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守りたいと思ったんだ

最強の武器『スマホ』を手に入れたので、これからは週一位で投稿していこうと思います。

最初は、変わった奴に会ったと思った。自分で言い出しておいてなんだが、フツウの奴に「助けてほしいか?」なんて聞いて、頷くような奴はまず居ないからだ。


 次に、面白い奴に会ったと思った。可愛い顔して「逝かせてあげたら?」何て言える奴を、俺は目の前のこいつ以外に知らないし、これから知ることもないだろう。


  それから強い奴に会ったと思った。話を聞く限り、こいつのいたところは、山賊に襲われて、こいつは逃げてきたとのことだ。ここが重要だが、こいつは独りで逃げてきた。別に仲間を見捨てた最低野郎だなんて思っていない。むしろ逆だ。こいつが逃げてきたことにより、誰かに助けを求めて、結果全員が助かる可能性が高まるのだ。しかし、その決断をするのは容易じゃない。だから、俺はこいつが強いと思った。


 そして……


「……っと、ちょっと、ルキウス君?」

「ん?わりぃ。なんだ?」

「なんだじゃないよ、まったく。……で、本当に君に勝算はあるの?」

「なんだ。そんなことかよ」

「そんなことって……」


 いや、ホントに「なんだ」って感じなんだけど。だいたい……


「俺があの男を瞬殺したのは見ただろ?」

「それは確かに見たけど」

「あの程度の連中なら、十人くらいは軽いぞ」

「そーいうところが、信用ならないんだよね~」

 

 失礼だなオイ。


 まあ、こいつも不安なんだろうな。助けて貰ったとはいえ、見ず知らずの奴に、大事な奴の事を頼むんだ。そりゃあ、誰だって不安になる。だから、


「心配するな。俺が全員助けるから」


 だから俺は、安心させるような笑顔でそう言ったんだ。


 大丈夫だと。任せてくれと。


「わかった。君の、その笑顔を、信じさせてもらうね」


 リームもまた、お日様のような笑顔で応えた。


「つーか、問題は俺よりむしろ、お前じゃね?」

「うっ、それは確かにそうかも」

「体力とか、運動神経はどうなんだ?」

「自分で言うのもなんだけど、結構良い方だと思うよ。園では足も一番速かったし」


 ん?今、聞きなれない単語があったような。


「どうしたの?ルキウス君」

「いや、お前今『園』って言ったよな」

「?……うん、そうだけど」

「『園』って、なんだ?」

「私、言ってなかった?」

「ああ。言ってなかった」

 

 俺がそう言ったのに対し、リームは「あっちゃあ~」といった表情で、自分の頭をはたいた。


「さっき話した私のいた居たところは、『光のこども園』っていう孤児院で、他の子供達やシスター達といっしょに暮らしていたの。だから園っていうのは、みんなで暮らしていた『光のこども園』のことなの」

「ああ。なるほど」

「…………」

「ん?どうした。黙り込んで」

「ううん。なんでもないよ」


 そう言って微笑んだリームの顔は、とても優しい色をしていた。


(普通はね、孤児って言ったらみんな憐れんだり、蔑んだりするんだよ。でも、君にはそんな雰囲気全然なかった。こんなときでも、それが嬉しくて笑顔になった、って言ったら、君は笑うかな?)


 そんな風に思って、嬉しくなっていただなんて思いもよらなかった。別に笑ったりなんかしねーけど。


「ま、じゃあ、運動神経は悪くねーのな」

「うん。まあ、そういうことだね」

「じゃあ、その園とやらに行くまでの間に、俺がお前に、少し対人戦の心得を教えてやろう。そうすりゃ、雑魚相手になら、少なくとも捕まったり、大怪我したりっていうのはないだろ。……人を傷つける事になるが、構わないか」

