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core17:ブラジル上陸作戦

 アイヴィーとコクピットに向かった。最終調整はデスウォーカー戦と対人戦の練習だった。違法な戦闘アンドロイド『白銀の狼殺し、クロスボーンラビット』との仮想戦闘、それに紅音の新型機体にローマンのレンタルアサルトパッケージの練習だ。


「凄いボリュームだけど、半日じゃ覚えきれないよ」


「ーこの練習はここでしか出来ません。雪人さんはヘリで移動後、お父様とオリオンに会い、マーベリックに向かいます、そこの小型コクピットは仕様が限られてますので練習は出来ませんー」


「え?僕がマーベリックに!?」


「ーロストチルドレンしか居ませんので、少々心配ですがー」


「アイヴィーはこれないの?」


「ーはい、雪人さんだけです。リナさんもマイクさんも行きませんー」


 練習しながらアイヴィーが説明してくれた。違法アンドロイドの闇市はイギリスの戦艦からEMPトマホークを打ち込み、電子機器のみを一気に破壊する。EMP耐性の強い電磁シールド搭載のヘリで目標地点へ降下し父さんを探す。


 アメリカの調査チームが発見したと情報があったようだが、自分の父親に会うのがこんなに大掛かりとは夢にも思ってなかった。



 必死に練習した。紅音の新型機体はブレアの練習機に寄せ集めのパーツでとても新型とは言えないけど、メインエンジンはフランスで倒した超大型タイタンのコアを使用しているので今までに無い加速とパワーだった。


 それにマイクさんが考案したヴァリアントアームという、サイドアームが凄い。両肩に一本ずつあり、色は青。紅音の機体は真紅なのでより目立つだろう。自由自在に可動するし回転する。これで四本の腕になる。


 ヴァリアントアームは僕だけが動かせるので、紅音は余計な事を考えなくていいから操作しやすかった。これでしか使用できない兵器もあるようでちょっとおっかないかな?


 練習に熱中してしまい、紅音との待ち合わせに遅刻してしまいそうになる、急いでコクピットから出ると上手く走れず何度も転んでしまう。意識と行動がバラバラ、それに意識が遠くなる。なんで、今、こんな事に・・・・・・。


「あ、紅音・・・・・・、会いたいよ」


 倒れたままそっと呟く。夢の中から紅音の声がする。


「バカ、聞こえてるんだから、早く来い」


 風を叩く重い音はヘリの音。だんだん音が近づいてくる。眩しい太陽が全身を貫き、もうこの光景は最後だと思った。直接聞こえてくる紅音の声。


「そんなにボロボロで歩いて来るなんて、ちゃんと前を見なさい」


 真紅の美しい手・・・・・・。おかしい。ここは空母の筈なのに・・・・・・。


「ー・・・・・・。雪人?ー」


 マイクさんの声がする。遠い。僕は一体どうなっているんだ。紅音に会わなきゃ。行ってしまう。いや違う、僕は紅音に会っていた。そして手を繋いで強く抱き締めた!思い出した!


「ー雪人!聞こえているか?サイコキル爆弾でやられた!EMPトマホークの着弾後に反撃してきやがった、今の状況分かるか?記憶が混乱してるはずだ!お前はヘリでアンドロイド闇市を通過中にサイコキル爆弾をもろに食らった、対生物兵器で脳みそがやられる。汎用スーツで、ある程度は防いだ筈だからしっかり意識を保て!ー」


 視界と記憶がはっきりして来た。これは土、地面だ。燃料の燃える匂いは僕が乗っていたヘリ。墜落したんだ。上空で別のヘリが旋回している。周りは黒煙で視界が悪く、ボロボロのトタン屋根の家やコンクリートにレンガの家が密集していて、迷路のように感じた。


 デフォルトアイが僕のステータスと現在位置を把握する。損傷無く良好、バッテリー良好、アンドロイド闇市、南へ10キロ先に目的地だ。ここから早く離脱しなきゃ。とても生身では戦闘用アンドロイドには敵わない。


