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勇者召喚。
最近何かと聞く言葉だ。
小説投稿サイトでは書く人間の多い一大ジャンルであり共通する内容はシンプル。
異世界に勇者として召喚される事だ。
そこから派生して軍事兵器扱いだったり、何かをして欲しいと頼まれたり、無理やり従えて部下にされたり、人民を導いて欲しいと頼まれたりと作家によって千差万別まさに腕の見せ所といった所。
しかし、今となっては誰もやらないであろうモノがあるそれは――テンプレ中のテンプレ,
魔王を倒すために勇者を召喚する事だ。
内容もやり尽くされた感ムンムンで、仲間と共に各地を回り迷惑をかける魔族を退治。
お金を稼いで船の乗りに同じ事の繰り返し、たまに大規模戦闘に巻き込まれて命の危険を感じつつ生還。
そして最後に魔王城へ勇者たちだけで突入。
魔王軍本隊の相手は王国騎士団の出番だ。
そんなこんなで王座で待ち受けていた魔王を激闘の末何とか倒す。
完全にどこかで聞いた事がある感むんむんだ。
そして俺はその当事者、名前は轟空。
恥ずかしながら勇者として魔王を倒した高校一年。
そしてこっちに戻ってきたわけだ。
今考えてもテンプレ過ぎて夢かと思うが、魔王の奴を倒したご褒美は俺のスマホの中に納まっている。
約一年向うで過ごしたが、ご褒美をくれた女神さまによるとこっちでは一日しかたってないらしい。
ここもテンプレだ。
だからと言ってこっちと向うの時の立つ流れがそこまで違うわけではないらしい。
いくら魔王退治を異世界人にまるなげしていても一様神だからなそれぐらいの力はあるか。
まぁいくらテンプレ満載とはいえあの旅は十分満喫したしいい思い出だ。
いやな事もいっぱいあった良い事もいっぱいだけど、おっと俺までテンプレだったな。
そして俺は今は学校へ登校中。
殺伐とした異世界から平和な日本に帰ってきた感覚がこそばゆい。
平和こそ最大の贅沢品とはよく言ったものだ。
そろそろ来るよなやっぱり。
俺の幼なじみ達が――
「ゲロ! 糞虫いつみても見苦しいわね! 昨日は無断欠席だったけどきっと下半身事情ね!」
「そんなことで休むかっ!」
こいつは提灯萌俺の幼なじみの一人だ。
全くこいつは顔だけなら向うの世界の女神様ぐらい整っていて綺麗なのに、毒しか吐かない。
胸はほとんどない。
ちなみに女神様は巨乳だ、魔法で偽装しているけど。
本来の女神様の胸部は分からんが偽装するぐらいなので期待は持てないだろう。
髪は黒髪ロングで手入れが行き届いている。
今日みたいな天気のいい日だと髪の毛がキラキラ鈍く光って、その整った顔を蝶の羽のように幻想的に引き立てるが、再度言おう毒しか吐かない。
「全くお前は約一年ぶりだってのに……」
「ゲロ何ってるの? まるで久しぶりに会ったみたいに昨日もそのしょぼくれた顔は残念ながら覚えがあるわよ!」
「残念がるなっ! まぁいつもの事か……でアイツら?」
久しぶりのこの感覚にため息が出る。
すると左腕に。
「ダーリン僕はここだよ」
「だーからいきなり抱き付くなって」
俺の腕に抱き付いているこいつは黒木光、俺の幼なじみの一人だ。
白髪のツインテールがトレードマークで、俺をダーリンと昔から呼んでいる。
顔は美少女と言っても10人中10人が答えような程整っている。
ただ。何故か俺以外の男と一言も喋ろうとしない
時折瞳の輝きが消えることがあるがそういう奴なのだろう。
胸は控えだが形がいいと自称している。
「ゲロ! 私もよ糞虫!」
「なんだよお前まで」
いつものノリで提灯が抱き付いてきた。
提灯が右腕、黒木が左腕だ。
「おは……よう……ござい……ます……轟君……私も……参戦……です」
そういってこいつの間にか現れた、こいつ天上院果実は正面から俺に抱き付いてきた。
やっぱりでかいな。
こいつは低身長だが胸が大きくてスタイルがいい。
そんな豊満な胸をぐいぐい押し当ててくる。
それに対し俺は下に向かおうとする男の活力を意思の力でねじ伏せる。
紳士の当然のたしなみだ。
こいつは顔は前髪で隠しているが、その下の素顔は二人に負けないぐらいの美少女だ。
栗毛のショートカットで顔が見えなくても可愛らしい印象を受ける。
こいつらはいつも俺とくっつきたがる。
まぁ小さい頃からそうなので慣れたモノだが。
「だーもう熱いからくっつくな」これも恒例ってやつだ。効果は大してない。
「駄目だよ! 君は僕のダーリンなんだから!」
「いえ……私……です!」
「糞虫の飼育は私の仕事よ!」
例の意の如く心の声が聞こえるのは少し後です。
キャラかぶりは気にしたら負けです