其の三 浪士、御預
幕府から東下命令が出たらしい。
それは清河八郎という奴の企てから来た命令だ。
清河は浪士組を自分のいいように使いたいと思ってる。そのために、東下させようと言うのだ。
「知るか!! 俺は京に残る!」
近藤たちも京に残るらしい。
しかし、俺たち4人で何をすることも出来ず……。
「芹沢先生」
平間が身を乗り出しながら言った。
「ここは近藤さんたちと共に行動したら如何でしょう?」
「んん……」
その手もあるが、近藤たちがどう出るかが問題だ。
「とりあえず酒だ」
「はい」
平山が席を外した。
俺たちは八木源之丞邸に世話になっている。近藤たちも八木邸に居るが、今は別の部屋に居る。
「新見」
「はい」
「近藤たちはどう出ると思う?」
「京に残ると思います」
襖が開いて、酒を取りに行った平山が戻ってきた。
「まあ、呑みながらゆっくり考えましょう」
そう言いながら、茶碗に酒を注いだ。
「そうだな」
みんな笑っていた。しかし俺は……笑えなかった。目の前がぼやけて、頭もぼーっとし始めた。
一杯になった茶碗から、酒が少しずつこぼれてく。
「芹沢先生!」
「!」
平間の声で我に返った。
「すまんすまん」
笑ってごまかし、茶碗に残った酒を呑み干した。平山に注ぐように言い、二杯、三杯と呑む。
「おめぇらも呑め呑め」
話しなどそっちのけで酒を呑んだ。
……梅毒が進行してるのか。こんなんなっちまって。情けねぇなぁ。
ほろ酔いになったころ、土方と沖田が訪ねてきた。
「これはこれは」
「芹沢先生。実はご相談がありまして」
「相談?」
「はい。我らは京に残ります。ですが、芹沢先生のご意向も伺ったうえで松平容保様に市中警備と将軍家茂様上洛時の警護を願い出るため、嘆願書を出すつもりでいます」
「おお! 名案だ! それならば、我々も近藤さんたちと京に残るぞ」
土方たちは礼を言い去っていった。
嘆願書を出して間もなく会津藩から、以下十三名を当藩で預かると内諾がきた。密旨で清河を暗殺するようともあった。
「清河暗殺か」
清河たちが東下するまで三日しかない。
しかしこの三日のうちに機会がなく、清河暗殺は失敗に終わった。




