第1話 猫身転生
「ちくしょう、やってらんねぇ……」
チェーン居酒屋「城木屋」四子玉川駅前店のカウンターに突っ伏し、思わず小声でつぶやいてしまった。
顔を横に向けると空になった生大ジョッキ、ハイボールジョッキ、巨峰サワー、ウーロンハイ、芋焼酎「黒高千穂」のグラスが並んでいる。まだ水曜日だというのにかなり飲んだ。飲まざるをえなかったのだ。
今日は朝一の上越新幹線に駆け込み新潟駅からタクシーで30分の客先に出向き、設備担当の木野村さんにガミガミ怒られながらソフト改修を行った。
ソフト改修と言っても不具合ではない。客先は元請けに要請していた仕様を、下請けである弊社に伝えていなかったのだ。つまり元請けのチョンボなのだが元請けの担当田島氏は
「私が行ってもソフト直せるわけじゃないし、行ってもあまり意味ないから玉木さん独りで行ってくんない? いやぁ私も忙しいもんで!」
ときたもんだ。僕だって忙しいわド畜生が、とは言えず
「アッハイ、明日の朝一で行きます」
と答えてしまった。社畜の悲しい習性である。
申し遅れた。僕の名前は玉木小鉄。30歳。社畜系システムエンジニア。同僚からは玉木さん、タマちゃん、あるいはコテツと呼ばれている。君も好きに呼んでくれたらいい。
「すみませーん、そこの作業服のお客さん」
僕は今勤め先である大荒木システム㈱の作業服を着ている。他に作業服を着ている客はおらんだろうから僕に声をかけているのだろう。仕方なしに顔を上げると
「空いたグラスお下げしていいすっかー?」
と金髪クルーカットの店員に尋ねられた。どうぞと答えると「失礼しゃーす」と林立した空きグラスを片付けていく。
今何時だろうとスマホを見やる。22時08分。
明日も普通に無慈悲に仕事だし、そろそろ引き上げねば。飲みさしの日本酒と二切れ残っただし巻き玉子を口に放り込み会計に向かった。
「ご会計5,240円になりまーす」
にこやかに店員のお姉さんに告げられ、フトコロが中破した。
週末に行こうと思っていたオッパブは諦めざるをえないですね……
お姉さんのそこそこ豊かな膨らみを眺めながらそう思った。
店の外へ出ると11月の風が身体を撫でていった。
冷たかったが酔いは覚めない。今夜はかなりチャンポンしたのでだいぶ酔っている。
街灯や電飾看板がやたらとチカチカした。
千鳥足で我がアパートへ向かっていると、スマホがブルっと震えた。
数少ない(本当に少ない)友人の吉岡からだ。
「結婚式の招待状、早く返事してくれー」
とのことだった。仕事が忙しすぎてつい忘れてしまっていた。悪いことをした。
――いや、それは本当の理由ではないのかもしれない。
実のところは友人が幸せになる光景を見るのが辛かったから、返事を出しそこねたんじゃないか。そんなことが頭をよぎる。
自分は恋人はもちろん女性の知り合いもおらず、お金を払って風俗もしくはJPEGファイルで股間の息子を慰める日々である。
仕事も今日のような理不尽にさらされることが多く、長時間労働は常態化し、休日は何もやる気が起きず、必要最低限の家事とスマホゲーをポチポチしていたら終わってしまう。
こんなはずじゃない、こんなはずじゃなかった――
エンジニアを志した以上忙しいのは覚悟していたが……
楽しくない、楽しくないのだ。
何かを成し遂げても誰にも感謝されず、ミスれば怒られ、時には(今日のように)ミスしなくても怒られペコペコ頭を下げる。入社当初に抱いていた志も多忙とストレスによって消えてしまった。
気づけばストレスによる暴飲暴食から腹回りも洋梨めいてきている。
このままウダツの上がらないオッサンになってしまうのだろうか?
