PRINTEMPE, 2018 Ⅱ
こころ密めき答へを知らず
蟻地獄にとらへられし鳩をみつめる
星と女
* * *
心細き労働へゆく蛇
傍らに遊女の死
くもり聲の心臓
刺をぬいてくだされ
地底湖に鎖され少女は
夢を数へる指となつた
向かひ側でわらふ
たくさんの歯たち
金色の目の司祭が咬む
我が母の指
* * *
緋色なる月
消えゆきぬ
花曇
ひとりごと
浮きつしづみつ
春の闇
あてどなく
老女歩みて
春の虹
棄て去りし
眼さがして
花の山
しやぼん玉
さまよひてあり
春かなし
* * *
夢判じしつつ
土筆を摘みてあり
襁褓買ひ
小さく歩む
花の道
単純な恋の鋳型や
春の闇
渡りゆく空想憎む
烏貝
春雲や
記憶の重く湿りけり
* * *
石段に
花弁つもりたる
暇日かな
花の枝
ただ誇りかにゆれゐたり
かあさんと云ふ聲きこえ
春月夜
龍の棲む
池のそばなり
春麗ら
紅梅や
老母黙して
佇めり
* * *
聲なくて
影もなきひと
春の夢
旅路なる
母いかにあり
花満ちぬ
梅咲くと
ふれしひとあり
夢うつつ
十年すぎ
君わらひたり
花の川
椿咲く道で別れし
己かな
* * *
聲をきくことかなへてや
花の闇
玄関に散り敷く花弁を
踏みて発つ
家移りの
老いし女あり
紫木蓮
木蓮を
みあぐる老母に
日の翳り
忘るべき
枝垂桜と
別離かな
* * *
リハビリで撓むからだや
春催ひ
須彌山と
称ばるるやまの
野焼かな
夢みつつ
身をのばしたる
桜かな
幸うすきひと生きぬけり
春の風
うしろ向きに進みてもみん
春ひなた
* * *
菫花さびしげに見る
童かな
芝桜
まことちひさく
喝采す
蛇穴を出づ
満天の星のした
片栗の群れ咲く
古城の夜明けかな
引きこみ線の果て霧のなか
菫咲く
* * *
涙またこぼれ落ちゆく
春の闇
( つづく )
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