VINTRE, 2018
Vintrodormadon finis mi.
◇ Vintre
天狼の
まなざし強く
冬立ちぬ
気だるげに
猫が退きゆき
冬立ちぬ
行處なく
冬原の上に
星まばら
眠りながら泣く児のごとき
わが小指
ふたたびの
銃声へつづく
雪の川
* * *
姫椿の咲く夜が嘆き
さまよふてゐる
恋ごころ
ともりて消えぬ
冬の風
しほからさを噛むて
老女泣く
片割れを
さがし求めて
夜も雪
刻よどむ冬
粒となり眠る
* * *
泡の浮く夢をみつめて
少女ひとり
うたふこと
踊ることなき
冬の華
水音も
しづかな冬の
別れかな
歩みゆくひと
独りなる
雪の国
ひたすらに
雪ふる夜や
喪家の燈
* * *
南国をでて幾年や
指冷ゆる
冬月を
見あげるこころ
ふたつ泣き
線香の
まるき香りや
月供養
さびしさを知らぬ
仔猫の眼かな
立ちすくむ
わが足もとに
冬の影
* * *
魚群の
凍りゆく濱
星冴える
ふるさとの養母
過ぎてゆく
冬夜かな
跫音の
鋭さ増しぬ
冬の夢
恋のふり
ひとつ重ねて
春隣
星がふるへる魚卵のやうで
もうすぐ春
* * *
愛のことばの皮剥ぐ晩に
遠き思ひ出うづきだす
夜明けこぬまま児らみな目覚め
行く手きめかね身の竦む
片眼さしだし勝ちえた妻と
骨を洗ひに海へゆく
花の屍かさなる夜を
位牌ぬすみし女衒ゆく
恋の小壺のうつろになりて
足しにくる者とてもなし
蜘蛛のひと糸たらして救ふ
それがわれにもできたなら
千鳥の足となりたる養父を
賽の河原において去る
おろか者よといはれて育ち
血潮の沸くをもて余す
( つづく )
○ 先日、ラジオで、八木重吉の詩について語られている講演を聴き、
かつてやはり重吉の詩を読みながら短詩表現への意欲を育んだ、なつか
しくもいとしい感覚を思いだしました。
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