こんなはずじゃない、こんなはずじゃなかった――
同じ言葉が、アルコールにやられた言語中枢を駆け巡る。
そんな懊悩に囚われながら我がアパートの近くまで来ると、ゴミ集積所の前で何やら小動物がうごめいていた。
猫だ。黒猫だ。
どうやら集積所に残った生ゴミを頂戴しているようだった。
近づいてみたが首輪は見当たらない。野良猫のようだ。
ゴミを漁りながらふりふりと動くお尻がとてもかわいい。
僕自身、猫を飼ったことはないが世話をしたことはある。
友人の吉岡はアパートで猫を飼っており、吉岡が家を空けるとき彼の代わりにご飯をあげたりトイレを替えたりしていた。
猫の生き様はいい。
食べたいときに食べ、寝たいときに寝る。
人間の言葉など馬耳東風だ (猫耳東風と言うべきか)
あんな風に生きられたら―――
社畜生活が長くなった今、その想いは強まるばかりだ。
「チーっチっチっチっ」
まだお尻しか見てないのでご尊顔を拝謁したいと思い声をかけてみた。すると彼(彼女?)は胡乱な目つきでこちらに顔を向けた。
顔幅は狭いが耳は大きく、鼻筋がスッと通っており瞳は青みがかっている。
これはなかなかのイケ猫だ。
ぜひモフりたい。
そんな僕の煩悩を知ってか知らずか、黒猫はこちらの存在を認めるやいなや、まん丸だった目をシュッと縦長にし身体をじりっと身構えた。あからさまな警戒モードだ。このままでは遁走されモフることあたわず。当方は友好な使節であることをアッピールし心のドアを開いてもらわねば。
「大丈夫だよー、怖くないよ―」
と、すしざ◯まいのポーズでにじり寄った。
武器は持っていないというボディランゲージ、そして笑顔。
種族が違うとはいえ円滑なコミュニケーションを図るにはこのメソッドが一番であることですね?
だがしかし黒猫はすわっとしっぽを立たせ一目散に逃げ出した!
なんということか! 交渉のテーブルにも座らせてもらえないとは!
僕も千鳥足を走らせながら必死に声をかけた。
「ちょっと待って! 少し撫でさせてもらえるだけでいいんだ。先っちょだけでいいから!」
説得もむなしく黒猫はますます加速し大通り方面へ駆けていく。
大通り? まずい、この脇道はともかく大通りはまだ車が走っている。このままでは轢かれてしまう。
「待って! 止まってくれ! もう触ったりしないから」
果たして黒猫は止まってくれた。
―――道路の真ん中で。
猫の右手からは大型のトラックが猛スピードで迫ってきている。だが黒猫はじっとトラックを見据え微動だにしない。猫は強大な危険が近づくとかえって動きを止めてしまうのだ。
(死なせたくない!)
