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core25:刻を加速させる鳥Ⅰ

 前は殆ど真っ暗だ。スーツの小さなライトで辺りを照らす。網膜に映し出されたマップにはここの情報はただの正方形だけで役に立たない。エレベーターを使用されないように目の前にあったイスをドアに挟み込む。


 シュミットとドーラは手を繋ぎ僕の後に続く。実験室というよりは事務所のようで資料と端末だらけだった。イスにぶつかりながら目に入った状況からどんな敵がいるのかを想像する。


「なんだよここ、もっとグロいのを想像してたのに。本当にこんな所にアリアがいるのか。まだ奥がありそうだな・・・・・・」


 僕の背中のスーツを摘みくっついてきた。怖いんだろう。はじめた会った時とは違い僕の事を信用してくれているんだと思った。部屋の中央に到達し左、右とライトを当てて警戒する。すると光が反射して僕たちが鏡のように映った!


「うわ、びっくりした!」


「「驚かせんなよ!バカ!!」」


 しかしよく見ると向こうに映った僕達の隣に誰かがいる・・・・・・。目が赤く光り。ロストチルドレン特有の淡い赤ではなく。強烈なコアの光だ。


「ア、アイツか・・・・・・」


皆固まって動けない。


「まって落ち着いて!人型コア?いや、翼がある・・・・・・」


 薄暗いしライトが反射してよく見えない。黒い翼とは形が違い大きな翼と完全に人の顔をしている。髪なのか不気味に動いていて、身長というべきか僕より少し大きいぐらいだった。


 直ぐにライトを消した。非常灯の明かりで姿を観察しようとするもこっちに近づいてくる。目の前には大きな一枚の分厚そうなガラスだった。向こう側に部屋があるんだな。ここから監視しているのか。


緊張が空間を歪め人間の領域ではないとそれは訴える。ドーラとシュミットが僕の前に立ち手で僕を後ろに押しのけた。


「こ、こいつはヤバイ、小さいくせにレーザーとシールドが何個もある。戦って勝てる相手じゃない、黒い翼とは比べ物にならないぞ!」


「逃げよう!」


 すると片方でも3メートルはあるかという翼が動き出す。大きく広げて威嚇しているように見えた。非常灯の明かりを遮り、恐怖で空間を黒く染めながら段々と近づいてくる。全身の神経が危険だと僕に力を与える!本能だ。ここで死ぬわけにはいかない!


「「雪人!エレベーターまで一気に走るぞ!」」


しかし遅かった。部屋全体が無音の赤い強烈なフラッシュで照らされた。今までに見たこと無い細かい無数のレーザーがこの空間を撃ち抜いた!爆発と爆音が後から部屋全体を覆いつくす。シュミットとドーラがかばうように僕を押し倒す。二人とも無事なのか・・・・・・。


「シュミット!ドーラ!大丈夫!?」


僕は二人に声を掛けながら引っ張りあげてエレベーターに向かう。


「だ、大丈夫だ。レーザーは当たってない」


 二人を見るとガラスの破片が大量に突き刺さっていた。特にシュミットの損傷が酷く、体中の白いスキンが剥がれ金属フレームが見えていた。汎用スーツに当たっていたらひとたまりも無かっただろう・・・・・・。


「こんなの大丈夫だから!そんな目でみんな!」


 僕は軽く頷きシュミットを右手でしっかりと掴む。ドーラもシュミットを抱きかかえた。振り返るとアリアが追いかけるように部屋から出てくる。また体中が赤く光り始めた。これではエレベーターごと破壊されてしまう。どうやって逃げようか考える暇もない。後3メートルなのに。


「伏せて!」


 いったいこんな状況で誰が叫んだのだろうか、声がした方を見ると、エレベーターの中から現れたのはコントロールルームにいた少女だった。小さなハンドガンを構える。そんなので倒せるわけがない!だけどあの子は一度前に会っている・・・・・・。そうだローマンを隔離壁内部で助ける時に居た子だ!今度は僕が二人に覆いかぶさるように伏せさせる。


「「なにすんだ!あんなんで倒せるか!」」


ハンドガンを構えた少女の背中から大量の熱が放出されているように蒸気が立った。


「ヒート!!!」


少女が叫ぶ!パン、パンと乾いた音で発射された弾丸は真っ赤な軌跡を描きアリアに命中する。当然のようにシールドで防がれるがこの部屋が壊れるぐらいに大爆発を起こした。衝撃波の中、物凄い力で少女に引っ張られて3人ともエレベーターの中に押し込まれた。しかしドアが閉まっていく中、少女はアリアと戦うのだろうか向こう側へ行ってしまった。


