風の建物の裏手にトラックを止めた。キクノさんは裏口から入った。
「おはようみんな!」
それに続いてあたしも店舗に入った。
「おはようございまっす」とあいさつをしながら入った。社員の人たちの目はこちらにくぎ付けになった。しっ、視線が痛いよ。
「おはようございます。社長!」皆があいさつをする。
キクノさんは入ったところにあった洗面で、手を洗った。
「コトコも、ここで手を洗おうね」あたしの手を取り洗い方を教えてくれた。
社員の人たちの目はこちらにくぎ付けになったままだ。
「社長、誰ですかその可愛い娘さんは」
「私の娘だよ!」キクノさんは満面の笑みで答えた。
「えっ! えぇぇぇぇぇつ!」社員の人たちが驚いた。
あたしは慌てて、キクノさんを見た。彼女はウインクをして、小声で「いいでしょっ」っと言った。
その後はキクノさんが調理をしているのを見学させてもらった。しばらくすると、店員さんが裏口から入ってきた。
「社長デリバリーの積み込み終わりました」
「よし! コトコ出発だ!」
今日はトラックでのデリバリーだ。得意先を回りながら、積み降ろしを手伝った。キクノさんは行く先々で、あたしを娘だと紹介した。まだ、様子見段階なのに、いいのかなー。
そして軍事施設へも行った。その間、ブルースに出会わないだろうかとキョロキョロと辺りをみまわした。しかし、見つけることはできなかった。
うーん、大きな騒ぎにもなってないようだから、どこかに潜伏してるんだろう。
一日キクノさんの仕事に付き合って。この体で積み降ろしも頑張って。お客さんに愛想も振りまいたので、結構疲れた。家に帰るなり玄関に倒れこんだ。
「うはー、疲れたー!」
「おかえりなさいませ!」
ナンシーさんが近づいてきた。床で伸びているあたしを冷たい目でみた。
「だらしないですよ。コトコ様」
遅れてキクノさんが玄関から入ってきた。
「おかえりなさいませ。キクノ様」
「ただいまナンシー、二人とも汗をかいたから、お風呂に入ります。ナンシーも一緒に入りましょう!」
なんとおおらかなペンデルトン家。三人でワイワイとお風呂に入り、今日あった話しをした。お風呂から上がって、リビングでホクホクしていると。レナードさんが帰ってきた。あたしを見ると駆け寄ってきて、ハグして、すりすり、そして高い高いをした。
「おめでとう! 君は今日から私たちの娘だ!」
そして、書類をあたしの目の前に広げた。
「えっ! 様子をみるって話じゃなかったですっけ?」
あたしは首をかしげた。
「国籍のハッキリしない子供を家に置いておくと、いろいろと問題が起こりそうだからね。手続きさせてもらった」
レナードさん、お得意の笑顔とウィンクで押し切られた。ある意味あたしの計画には都合がいいので、快くお受けすることにした。あとは二人に迷惑が掛からないように計画を進めるだけだ。と決意を新たにした。その日の夕食はあたしの歓迎会、ってことで盛大にお祝いしてくれた。