その一心で僕は道路に飛び出し黒猫を抱え込んだ。
その刹那、ドンッという衝撃を受け、宙に跳ね飛ばされた。
2秒ほど空中を漂ったあと、重力に導かれアスファルトにハードな口づけをした。
不思議なもので歯が何本も折れていても5、6秒ほどは何も感じなかった。
案外平気? なんて軽視してみたが、当然その勘違いは歯だけではなく、全身の激痛によって報いを受けた。
途絶えそうな意識の中、僕はあの猫を探した。
すると僕の左側3mの距離のところにぐったり倒れている黒猫の姿があった。口元には血溜まりができている。
僕は黒猫に何か言葉をかけたかった。
だが吐血とともに意識は黒く塗りつぶされ、その思いが叶うことはなかった。
◆
どれくらい時間が経っただろう。
わずかに大地が揺れるのを感じ、僕は目を覚ました。
奇妙な地面だった。
常磐色の一面に所々黄緑色の線が走っている。こんな地面は生まれてこの方見たことがないし、聞いたこともない。そしてやはり微妙に揺れてるもんだから胃袋に残った酒がシェイクされて気ぼち悪い……
「うぷっ」
臨界点を越えてしまった。
ここがどこか分からない以上、我慢すべきなのだがもう限界だ。
ちょっと失礼しますね……。
エロエロエロエロエロエロエロエロエロエロエロ……
ゲホッ、がはっ
ハァー… エロエロエロエロエロエロエロエロエロエロエロ……
マグカップ2杯分の酸っぱい液体を吐くと胃がスッキリし、頭の回転も戻ってきた。
そういえばケガは治っており、どこも痛くない (吐き気だけ残っていたのは謎だが)
200mほど先に白亜の建物が見える。じっとしていても仕方ないし行ってみよう。人がいるかもしれない。
1分ほど歩くと常盤色の一面の端に着いた。
端に着いて分かったのだが、この地面は水に浮いていおり、30cmほどの水面を挟んで別の常盤色の一面が浮いている。どうもこの地面は巨大な水生植物の葉っぱらしい(どうりで揺れるわけだ)
振り返ってみると高さ3mはあろうかというイノーマスな蓮の花が咲いていた。やはりここは現世ではないという確信が強まっていく。
さらに1分ほど歩き白亜の建物の前まで来た。建物はギリシャ建築めいた大理石の柱と屋根で構成されており、入り口は鉄扉によって閉ざされていた。はて、どうしたものかと思案していると、
「玉木小鉄さんだねぇ。入ってどーぞ」
という女性の声がし、驚愕のあまりちょっぴり失禁した。スピーカーも見当たらないしどういう仕組みで音声を出したんだろうといぶかしみながら鉄扉を開けた。
中に入ってみると30mほど廊下が続き、廊下の両サイドには3m間隔でマッシブな石像たちが実に良い笑顔で思い思いのポージングを取っており思わず「ナイスポーズです!」「キレてる、キレてるよー!」とエールを送りたくなる。
30m先は大広間になっており大理石の床が敷きつめられていた。
その広間の中心には布団と天板で構成されたテーブル、すなわちコタツが置かれていた。大理石の床にコタツって違和感がすごいなこれ。
コタツの主は青白く輝くロングヘアーの見目麗しい女性でテーブルの上に顔を乗せてくつろいでいる。
顔の右側にはビールジョッキ、空になったグラスが2つ、色とりどりの瓶 (酒が入っていたと思われる) が並んでおり、左側には食べかけの鶏肉のソテー、チョコレート、おしんこが置かれている。
「へぁ…いらっしゃい。さぁ入って入って」
そう言って女性はコタツへ僕をちょいちょいと手招きし、僕はおずおずとコタツへ入った。うぉっ、暖かい。ちゃんと電気が入っている。
僕の表情を見て察したのか、
「ふっふー、驚いたでしょ? コタツは人間界からの供物で、電気は水車を回して得てるのよー」
とニマニマした顔で答えた。
人間界? ということはやはり、
「すみません、ここは現世ではないのですか?」
「ええ、ここは天上界。あなたはトラックに轢かれて天に召されてしまいました。
ねー、猫ちゃん?」
すると瞳が青みがかった黒猫がコタツよりひょっこり姿を現した。おお! 僕が助けようとした黒猫だ。
黒猫はジト目で僕の顔をにらんでくる。まぁ、僕のせいで巻き込まれたようなもんだからねぇ…… 合掌して謝罪したがぷいっと顔をそむけてコタツに潜ってしまった。
