表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/79

core15:運命は暁の前に

 エタニティドール騒ぎは直ぐに収まった。僕は説明の為に軍に呼び出されたが、VRチャットでの少女との出来事は全て話さなかった。リナさんは軍と艦長に呼び出されて相当怒られたようで、次は無いと宣告された。


 夜になり外に出る。小さな広場がありベンチにリナさんと紅音がいた。紅音はドレスのままで、その色は街灯よりも明るく吸い寄せられてしまった。


 近付くと、紅音の表情は覚悟が決まった顔をしていた。


いつか来ると思っていた瞬間が訪れる。


「雪人・・・・・・、私にはあんたしか居ない。死から生まれたこの命、けして戦う為に生きてきたんじゃない。それを証明してよ。生きる理由なんていくらでもある。でも死ねない理由は一つしかないんだから!」


 大きくて真っ直ぐな瞳、そして精一杯の言葉。涙が止まらず、全て僕に向けた気持ちで全て受け取る涙だ。


「紅音・・・・・・。僕は」


 何故、君を好きになったんだろう。自然な事なのか。フランスで繋がり、ドイツで初めて手を繋いだ。離れてもまた直ぐに会えると当然のように思えた。紅音の中に僕がいると、僕の中に紅音がいると、お互いがそう思っている筈だと信じていた。


「紅音の存在を僕だけが証明してみせる、だから、ずっと、ずっと僕の中で輝いて」


 小さな体と重なる。こんなにも強く、長く、繋がりを永遠に感じ、思い出が涙のようにあふれていく。


「弱いくせに、なによ、勝手な事言って、どうせ死んでも、生まれ変わっても、また私に出会うんだから、何度でも。この運命は変えられない!でも今は、今だけは私と一緒に生きてよ!」


「紅音、ずっと一緒に生きていこう」


 海の音、風の音、少しずつ消えていく。夜空も見えず、心は流れ星のように何度も紅音の中に落ちていく。唇はそっと重なり、なにも考えず、なにもいらない。夢のように永遠に続く二人の物語が見えた。


 気付いたらリナさんは居なかった、メッセージも入って無く気を使ってくれたんだだろう。手を繋いだままベンチに座り肩を寄せ合い何度も確かめ合う。


「リナが言っていた、ブラジルに上陸したら最後、デスウォーカーを倒し、超大型を倒さなければいけない。今回の戦いで殆どが死ぬと。私達が死んでも戦いは続く、最後の一人まで」


 紅音は夜空を見たまま、流れ星を数えている。手を上げて掴もうと、一つ、また一つと。


「僕達が死んだら誰も倒せないよ、誰かがやるんじゃない。僕達がやるんだ」


「当然よ、私、もう、最強だから、誰にも負けない、雪人のお陰で不安がどうでもよくなって消えていくから」


 紅音の手が握り拳に変わる。自信に満ち溢れた顔だった。


「紅音、昔の人は流れ星に願い事するんだって、そうすると願いが叶うって」


「なによそれ、こんなに雨のように降る流れ星に願いなんて、いくらでも叶っちゃうんじゃない?」


不思議そうに僕を見つめる。


「今は殆どが戦争のゴミだけど、本当の流れ星は隕石みたいだよ」


「へぇ、星の欠片が落ちてくるの?なにそれロマンチックじゃない」


 髪をさわる仕草がこんなにも可愛く、いつもと違う髪型は魅力的で美しいから、また目が離せなくなってしまう。


「日本の資料館にあるみたいだよ」


「ふーん、じゃあ行くわよ、約束だから」


「勿論だよ、一番簡単な願い事だね」


「そうね」


 紅音は再び流れ星を指で追う。握った手にそっと力を入れると、当たり前のように握り返してくれた。


 流れ星のように消えていく命と、終えた命、その間で生きる人達がいる。この世界の終焉はすぐそこにあり、最後まで諦めない人達はどんな終わり方をするんだろう。


 最後の最後まであがいてやる。何故なら僕は死ねないから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