PRINTEMPE, 2018 Ⅰ
「春だよ」と 遠くのひとにささやきぬ
◇ Printempe
長き髪
触れ戯れて
冬終はる
雪どけに
深く息する
老父かな
春含む空のしたなる
孤独かな
日降ちて
頬の涙に春の風
春嵐のなかに
祖先の罪ひとつ
* * *
パンジーの素直さ憎し
春の風
繋がれて
吠えかかる狗も
春をかぐ
穢れなきこと恥辱なり
少年の指
夜明けまで
生まれかはりの
華となり
青金石に魅入られし児や
そとは春の雨
* * *
海星飼ふ眼科醫も
かつては人倫を説けり
思ひ出や
紙香水に
ひかれゆく
渦を巻く
花びらのなか
孤児となり
悪夢降る夜に飽きし児の
自涜かな
春風や
故郷うしなひて
悔ひ重し
* * *
道化師のまなこくもりて
春時雨
春闇をかへりみて
さびしさ砂となり
卵白のやうな愛もつ
不死の鳥
いのちてふ
玩具もてあまして老ひぬ
満ち足りて
錆の浮いたる
弥生かな
* * *
もの思ふ
片割れ舟や
春の雲
あしおとに
木蓮ゆれる
旅路かな
遠すぎる
想ひ人あり
朧月
はながらの傘をゆらして
拳に勝つ
子を宿し
春をあゆめる
重さかな
* * *
小橋わたる
老女ひとりに
星朧
児となりし母
春雷の音になく
白梅の咲くも
こころのととのはず
春の燈を
をんなの眼
捕食せり
たれの夢にうながされしや
椿咲く
* * *
児の皮を
脱ぎすてて来し
春の夜
はじめての子のねむる地や
春の風
なにごともなき晝の道
鄙の春
啓蟄に目ざめくるもの
なだめ泣く
はじめて聞く料理したがる
彌生かな
* * *
恋人のてれて笑ふや
花粉症
春灯の無邪気さ
ただにものがなし
春手袋をはづした指で
文字捧ぐ
ぶらんこも
ただ揺れてあり
春の夜
三つまで不幸にたへん
春の雨
* * *
唇の弾むをんなや
春の闇
検屍解剖されつつ夢をみる
花弁一枚
ふいの死のごと
恋路はしれば
春の風
ふれしひと
いまうしなひて
椿咲く
花浮かべ海へと至る
小川かな
* * *
春をいひわけに
恋から逃げさる
わたしの指先
既亡人偲びて
靴のならぶ春
ほほゑみの
遠くさりたる
彼岸かな
流落の果ての闇夜や
花の舞ふ
嗚咽する聲にゆれたる
しやぼん玉
* * *
肥肉の女の夢や
朧星
( つづく )
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