core23:殻の中は違う世界Ⅱ
輸送ポッドのマニュアルをダウンロードすると汎用スーツがあるのが分かった、しかも生命維持装置付き。アギルギアのパイロットスーツでは無いけどこれなら何とか地下施設でも行動できるだろう。直ぐに着替えた。
暫くの間、壁を見つめるながら考える。心の底では父さんが関係しているじゃないかと思っていた。何かの研究をずっとやってる人だと。それに一度だけコア生命体という言葉を聴いた事あるような気がする。コア生命体がアメリカを崩壊させたとは言ってもそれは100年前の話で自分には関係ない事だと思っていた。もしかしたらずっと父さんは戦っていたのかもしれない。
僕はずっと一人だった。6歳の誕生日の時だった。いつもどおり父さんは居なく母がバースデーケーキに火を灯す。心の中で願い事をする。とても小さな願い・・・・・・。そしてゆらゆらと弱い灯りは小さな願いと一緒に一息で消えていく。
母が小さな箱を渡してくれた。それはお別れのプレゼント。生活補助プログラムの入った端末だ。全ての事をしてくれる端末。勉強に買い物、医療にメンタルケア。自分の代わりに会話をしてくれて、法律に沿った行動を完璧にこなせる。沢山の感情の作り方を教えてもらった。
そして8歳の時には誰も居なくなった。それからずっと一人だ。でもこの一ヶ月でもう一人じゃないって分かった。みんなのお陰で・・・・・・。
「第6地区に降下して地下道から第七地区の私たちの部屋に入る。3人要るから救出して脱出するわ、アンタは輸送ポッドでまってろ」
「ついてこないで足手まといだわ、それに来ても助けるつもりもないから」
「その3人もロストチルドレンだよね、アンドロイドの体はあるの?」
「ない、ケースに入ったまま」
「シュミット!余計なこと喋らなくていい!」
「それなら、3人で行けば一人ずつ運べる、一緒に行くよ」
「し、死んでも知らないから!」
もういいんだ。親代わりの端末が教えてくれなかった事。それは生きたいという事は皆が持っているんだから。
僕たちを乗せた輸送ポッドが減速を始めた、ガタンと大きく揺れて着陸したようだった。大きな扉が開く。外が薄っすらと見えたのは気のせいではなくって。大気汚染で景色から色を奪い灰色に見えるからだった。
シュミットとドーラの後に続き、扉から出るとここは隔離壁の上だった。数メートル先に隔離壁の上なのに小さな建物がある。扉があり中へと入って行くと、とても暗く下へと続く階段だった。
走って付いていくけど迷路で迷いそうだった。汎用スーツにルートを記憶させる。しかし汎用スーツのパワーアシストが付いてるとはいえ相当な体力を使い距離を下っている・・・・・・。
「ねえシュミット、3人の名前は?」
「名前?0088Mだな大量に作られたから」
「え・・・・・・」
すると、二人が止まり振り返る。その先には扉がある。今までとは違う空気が漂う鉄の扉。ドーラがドアを開けると中には大量のカプセルに入った、人・・・・・・?
「なにビビってんだよ!だから人間モドキだって言っただろ!本当はお前には見せたくなかった!」
ドーラが叫ぶ。高さ2メートル程のカプセルの中は液体で満たされていて、その真ん中にはとても人とは言えない生き物。むき出しの脳と脊髄、そして手の上にのるんじゃないかと思うぐらいに小さい身体が脊髄にぶら下がっていた・・・・・・。
「あ、あ・・・・・・。」
「あれが私たち、でもここに居るのは皆失敗作、後は量産型のエンジンに直結されるんだ、一度接続されたらけして取り外す事は出来ない消耗品として産まれる運命だ」
なんて言葉を言えばいいのか分からなかった。少しでも二人を傷つけたくない。だって皆立派な人間だけど、僕には見せたくないって言ったから。
シュミットが大量のロッカーのような扉を開けてケースを引き出す。
「ドーラ!居たよ!ほら!」
「よし、3人ともいる」
ケースには3つの機械の脳。ロストチルドレンだ。しかしさっきから取り出そうとせず二人とも動きが止まっていた。
「なんだよこれ!なんで触れないんだ!くそ!エラーで触れない!あと1センチなのに!触れられない!」
「シュミット!駄目だ!私も触れない。なんだこのエラーは!やっぱり私達に自由なんてはじめから無かったんだ!カールナインの許可が無ければ隔離壁の外にも出られなかった」
僕が取り出そうと、触ろうとした瞬間・・・・・・。部屋中を赤いランプの光が覆う。
『緊急警報、侵入者発見』
「ドーラ!地下の研究室でなにかあったみたい!あいつが言ってた「アリア」か!?とにかくコイツに運ばせよう、レンドルフ隊ってやつらも入って来ている!戦いに巻き込まれたくない!」
僕は直ぐに一人持ち上げたがなんて重いんだ20キロはあるぞ。汎用スーツのパワーアシストのお陰で何とか3人は持てるけど、とても走れない。
「このまま走れないや、何か入れ物ないかな!?、ごめん荷物ってわけじゃないんだけど」
二人とも呆れた顔だったけど、どこか目は輝いていた。
「あ!そうだ!あの機体があるじゃない!」
ドーラが走り出すとシュミットも付いていった。
「そこでまってろ!」
「わかったよ」
ひとまず3人を元のケースに戻す。このケースごともてないか無理やり引っ張るも汎用スーツが壊れそうだったので諦めた。すると端末に承認依頼のメッセージがる。え?ここはオフラインのはずなんだけど。
よくるみと0088Mからの承認依頼と来ていたので。とりあえずOKを選択した。すると端末が通話ONとなる。
「-はじめまして、私達は0088M。シュミットとドーラが外の世界を見せてくれてそれだけで満足だったんです。そして二人があなたに出会い二人は変わってしまった-」
「どういうこと?」
「-二人はここから逃げる為にアギルギア研究所の訓練に参加した。終わったら逃げるつもりだったんです。私達は置いていくように言ったのですが、急に二人に特別な感情が芽生え、私たちの事までも強く思い助け出そうと行動してしまったんです-」
「それは当然だよ。だって家族だって言ってたよ」
「-私達は人間の家族ではありません。コア生命体を倒す為に作られた人造人間であり生物兵器なんです-」
「そうしたら僕だって生物兵器だよ。今まで生きる目的なんて無かった。皆を守りたくって戦う為に生きているんだから。それに今君が言った事、感情が芽生えたのならやっぱり立派な人間だよ」
「-なるほど、だからシュミットとドーラはあなたに惹かれたんですね-」
「え?」
「おい!何を話しているんだ!」
シュミットとドーラが息を切らしているのか少し顔を赤くしながら1体の黒いアギルギアを運んできた。
「これは・・・・・・アギルギアなの?」
2メートル程ある真っ黒な機体はヘッドパーツは人の顔はしておらず完全にロボットのようで右手には黒いライフル、左手には黒くて小さな盾がついている。そして大きな翼。
「これは、カールナインが作った失敗作みたいだ。しかも丁度3人乗りだし」
「え!?3人?」
確かユリア、ジュリアは2人乗りの第五世代機だったけど。背中のエンジンが下に下がり3人を入れる場所があった。慎重に彼女達を入れていく。ちょっと怖いけどこれだけエンジンが大きければ一人でも脱出は出来そうだった。