「ふふふ、つれないですねぇ。でもまぁ『助けようとしてくれたことは認める』って言ってましたよ」
「そっかぁ…… ってなんで猫の言うことが分かるのです?」
「それはもう私女神ですから」と言って彼女は目を閉じ豊満な胸に手を当て答えた。
「申し遅れました。
私はメモリア島の構築者にしてエルフィーダ皇国の守護神。
善行の奨励者にしてまほろばの三女神が長女。湖の化身。
名をララパイルと申します。以後お見知りおきを」
と朗々と名乗った。
なるほど、女神と言うだけあってただの自己紹介にも神聖なものを感じる。
――ジャージにドテラ姿でなければ。
「まぁ今はオフですから。気持ちいいんですよこの格好。
あ、ビール飲む? この世界のも、なかなかイケるわよー」
と言って彼女の空いたグラスに金色の液体を注いでくれた。
泡も出てるし、確かにビールのようだ。
間接キッス、役得だな!と思いながらビールを口にする。
ガツンとした苦味の中にほのかな甘味も感じる。
クラフトビールにこんなのがあった気がする。うまい。
「イケるでしょー。 次はこれ飲んでみて。チロンヌで作ったリキュールよ」
チロンヌが何かは分からないが注がれた紫色の酒を飲んでみた。
これもうまい。紫蘇焼酎に近い風味だ。
「しかし、自分は死んでしまったんですね……」
グラスに入った紫色のリキュールを見つめながらつぶやいた。
改めて認識するとショックだった。
あまり良いことがない人生だったが、こうもあっけなく終わってしまうと苦いものがある。
「残念だったわね……」
にへら顔だったララパイルもこの時ばかりは神妙な表情だった。
しかし一瞬で切り替えると、
「でもあなたは幸運よ!
なんと! 私が管轄するエルフィーダ皇国に転生するチャンスをあげます。
この猫ちゃんと一緒にね」
そう言って猫をコタツから引き上げながらバチコーンとウィンクしてみせた。
そうか、これはいわゆる異世界転生というやつか。
僕もそこそこ重篤なオタクなので、この手の展開には馴染みがある。
転生したらチートだったりモンスターだったり液体だったり幼女だったりして、食堂開いたりコンビニ開いたり現代知識で無双したりする例のアレだ。
「どう転生してみる? 猫ちゃんと一緒に」
猫と一緒にというのが妙に引っかかるが何を迷うことがあろうか。既存の異世界転生作品の展開を思い浮かべれば期待に胸とか胸じゃないとこがムクムクと膨らむではないか!
「女神様、ぜひお願いします!」
若干血走った目でそう答えるとララパイルは
「オッケー、承諾したわ。
さっそく新転生システム『ダイナミック・チャンポン』 Ver 0.82を起動します」
と声高に宣言するとコタツの後方に巨大な赤色に輝く魔法陣が出現した。
システムのバージョン番号が1未満なのがすごく気になるけど、まだβ運用中とかじゃないですよね? と疑問をぶつけたが彼女はニッコリと微笑むだけだった。こわい。
「大丈夫よ四捨五入すれば1だし、
早く猫ちゃんを持って魔法陣の中に立って」
あ、そっかぁと納得しながら (酔っていたのだろう)、黒猫を抱え魔法陣の中心に立った。黒猫は特に抵抗することもなく眠たげな顔である。
ララパイルに視線を向けると彼女はいつのまにか取り出した水晶玉に指を触れ、右へ左へと動かしている。スマホ画面をスライドするような操作であった。
「うーん、前回はナミディアに送ったからぁ、今回はロンダムにしようかなぁ」
どうやら転生先を選定しているようである。
転生先はどんな街だろう?
かわいい子がたくさんいるといいな、ドゥヘヘ……
「決めた!ロンダムにしよう。ポチっとな!」
採用する言葉が若干古臭くないですかねと指摘しようとしたが
「あっ、ちょっとずれた」
という血の気が引く台詞のせいで喉から出なかった。
「ちょっとずれたってどういうことです!? やり直しは効かないんですか!?」
「ごめんなさい、その辺はまだ実装してなくて……」
「やっぱりβ版じゃねーか!」
という心温まるやり取りをしていると、僕と黒猫の身体が光の粒になって分解されていく。ミスタッチした場所への転送が始まったようだ。痛みはないがすげーこわい!