「また・・・・・・。会ったね。次、会うときはもう少しあなた好みになるから・・・・・・」


「え?」


 なぜか少女は僕の事を知っているようだった。エレベーターが上昇する中、上から物音がする。何かがエレベーターの上に乗っかった。緊急停止し天井から火花がでる。ドーラとシュミットを壁側に避難させる。


「くっそあいつらか!」


二人とも目が光る。


「二人ともレーザーで床に穴を開けて!」


「「分かった!」」


床に大きな丸い穴を開けると同時に天井からレンドルフ隊が入ってきた。


「僕達は戦うつもりはない!このエレベーターはもう使用出来ない!下へ行け!」


「・・・・・・。このまま降下する」


 目があった。恐らく隊長だろう、僕たちを無視してロープを更に下ろして降下していく。シュミットとドーラが今にも攻撃しそうだから手を繋いで落ち着かせた。下からドンと爆発音がなる。アリアと少女が戦っているんだろう。レンドルフ隊が使ったロープを使用して上に上がりたいけど肩が動かせない・・・・・・。


「先にこのロープで登るんだ!僕は後から行くから!片手でもスーツの力で少しずつ登れるから!早く!」


二人の背中を押す。


「私たちが先に行って引っ張り揚げる。少しでも距離を稼げよ!」


 二人がロープを登っていく。上まで100メートルはありそうだ。とっくに汎用スーツの力は無くなっておりとても距離なんて稼げない。通信用にバッテリーを残しておくことにした。


 でもよかった。これなら二人は助かるだろう。僕は壊れたエレベーターの中で座り込んだ。下での戦闘が激しくなったんだろう。爆発音がどんどん近づき振動が伝わってくる。床にあけた穴を覗き込むと、閃光が何度も見えた・・・・・・。


生きた心地の無い時間はとても長く、たった1分ほどしか経ってなかった。


「-おい!ロープを引っ張るぞ!ちゃんと掴まれ!・・・・・・。軽いぞ、落ちたのか!?-」


「ゴメン、僕は登るのも掴むのも、もう無理だ」


「-ロープを体に巻きつけろ!-」


「駄目だ引っ張り上げる時間は無い!先に行って!」


下にレーザーが見え始めた。あ・・・・・・。アリアだ・・・・・・。


「アリアが来た!逃げるんだ!」


「-ふざけんなぁぁああああ!オマエを置いていけるわけがないだろぉ!!-」


 穴から下を覗き込むと赤い目と目が合う。死を覚悟した。黒く不気味で大きな翼を羽ばたかせて、一瞬でエレベーターの中に進入してきた。どうやって皆が逃げる時間を少しでも稼げるだろうか。頭をフル回転させる。


「君がアリアだね・・・・・・。僕は雪人、柊灰人の子供だ、もうカールナインは死んだよ」


なぜこんな事を言ったんだろう、コア生命体は喋ることが出来ないはず。すると右手が伸びて僕の首を掴み持ち上げる。く、苦しい。呼吸が・・・・・・。最後の力で二人にメッセージを飛ばす・・・・・・。


『一緒に行けなくてごめん、でも必ず空は飛べるから、行くんだ』


「-いやあぁあああ!-」


意識が遠のいていく中、下からメラメラと燃え上がる人のような物が動いている。片手を上げるように見えた。


「バースト!!!!!」


 突然アリアの体が爆発し僕を掴んだまま下へと落下した。アリアがクッションとなったけど、網膜には足と胸部の骨折と出ている。応急処置と表示され左足と胸締め付けられて、固定された。もうそんなことしても動けないよ・・・・・・。


倒れこんだまま、隣を見るとドロドロと燃えていく人のような物。そうかあの少女か・・・・・・。


「ま・・・・・・た・・・・・・ね」


 僕の下でアリアの体が再生していく。辛うじて動く右手を胸のメインコアに指を突っ込む、破壊できない。なんて非力なんだ。ここで倒さなければ。すると突然、アリアが僕を押しのけて立ち上がる。


「!!!!!!!!!!!!」


 言葉にはならないような奇声を上げ、上に飛んで行った!二人に通信しようとするも、応急処置中で全ての機能が制限されて通信できない!


「逃げて。逃げてお願いだから」

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