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ほろほろ鳥も夢をみる  作者: Miki Kukiri
29/68

PRINTEMPE, 2018 Ⅰ  



    「春だよ」と 遠くのひとにささやきぬ 





◇ Printempe 



 長き髪

 触れ(たはぶ)れて

 冬終はる 





 雪どけに

 深く息する

 老父かな 





 春含む空のしたなる

 孤独かな 





 日降(ひくだ)ちて

 頬の涙に春の風 





 春嵐(しゆんらん)のなかに

 祖先の罪ひとつ 





 * * * 





 パンジーの素直さ憎し

 春の風 





 (つな)がれて

 吠えかかる(いぬ)

 春をかぐ 





 穢れなきこと恥辱なり

 少年の指 





 夜明けまで

 生まれかはりの

 (はな)となり 





 青金石(ラピスラズリ)に魅入られし()

 そとは春の雨 





 * * * 





 海星(ひとで)飼ふ眼科醫も

 かつては人倫を説けり 





 思ひ出や

 紙香水(かみかうすい)

 ひかれゆく 





 渦を巻く

 花びらのなか

 孤児となり 





 悪夢降る夜に飽きし()

 自涜(じとく)かな 





 春風や

 故郷(さと)うしなひて

 悔ひ重し 





 * * * 





 道化師のまなこくもりて

 春時雨(はるしぐれ) 





 春闇(しゆんあん)をかへりみて

 さびしさ砂となり 





 卵白のやうな愛もつ

 不死の鳥 





 いのちてふ

 玩具もてあまして老ひぬ 





 満ち足りて

 錆の浮いたる

 弥生かな 





 * * * 





 もの思ふ

 片割れ舟や

 春の雲 





 あしおとに

 木蓮(もくれん)ゆれる

 旅路かな 





 遠すぎる

 想ひ(びと)あり

 朧月 





 はながらの傘をゆらして

 (けん)に勝つ 





 子を宿し

 春をあゆめる

 重さかな 





 * * * 





 小橋わたる

 老女ひとりに

 星朧(ほしおぼろ) 





 ()となりし母

 春雷の音になく 





 白梅(しらむめ)の咲くも

 こころのととのはず 





 春の()

 をんなの(まなこ)

 捕食せり 





 たれの夢にうながされしや

 椿咲く 





 * * * 





 ()の皮を

 脱ぎすてて()

 春の夜 





 はじめての子のねむる地や

 春の風 





 なにごともなき(ひる)の道

 (ひな)の春 





 啓蟄に目ざめくるもの

 なだめ泣く 





 はじめて聞く料理したがる

 彌生かな 





 * * * 





 恋人のてれて笑ふや

 花粉症 





 春灯(しゆんとう)の無邪気さ

 ただにものがなし 





 春手袋をはづした指で

 文字捧ぐ 





 ぶらんこも

 ただ揺れてあり

 春の夜 





 三つまで不幸にたへん

 春の雨 





 * * * 





 唇の弾むをんなや

 春の闇 





 検屍解剖されつつ夢をみる

 花弁(はな)一枚 





 ふいの死のごと

 恋路はしれば

 春の風 





 ふれしひと

 いまうしなひて

 椿咲く 





 花浮かべ海へと至る

 小川かな 





 * * * 





 春をいひわけに

 恋から逃げさる

 わたしの指先 





 既亡人(きばうじん)偲びて

 靴のならぶ春 





 ほほゑみの

 遠くさりたる

 彼岸かな 





 流落(りうらく)の果ての闇夜(やみよ)

 花の舞ふ 





 嗚咽する聲にゆれたる

 しやぼん玉 





 * * * 





 肥肉(ふとじし)の女の夢や

 朧星(おぼろぼし) 









          ( つづく ) 







  





 


Mi rifuzas kopiadon

kaj utiligon

sen mia permeso.




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