「大丈夫、海とか火山口とか100パー死にますってとこじゃないから」
「実際何%ぐらいで死にそうな場所?」
「……30%くらい?」
「3割バッターかよ! 強打者じゃねーか!」
「魔法の発展に犠牲はつきものです……」
「チクショー! 死んだら化けて出てやる!」
「やだなぁ、もう死んでるじゃない?」
首絞めたろうかこの女神と思ったが、足は既に分解され身動きが取れない。
「そんなに心配しないで。人にさえ会えればきっと助けてくれるから。
エルフィーダ皇国の人々はみんないい人よ。私が保証するわ」
「会ったばかりの女神様に言うのは憚られるんですが、
ララパイル様の保証ってのが信用できません」
「えへへ……」
と言ってララパイルははにかみ頭をかいた。
褒めてねーよ! と突っ込みたかったが分解が口まで進んだため、それは叶わなかった。
◆
気がつくと僕は草むらの中に佇んでいた。
ススキのような植物が一面に生い茂っており、遠方には枯れ木がまばらに立っていた。
太陽はとっくの昔にお隠れになったようで、夜空には2つの月が煌々と輝いている。
どうしよう、めっちゃ焦る。
草むらに降り立ったのはいい、
時間帯が真夜中だったのもギリOKだ。
問題は目印となる建物が見えないことだ。
どこに行ったらいいのアタシ!?
恐怖から心拍数がバンバン上がっていく。
こんなに焦るのは小学生時代、林間学校のオリエンテーションで迷子になって泣きべそかきながら山中をさまよったとき以来だ。
あの時は先生方が探してくれたからいい。
今回は僕を探してくれる人などいる訳がない! 知り合いがいないのだから!
うわー! どうしよう!?と頭に手をやると両手に今までにない感触があった。
頭に虫でも乗っているのかと思ったが違う。
その物体を触ると"自分の身体"という感触があるのだ。
つまりその物体には僕自身の神経が張られている……
もしかして角でも生えたのかと思ったが感触はふにふにと柔らかい。
柔らかくて頭の左右にあるもの……
耳か。
鏡がないので確かめようがないが、猫耳的なものが生えてるようだ。
ちなみに人間の耳もちゃんと目の隣についている。
あと気づかないふりをしていたが、作業服ズボンのお尻付近がモゾモゾする。
初対面の人に「あなたの子よ」と赤子の写真を見せられるぐらい認知したくないが、意を決してズボンとパンツを下ろした。すると尾てい骨付近から黒く細長いしっぽが生えていた…… 間違いなく猫のしっぽだ。オーマイガッ!オーマイガッ!! 認めたくない事実であった。
そういえば僕と一緒に転生された黒猫はどこにいった? 付近を見渡したし、4つの耳で物音を探ったが存在を確認できない。
自分の身体に発生した異変、見当たらない黒猫、この2つの項目から僕は"ある可能性"に気づいた。気づいてしまった。
めまいを感じながら僕は数分前のことを回想した。
あのときララパイルはなんと言っていた?
「どう転生してみる? 猫ちゃんと一緒に」
そう言っていた。
「新転生システム『ダイナミック・チャンポン』」
そう言っていた。
この台詞から察するに「猫ちゃんと一緒に」というのは猫と一緒(同一個体)になるという意味であり、チャンポンとは「異なるものを混ぜる」、つまり人間と猫を混ぜて転生させるという意味ではないか……?
当たっている…… この推測はおそらく当たっているだろう。
だが当たったからと言ってこの危機的状況は何も改善されない!
希望の光は依然として1ルクスも見えない!
「チクショ――!! 僕に猫耳としっぽ生やしてどうしろってんだよ―――!!?」
30年の人生で最大の叫び声を上げたが、この何も遮蔽物のない原野ではむなしく消えていくだけ―――
こうして僕の異世界ライフは始まったのだった。