第零話 戦争の始まり
祖国は聞いている 私達の若い心を
懐かしい母のように
豊かな愛の瞳で いつの日も
何処への平和 優しく見守る
祖国は知っている 私達の燃える心を
どのような苦しみも
怖れずに進み行く 命かけ
世界の平和 守る斗いを
祖国は呼びかける 私達の燃える心に
進めよ斗いを
すさぶ嵐に怯まず 強くあれ
永久なる平和の日まで 強くあれ
祖国は聞いている//作詞・エヴゲーニー・ドルマトフスキー
戦争の始まりを知る者はいない。いや、そもそもいつという定義を当てはめようと考えること自体が間違っているのかもしれない。
世界は最初から奪い合うことを望んでいたのだ。それは本能ともいうのかもしれない。
初めは生きるために互いを捕食し、やがて、知性を得て土地を奪うために武器を作り上げた。
地球がまだ幼い頃から、それは様々な思想の元に繰り広げられた。
神のために戦う者もいた。平和のために戦う者もいた。
世界はいつまでも終わらない夢を見続けていた。
悪夢にも似た歴史は一九四五年、第二次世界大戦の終戦を境に落ち着いた。だが、それは偽りの平和を謳う国家の作り上げた幻想に過ぎなかった。
一九四二年、カリフォルニア州ロサンゼルスですべては始まった。
ロサンゼルスの戦いは日本空軍の艦載機による空襲として記録されている。アメリカ陸軍はこれを撃退することに成功したが、日本はこの事実を否定した。事実、日本ではこの日、艦載機を飛ばしたという記録はない。
防空レーダーで西方一二〇マイルの地点に未確認飛行物体を感知した。当時日本軍に対する警戒が強まる最中の出来事。それは日本軍の艦載機として報道された。
時速三二〇キロで飛行する赤く光る飛行物体。その数は二五機にも及ぶ。
アメリカ陸軍第三七沿岸砲兵旅団が対空砲火を展開、約一四三〇発にも及ぶ対空砲火は命中したとは記録されていない。
空を飛ぶ発光体は今までに見たことのないような軌道で飛来し、そして、何事もなかったかのように通り過ぎていったという。
その後の消息は不明で、その事件は謎のまま終わりを告げた。それは歴史の中に埋もれた一つの真実でもあった。
記録にはない真実では、一四三〇発の砲弾は命中していた。飛行体は撃墜された。
その数、四機。アメリカ陸軍はそれを公開せずに、撃墜した機体を軍事基地へと保管した。
それらにはロシア人が搭乗していた。だが、植物状態で尋問することも出来なかったという。
コクピットはまるで空っぽのバスタブだった。その中央に寝転がる彼らは体にいくつもの穴が空けられ、穴から伸びた管が機体の回路へと直接接続され、彼らの意思によって戦闘機は飛行していたという真実を長年の研究を掛けて知りえた。
未知の技術で作られたものは、長い年月をかけて研究された。だが、当時の技術力ではアメリカも頭を抱え、戦争で活躍することはなかった。
終戦を宣言した日に廃棄すべきだと謳う者もいたが、それ以上に研究を継続することに対して賛同するものも多く、それらの情報が公開されることはなく、眠ることもなく、人々の平和の陰で静かに起こされようとしていた。
四機にはそれぞれ名を与えられた。
四機の中でも一番大きな機体をクロウ。
速さに特化した機体をスワロー。
夜に溶け込むような黒い機体をオウル。
最期の機体を鋭い嘴に似た姿からウッドペッカーと命名された。
それはいつまでも眠り続けるものと思われた。いつかその技術が解明され、民間の航空事業や宇宙開発に役立つことになると研究者たちは考えていた。
そのどちらも否定されたのは一つの任務が行われた日だった。




