第17話 キクノさんの家
「うっ、うぅぅうん」
白い……。普通に白い、どこかの天井かな? 目覚める時はこうじゃないとね。
「大丈夫? 気分はどう?」
「あのっ、ここは?」
シルエットで、お弁当屋の女性だと分かった。目鼻立ちがしっかりしていて、とても美しい人だった。
「あっ、あのー、ごめんなさい」
あたしはとりあえず謝っておくことにした。
「ここは私の家じゃないの。今日の配達は終わったから、とりあえず帰ろう」
そういって、自分の背中におぶさるように言った。
「大丈夫です。歩けます」
女性はあたしの手を引いて車まで連れていってくれた。その手が凄く暖かく、懐かしい気がした。彼女はあたしを助手席に乗せてくれて、自分は運転席に乗り込んだ。車を走らせると話し始めた。
「なぜ、荷台に乗ってたの?」
あたしは潜入用に準備してきたシナリオに、ちょっと変更を加えて話し始めた。
「監禁されていて、チャンスを見計らって逃げてきました。やさしそうな人が荷物を下ろしていたので、あれに乗れば助かると思いトラックの荷台に飛び乗りました」っと話し、ちらりと彼女の顔を見た。彼女の顔は怒りの形相になっていた。彼女は怒りを一旦おさえるためか、しばらくの間があった。そして、話し出した。
「両親がさぞかし心配しているでしょう?」
「両親には会ったことが無いし、だれが両親かも分からないんです」っと答え、ちらりとまた彼女の顔をみた。今度は洪水のように涙を流して彼女がこちらをみた。
「きっと、身寄りが無いのをいいことに、何処かに売りさばこうとしてたのね。あのあたりだと軍に近いから、軍部にでも売り飛ばすつもりだったのかもしれない。スラムの子供を特殊な軍人に育てるために、連れ去ってるて噂があるの」
「そうなんですか?」
「あなたの判断は正解よ! 今後のことはあたしにドーンと任せなさい! 自己紹介がまだだったわね。私の名前はキクノ」皆が名前呼ぶのを聞いてて知ってたんだよねーとは言えず。
「いい名前ですねー」と答えた。
「あなたの名前は?」
「コトコです」
「コトコ、良い名前だね」
30分もすると車は大きな門に到着した。キクノさんがリモコンを操作すると、門がガラガラと開き中へ入って行った。
「あのー、キクノさん、家に帰るんじゃなかったんですか?」
「うん、だから家に帰ってる!」
「ええーーーー! ここが家なんですか? あの向こうに見える家ですか?」
「うん、まあ、そう、アハハハ」
そう言いながら、後頭部をガシガシ右手で掻いた
「豪邸じゃないですか! 只の弁当屋の運転手だと思ってましたー! 失礼しました!」と、助手席で土下座をしてしまった。
「一応このデリバリーサービスのオーナーなのでしたー」アハハと陽気に答えた。ハリウッドの俳優でも住んでそうな、おしゃれな建物にトラックを横付けした。なんかトラックが不釣り合いな豪華さだよー、っと見とれてしまった。
「ささ、こっちこっち」
これまた、豪華な玄関を入ると背の高いダンディーなおじさまがこちらに歩いてきた。
「お帰りマイハニー」とハグとキスをキクノさんにした。
あたしに気づいたおじさまは。
「これはまた、可愛らしいお客さんじゃないか」っと言った。
「レナード、この子を娘にすることにしたわ!」
あたしとおじさんはハァ? って顔になった。
「急すぎて何が何だか分からないよ。キクノ、そりゃ、こんなに可愛らしい子が、私たちの娘になってくれるならうれしいけどね」っと言って、あたしを見てウインクした。
「まあ、お茶でも飲みながら話そう」そう言ってあたしを居間に招き入れた。キクノさんはあたしと車の中で話した内容を、レナードさんに伝えた。
「なるほど分かった。キクノはこう言ってるがコトコはいいのかい?」
「あたしは何処にも行くところが無いので、お二人が良ければ。ただ、お二人もあたしもまだ、知り合って間もないので、しばらく一緒に暮らして。それでもあたしを置いておきたいと思ったときにはお願いします」
そう話すと、キクノ、レナードと二人は抱きついて喜んでくれた。あたしは少し変わった人たちだなぁと思った。
「コトコ、改めて自己紹介するよ、私の名前はレナード・ペンデルトン」
「あたしの名前はコトコ」二人はガッチリと握手した。安心したのか、あたしはちょっとよろめいた。レナードさんがあたしを抱きとめて支えてくれた。
「あっ、ありがとう」
「気を張って疲れたんだろう。お腹も空いてるだろうから。ディナーにしよう。そして今日はゆっくり休むんだ」
「ありがとう。レナードさん」
ディナーはスープにグラタンとパスタだった。あと、パンとサラダも用意されていた。消化によさそうな料理ってことで、こんなメニューだったようだ。
あたしはこんな料理が再び食べれるなんてと、感激して泣いてしまった。それがまた、設定の経歴とピタッとあってしまい、二人は目に涙を浮かべあたしを見ていた。
食事のあとはお風呂は疲れるといけないからということで、今日はすぐ寝るように言われた。
「お風呂入りたかったなぁ」
あたしはベッドに入って少しすると、ブルースのことを思い出した。自分のことで必死で、ブルースのこと忘れてたよ。大丈夫かな? しかし、疲れのためすぐに寝てしまった。