「マイクさん、大丈夫です。直ぐに行動出来ます。他のみんなは?」


「ー護衛のライオットアーマー5人はサイコキル爆弾で混乱状態だ、アギルギア二機を今向かわせているが、15分は掛かる、とにかくそこから逃げるんだー」


「分かりました!」


 地形は複雑で、建物はどれも一階建てで、密集している。最短距離で移動する為に屋根の上やベランダを走る。ジャンプし強引に突破。壊れたエアコンや、ダクトやフェンスに大量の障害物を回避する。あたりには人は見当たらない。


 すると遠くに小さく見えるのは飛行機?いや、小型のドローンだ!見つかってしまった!隠れる為に下に逃げたいけど、最短で脱出しなきゃ。


 そして、隣の建物の屋上にジャンプして飛び移ろうとした瞬間!下から足を掴まれた!視界が回転し受け身を取れず地面に叩きつけられる。全身への強い衝撃で一瞬息が出来なかった。凄く痛い!


 目の前には鉄むき出しの旧式殺人ロボット、量産型AK1MEだ。頭のメインカメラと目が会うと背中からマシンガンを取り出し構えた。まずい・・・・・・。


 四つん這いのまま走り、弾丸の雨から逃げる、発砲音で周りの音が聞こえなくなり、弾丸はトタンやレンガの家を軽く貫通する。


 それでも必死に走る、僕は武器は持ってないから反撃も出来ず、少しずつ目的地から遠ざかってしまう。なんとかしないと。


 すると今度は、コンクリートの壁を突き破りさっきのロボットが出てきた。駄目だ、僕はまだ死ねない!紅音と約束したんだ!


 マシンガンの下にグレネードランチャーが着いていて、デフォルトアイが危険とマーキングした。射線が僕に向かって表示している。


 考える暇もなくグレネード弾が発射され、僕は上半身を強引にひねり回避するる。しかし、グレネード弾は背後で爆発。最悪な事に僕はロボットの前に吹き飛ばされた。


 地面に倒れ込み、ロボットの鉄の手がゆっくりと僕を吊し上げる。僕は1人ではとても非力で戦えない。こんな所で死ぬのは嫌だ。汎用スーツのアラートが鳴りっぱなしで、狭まっていく空、だけど、こんな時にうっすらと人の形が見える。あれは本当に人なのか・・・・・・。


「ヒート!!」


 どこかで聞いた女の子の声。建物の上から乾いた発砲音の後に、突然ロボットが爆発して鉄の手から解放される。僕は直ぐに離れた。


 すると、建物の上から黒いジーンズに白いTシャツ、金髪のポニーテール、そしてハンドガンを持った少女がジャンプして降りてきた。この高さから降りて平気なのか?赤い目と目が合う。


「また、会ったね」


 会った覚えは・・・・・・。振り返った顔は綺麗で少女というか、僕よりも少し年上そうな女性だった。ハンドガンでロボットの胸に数発撃ち込む、「ヒート」とという言葉の後にまた爆発する。ロボットの目の光は消えて倒したようだった。


「もしかして、君はアリア?」


「うん、でも私は失敗作だから。あの子はアメリカに行っちゃった。こんな所に居たらすぐに殺されちゃうよ、ほら、早く行きましょう」


「どうして、ここに?どこへ行くの?」


「あなたのお父さんに会いに」


 一瞬戸惑った。このアリアは人工コア生命体。敵では無いと思うけど、多分色々知っている筈。僕が心の底でずっと抱えていた疑問。紅音にはこの不安を隠さず、受け入れて貰った。いつか話そうと思っていた。本当の僕の父親とは・・・・・・。


「うーん、でも、やっぱりあなたに会いに来たのかな、ほら可愛いし魅力的でしょう?ドイツでは好みが分からず、女の子の体にしたけど、どう?今回はせくし~でしょう」


 突然明るく喋り出した。コア生命体とは一体なんなんだ。


短い間でしたが、ありがどうございました。


打ち切りとなります。

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