表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

其の二 浪士、業火

 文久三年二月五日。

 そこには大勢の男が集まっていた。数は二百ほどだという。

「芹沢先生、署名して来ました」

「ご苦労」

 冬と言えども熱気がすごく、暑苦しい。俺は鉄扇で顔を仰ぐ。

「諸君!」

 声のする方を見ると、浪士取扱役の鵜殿が立っていた。

「一組三十名ほどで七組作った。各組に三人の小頭を置き、残りの者は並隊士とする」

 三番隊の小頭に俺と新見。平山と平間は六番隊の並隊士。そこには天然理心流の近藤勇、土方歳三、沖田総司なども居た。

 そんな感じで隊の編成発表、道中の諸注意が終わった。

「では、弁当を肴に一杯やって下され」

 酒や弁当が運ばれてくると、平山と平間が戻ってきた。

「芹沢先生、お酌しますよ」

「おう! おめぇらも呑め呑め」

 がははははと豪快に笑い、大声で話した。酒もあるだけ呑んだ。

 ……また痛み始めた。

 赤い点々は出ないようになったが、体中が痛む。どんなに酒を呑んでも、豪快に笑ったり大声で話していても、痛みが紛れない。

「芹沢先生? 大丈夫ですか?」

 新見の一言で平間も平山も静かになった。

「痛みますか?」

 三人の心配を振り払うように、歯を見せて笑い大声で言った。

「俺を誰だと思ってる!? 芹沢鴨だぞ! こんなとこで死んでたまるか!? 酒を注げ!」

 その言葉に三人が反応し、同時に三人で杯に酒を注ぎ、酒が溢れ出した。三人は驚き互いの顔を見合わせ、笑った。

 俺もつられるように、大声で笑った。


 二月八日。

 浪士組は江戸を出て、京へ向かった。


 二月十日。

「ふざけるなぁ! 貴様、俺を侮辱しているのか!?」

「いえ、決してそのようなことは……」

「では何故、我らの宿がないのだ!?」

 宿割りの近藤が、俺たちの宿をとっていないだと?

 ……ふざけるな!

「すぐに手配致します故、お待ち下さい」

「よいよい。野宿をしろと近藤先生がおっしゃっているのならば、我らは野宿致す。しかしこの寒さのうえ、暖をとらせて頂く!」

 俺は新見たちに薪を持ってこさせ、火をつけさせた。

 消すように頼む近藤を差し置き暖にあたる。

 ……暖かい。

 寒さのせいか今日は朝から節々が痛み、今夜は早めに床につこうと思っていた。だが宿がないため、床につくことすら出来ない。

「近藤さん!」

 土方や沖田たちが騒ぎを聞き、駆けつけてきた。刀の柄に手を掛けている。

「みんな、()せ!」

「貴様ら何をしている!」

 声の主は鵜殿であった。

「こんな所で問題を起こすような者は、江戸に帰れ!」

「!」

 俺は急いで火を消すように指示した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