「うん。そうしなきゃ、私たち自身がやられちゃうもん」


  きちんと覚悟をしている。そんな良い目だった。


「それがわかってるなら良い」


 その心構えがない奴に教えても、意味はないからな。でも、ある奴に教えるなら、意味はある。そんじゃあ一丁、戦闘指南といきますか。


「ついてこれるか?」


俺は片目を瞑りながら、少々茶化して言った。


「もちろん♪」


それに対して、ニッコリと笑い返してくるリーム。


「よし!……まあ、俺が教えることは一つしかないんだけどな」

「上げたテンションが、気の毒なほどしまらないね」

「まあ、大事なことだ。よく聞けよ。……相手の目を見ろ」

「目??」


リームが不思議そうに訪ねてくる。


「そう、目だ」


俺はしっかりとうなずき返す。


「人の目って、結構動いてんだ。特に戦ってるときなんかはな。例えば、相手の右頬を殴ろうと思ったら、自然とそこを見てるし。逆に、右に避けようと思ったら、そこに危険が無いか、無意識に見てる」

「なるほど」


ふむふむ、とうなずくリーム。しっかり聞いてくれてるみたいだ。


「だから、相手の目を見るんだ。まあ、すっげー熟練者とかだと、気配を読んできたりするから、目を見ても意味ねーときもあるんだけどな。まあ、そーいう奴は、俺が相手するから関係ーねぇ」

「そっかあ。わかった」

「じゃ、歩きながら実践練習するか」

俺は後ろを向き、リームに向かって殴る振りをした。右、左、もう一度左。最初は上手く避けれなかったリームも、数をこなすとそれなりに出来るようになってきた。運動神経が悪くないってのは本当みたいだな。つか、普通に良いし。まあ、指導自体も簡単なものだしな。俺が、“あの人”に一番最初に習ったことだし。


 これを会得したからって、リームが敵を倒すことは多分できない。でも、身を守ることくらいは、リームの筋の良さから考えて、ほぼ絶対できるだろう。今から、敵がたくさんのとこに行くんだ、指南して損はない。


この戦闘指南にも、少し余裕が出てきたので、リームに1つ聞いてみた。


「なあリーム」

「なあに~?」

「お前にとって、家族ってなんだ?」

「そうだね、改めて聞かれると少し考えちゃうけど、やっぱり……宝物、かな。世界で、一番大切な」

「たからもの……」

「私が孤児だって言うのは話したよね」

「ああ」

「小さい頃は、ちゃんと理解してた訳じゃないから、 全然問題なかった。でも、ちゃんと理解しちゃったんだよね。その時は、本当に荒れたよ。私の場合は捨て子だったんだ。それで色々悩んだ。捨てられたってことはつまり、自分は親から要らないとされた、必要の無い人間なんだ、ってね。みんなにも、いっぱいひどいことを言った。『本当の家族じゃないくせに』とか、『偽物』とかね」

「…………」

「でもね、そんな私にも、みんなは優しかった。家族として接してくれた。それで、私分かったの。本物とか、偽物じゃない。ただ、みんなは私の大切な家族で、宝物なんだ、って」

「そうか」


  そこからは練習を続けながら、ずっとリームの家族の話を聞いた。


  例えば……


「私には、一番の親友のレナって子がいてね。同い年だからかもしれないけど、すごく馬が合うんだ。今の園の一番の年上は私とレナだけだから、色々お手伝いとかも忙しいけど。でも、基本はレナと一緒にやるから、すごく楽しいんだ」


  と、親友について語ってみたり、


「園の最高齢は、クレア=ウィンダーミア、って言う人でね。私の名字も、そこから貰ったんだ。私達みんなの、お母さんみたいな人なんだ。いつもはニコニコ笑ってるけど、怒るとすっごく怖くてね。怒られた子は、その怖さから、その時怒られたことは二度としないんだよ」


  自分の母親のような人について語ってみたり、


「今、園には私を含めた、20人の子どもと、三人の大人たちがいてね。最近ちっちゃい子達が増えたから、もう毎日が戦争みたいに忙しくてね。でも、みんな、大事な大事な家族だから、いっぱい楽しいことをして、いっぱい笑わせてあげたいんだ」


  と、少しお姉さんらしいことも言っていた。けど、その時の顔は、少し沈んだ様子だった。家族のことを話していたら、残してきた家族がどうなってるのか、不安になったんだろう。


  けど、それ以外は、家族のことを話してる間中、ずっと笑顔だった。それだけ、家族が大切なんだろう。


リームのその話を聞いて、俺はなんだか温かい気持ちになった。そして、リームのその笑顔を、守りたいって思ったんだ。

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