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「つーか、なぜ当たり前のようにお前らは俺の家にいる?」
見慣れた自宅に見慣れた人物たち。
そういう事だ。
もう何度目にわからないたっぷりの呆れの籠ったセリフだが、いつもの事とはいえ俺のプライバシーはナッシングタイムである。
俺のプライバシーは自宅に案外なかったりする。
自宅とはプライバシーを保護してくれる空間ではないのだろうか?
たまにはプライバシーが欲しいがこいつらが許してくれない。
それでも許してしまうのは慣っれて奴だ。
「だってダーリンの家だよ僕の家じゃないか!」
「そう……です!」
「ゲロそうね!」
「まいつもの事か、じゃあ夕飯ハンバーグでいいか?」
全く3人そろってそんな眩しい笑顔で言われたら何もいえねじゃねーか。
なんたって見かけは抜群の3人。
その3人の笑顔となれば価値は分かりきったモノだ。
やっぱり美少女には笑顔が似合う。
……くっさ! リアルじゃ言えたもんじゃねーな。
「ゲロ!いいわよ!」
『やった私轟君の作るハンバーグ好きなんだ楽しみ』
と普通に心で喜ぶ提灯、これが表にでていればならさぞ可愛いだろうに。
「僕もそれでいいよ!」
『お肉か轟君の体のお肉も美味しそうだがらいつか口でしっかり咀嚼したいな』
いややめてマジで、流石の俺でも人肉食はキャパオーバーだよ。
愛情が深いせいかしらんが、もっとまとな方向に行ってくれないだろうか。
これが本気なのか分からないのが少し怖い。
まぁ黒木の事だからよほど変な事を俺がしなければ大丈夫だと思うけど……
「私の……好物です」
『いつ食ってもお前の料理は絶品だからな! 俺の嫁に来る準備は万端だな』
こっちはこっちで俺様キャラ、どうなってんだこいつら?
「じゃあ作ってるから風呂入っちまえ」
「ゲロ! じゃあ皆で入りましょう!」
「イイね僕も賛成だよ!」
「私も……です」
そんなこんなで3人を風呂に入れて、ちゃちゃっとハンバーグを作り、4人で食べた。
ちなみにあいつらはパジャマ姿で、随分前から俺の家に入りびたっているので、着替えは俺の家のタンスに常備している。
「じゃあ俺風呂入るから後言っとくが背中は自分で流すから入ってくるなよ」
『『『むふふふ、ダメだよ』』』
とくるわけだ。
流石に毎度恒例の俺が浸かっている風呂場への突入も今回は完全防衛だ。
魔力課金ロックを課金! 消費魔力10分で10!
「あれ? あかないわよ」と提灯。
「立てつけが悪いんじゃないの? あれ開かない? つっかえ棒とかないように見えるけど」黒木が不思議そうに。
……
「本当……ですね……鍵……なども……ついて……いる……気配……も……ありま……せんが……空き……ませ……んね」と最後に天上院。「
なにやらがたがた脱衣場の扉で奮闘しているようだが、無駄なあがきだ。
ちなみに今、こいつらの声を聞けているのは魔力課金星、周辺聞き耳、一定範囲の人間の言葉を耳で拾うモノだ。
ちなみにかかる魔力は5分で10、中々使えるじゃないの。
これで俺の悩みの一つ、着替えの途中でこいつらが突撃&べたべたを防げるわけだ。
悪い気はしないが凄い着替えづらいし、アイツらが舐め回すように見てきて少し怖いんだよな。
まぁこれで長年の悩みが解消されたので少し頭を整理しよう。
まずこの世界に侵入した魔族の目的。
侵入した数は不明、目的も不明、魔王の魂の残骸を持ち出す以上魔王と何か関係ある事しかわからない。
できるならこちらに来た魔族が、魔王の命令で奴隷とかした魔族でなければいいが、これは本人がやりたくてやっているわけじゃないから、倒すことに罪悪感が残る。
魔王の死後その力は弱まって強い意思のある魔族は自由をとりかえしたが、そうではない魔族も沢山いる。
俺の仲間の一人スベテの話では、数年の時間さえかけえばいずれ影響は消え去るそうだが。
もし、今魔王が復活してしまえばいずれ魔王は舞い戻り向うの世界は再び戦乱の渦に巻き込まれるだろう。
その時、こっちの世界がどうなるかわからない。
魔王は手段をえらばない残虐な奴だ。
回復の為魔族を喰らう程度平気でやる。
当然人間を喰らう事に躊躇しないだろう。
おそらくこの世界で魔王に立ち向かえるのは俺一人。
魔王は魔力の籠った攻撃以外の攻撃を無効化できる。
こちらの世界にそのような兵器や武器はない当然、軍隊でも倒すことは出来ないだろう。
となれば向うの世界に置いてきた聖剣が必要だが、流石の魔力課金でも取り寄せは出来ない。
だが面白い項目を見つけた、すこしリスクがあるがこれがあれば魔王は無理でも魔族とは戦えるだろう。
できる事なら、相手に状態異常を魔力課金で付加できればいいいが、魔力課金はこちらの世界の存在と事象に干渉するモノ、異世界の住人には効果はない。
こういう時向うの世界最高の頭脳を持つスベテに相談できればいいのだが……。
ああそういえばいい機会か。
魔力課金を操作星から辿ってテレフォンマークのアプリを課金した。
プルルルル聞きなれた音が脳内に響く。
【……なん……じゃ……何の……よ……うだ……勇者よ】
「女神様ですか? 少し聞きたいことが」
【すまぬ……が……後……に……してくれ……今……時空……が……揺らい……でい……まとも……会話……できん】
「そうですかじゃあ後でかけなおします」
【待て……勇者……伝えた……とが……魔王そ……の世界……つの器……復活……】
「それはどういうことですか女神様? あれ切れちゃった……あー魔力切れか残ってるの30しかないわ」
どうやら魔族は魔王復活を画策しているようだな。
つってことは探している器は複数、それがいきモノなのか道具なのかは不明だが、やれやれまだ勇者家業は卒業できないらしい。
さて出るか。
これ以上はあいつらが何をするかわからん。