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ほろほろ鳥も夢をみる  作者: Miki Kukiri
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小品:爪 




 暗い夜道を 私は裸足で歩いてゐる 


 歩を進めるごとに痛みを感じて とてもつらい 足の裏に なにか尖つた物が刺さるのである 


 指でつまんでみると とげ……いや 爪だらうか 軽く曲がつた するどい切片であつた 


 空に星があらはれたらしく 芝居に照明が加はるやうに 辺りの明るさがぼんやりと増した 


 両脇の くさむらか低花木の植込みと思つてゐた影の列が 実は座つた老婆たちであることに気づいた 


 みな同じ顔と恰好に見える そしてひどくかなしげな表情で 爪切り鋏をつかひ ぱちんぱちんと ひたすらに自分の手足の爪を切つてゐる その爪が 道にたくさん落ちてゐるのだつた 


 爪はどんどん伸びるやうだ 切つて短くするのが間にあはないと 伸びてきた爪が蛇に変じて 老婆を呑みこんでしまふ するとまた別の老婆が 姿のよく見えない者によつて連れてこられ 無理やりその場所に座らされるのである 


 そこかしこで老婆が入れかはり また呑まれていく 爪の切れ端はもう白く積もつて雪のやうだ…… 


 ふと気がつくと 私の爪まで伸びてきてゐた 手の表面も皺だらけである 顔にさはる これははたして私の顔なのか 腰が痛い 膝も痛い 背をまつすぐにできない 


 強い力が 私をつかみ 傍らに座らせ 落ちてゐる爪切り鋏を渡してきた 


 ああ こんなかなしいことが いつたいぜんたいほかにあらうか…… 





            了 






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