core20:ドイツ娘たちⅢ
一旦休憩って事だけど、なぜか僕は別の部屋にいる。いやこれはクローゼットだ。しかも手足を縛られていて身動きが取れない状態だった。
物音がするのでクローゼットのドアの隙間から部屋を覗くと知らない人が二人いた。でもどこかで見たことあるぞ。銀色のショートカット、確か端末を探しに行ったときに居た二人だ!
「ねえ、この体って結構いいよね!可愛いよね!こんなに可愛いのもらえるとは思わなかった!」
「可愛い!可愛い!最新モデルで殆ど人間みたい!すっごい柔らかいし、温かい。初めての身体なのにこんなに可愛いの貰えるなんて!」
なんか仕草も会話も女の子らしく、確かに見ているとだんだん可愛く見えてきた。ちょっと危険な感じの二人だけど。
「クッキーとかキャンディーとか~」
「私はケーキ食べたい、それもイチゴのやつ!シュミレーター終わったら食べれるて聞いているし」
「「はぁ~楽しみだな~」」
「ねーねーところでさ、服、好きに着ていいみたいだよ」
「本当!?体だけじゃなくって、服もいいんだ!私アンドロイド専用の服しか着れないと思ってたから、この制服だけでもうれしいのに!」
「じゃあ~脱いじゃえ!」
「いや~~!全部!?脱がしちゃ駄目~」
二人で脱がしあいが始まった。目のやり場に困ってしまう。とりあえずクローゼット(・・・・)奥に隠れた。あれ?二人が着る服はどこだ。周りを見ると女性の服しかない・・・・・・。手足が縛られた状態で見つかったら、確実にあの目からのレーザーで穴だらけだ。足音が近づいてくる。ここで死ぬのか・・・・・・。
バタン!とクローゼットのドアが勢いよく開く。クローゼット奥の床で小さく隠れていたが、白い2人の小さな足が迫ってきた。
「うわぁああ、かわいい!」
「ねえねえ、下着もあるんだね!私コレがいいな!」
僕の隣へと手が伸びる。指先が髪に触れ一瞬で空気が凍りつく。
「・・・・・・ねえ。何かいるわ」
その手が直ぐにガシャンと服を両端に跳ね除ける。二人と交互に目があった。
「・・・・・・ねえ。コイツ・・・・・・」
二人とも服はおろか下着すら着けてなかった。だけど目を逸らせない。一瞬でも目を逸らしたらあのレーザーを避けられない。
「「きゃあああああああああああああ!なに舐め回すように見てんのよ!」」
「ひぃいいい!違うんだ!」
「シュミット!早く!蜂の巣に!」
「この!ドスケベが!!!!」
目が赤く強烈に光る。二つの赤いレーザーが僕の脳天目掛けて飛んできた。とっさに両手を前に突き出し、手を縛っていた布をレーザーで焼ききった。這いつくばって逃げようとするも直ぐに捕まってしまう。
「どうしよう!生きて帰せないわ!私たちの全てを見られた、全部よ!」
「初めては好きになった人って決めてたのに!ねえドーラ!ゴミ捨て場の遠心分離機でバラバラにしようよ!」
「そうよね!それは名案だわ!」
いやいやいや、人は入れちゃ駄目だよ!何とか逃げないと!二人に馬乗りになって押さえつけられて意外と軽いけど4つのクッション(・・・・・)が柔らかく全然痛くない・・・・・・。ってそんな事を考えている暇は無い。
「ちょっとまって・・・・・・。コイツ、オリジナルじゃない?しかも若そうだし、それにちょっと可愛いんじゃない」
「ドーラなにを言っているの!?」
「こんなヤツでも私の体全部見たんだから、それに滅多にオリジナルに出会えないよ!私決めた!こいつと遺伝子結合する!」
「駄目よ!確かにこの体なら赤ちゃんできるけど、コイツ絶対間抜けよ!とてもいい環境で子供なんて育てて生きていけないわ!」
「コイツ日本人ね、あそこって環境は悪いけどコア生命体はまだ現れてないし、次の超大型はブラジルって言われているじゃない。日本は地球の裏側よ」
みんな言いたい放題だ酷すぎる。
「アンタに拒否権は無いわ。早く出しなさい。遺伝子情報を」
そうって僕の目の前に手を突き出す。そんな飴玉じゃないんだから・・・・・・。
「へ・・・・・・、あ、いやあ、その・・・・・・」
「シュミット、コイツの遺伝子情報の出し方を教えて」
「まって、検索するから一緒に」
「分かったわ・・・・・・」
「「・・・・・・」」
二人とも動きが止まった。顔が一瞬で真っ赤になり何故かにらまれた。二人とも目が強烈に光っているんですが。さっきからずっともがいていたお陰で足を縛っていた布が解けた。
ふん!と踏ん張りブリッジで二人をどかした。二人とも床に倒れこんだ、ちゃんと手をついているから怪我はないだろう。ダッシュで逃げる
「「にがすかああああああああああ!」」
赤い4本のレーザーがガラスを突き破る。すると逃げようとしていた先の扉が開く。
「雪人さん、何をやっているんですか?さっきから騒いでいたようですが」
アイヴィー、シュツカートにファウスト3人とも揃っていた。最悪だ。
「ユッキー、ファウストという人がいながら、イキナリ浮気!しかも小柄で巨乳に全裸!ユッキー!?」
シュツカートが仁王立ちで腰に手を当てて通させてくれない。ファウストを見ると無言で凄い怒っていたが、おもむろにファウストが制服のジャケットを脱ぎ始めた。
「私のほうが大きい」
そこなの!すると後ろから二人が追ってきて僕の両手に腕を絡ませる。
「あ!エースじゃない!」
「ドーラ違うよ、ベテランだからおばさんたちだよ!」
「コイツは私の物!遺伝子結合したんだから!」
「してないよ!!」
シュツカートが今にも暴れそうだった。もう駄目だ。どうにでもなれ・・・・・・。
「はいはい、ロストチルドレンの皆さんはシュミレーターで訓練のお時間よ」
あ!リナさん!助かった!
「なーに、助かったって顔しているのよ。ちょうど見てみたかったのよね。2on2」
2on2?勝手に対戦になっているし。でも最初からそのつもりだったんだろう。他には誰も居ないし、そもそもアギルギア研究所に来た理由がまだ分かってない。シュミットとドーラが僕を解放して、ファウストの前に僕の背中を手で突き飛ばす。
「いいわよ、2on2。私たちパイロットなんて要らないからあげる。どうせ私たちが勝ってそいつの遺伝子情報さえ貰えればいいんだから」
「新型で新人だろうと容赦はしない、覚悟しろ」
「おお、ファウスト本気だ!ユッキー、私たちが勝ったら後でお洋服買ってね!」
クローゼットを見ると服がボロボロになっていた。あの服はみんなに用意された服だったんだ・・・・・・。どっちにしろ後で買ってあげよう。
そして全員コクピットの前に着いた。もちろん服を着ている。僕はシュツカートと一緒に戦う事になった。リナさんがエースのテクニックを覚えなさいと簡単に言うが、身体に染み込ませるのに相当時間がかかりそうだ。
フリードステップだって後、数十回やら無いと覚えられないと思う。黒いパイロットスーツに着替えてコクピットに乗り込み準備は整った。FLDはまだ真っ暗。
模擬戦とはいえ、全員に緊張が走る。さっきまで余裕そうだったシュミットとドーラは真剣な顔だった。




