表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/79

core19:ドイツ娘たちⅡ


 あれ?両手には凄いやわらかい感触。いつも何も見なくても完璧に座れるのに。ここは僕の肩を置く場所のはずなんだけど・・・・・・。


「ど!どこを触っているんだぁぁあ!」


 この声はファウストだった。なんかコクピットの雰囲気が違うし先ほど説明を頂いたロストチルドレン専用ですね・・・・・・。これはもう駄目だな。強烈な蹴りでそのまま隣のコクピットに入れた。


 こっちはいつもの形だったので上手くフィットした。でも別の意味で感覚が無くなってきた・・・・・・。練習が始まる。オペレーターはアイヴィーがやってくれるから安心だ。リナさんは結果だけ後で見るからって言ってどこかへ行った様だった。視界にはFLDの文字の表示のみで、特別緊張はしなかった。


「-これからアギルギア同士による模擬戦を行います。模擬レーザーライフルとアンチマテリアルナイフを装備、弾数は無制限です。スパイラスシフトは使用できません。胸中心のメインターゲットに当てた方が勝ちとなります。制限時間は3分、各自ウォーミングアップを開始してください-」


 この感覚。手、足、胸、背中、徐々に無くなっていく。次第に呼吸という心のタイミングがシュツカートと合っていく。


「お、ユッキー!凄く心地いいよ。アンリと繋がっているみたいだ」


「-相性80%です。視界が共有されます-」


 バトルルームと表示されておりゲームのようだ。ステージはミュンヘンでドイツに実際にある場所だ。トレーニングルームの様にシンプルで全ての建物はグレーだった。マップには2つの点があり、お互いの位置が完全に分かるのか。


「でもなんで、二人のパイロットじゃなくて僕なの?」


「-この実験用のコクピットは何処とも繋がってなく、直接接続する必要があります、他の部屋に通常のコクピットもあります-」


「なるほど。他のパイロットは離れた場所に居るから駄目なんだ。僕が変わりになれるかは自信が無いけど頑張るよ!」


「ユッキーありがとう!流石!ファウストのおっぱい揉んだだけある!」


「ちょっと!わざとじゃないんだよ!」


「-キーサーマー!許さんぞ!-」


 話している間にウォーミングアップする事も無く、FLDには模擬戦開始のカウントダウンが始まってしまった。


「-模擬戦開始まで、5、4、3、2、1・・・・・・-」


「-Get Ready!-」


 始まった!町とはいえ全ての建物の高さは10メートルで規則正しく建っている。オセロ盤のように完全な正方形で方向を見失うことは無い。今気づいたけど、500x500メートルだった。


 正面からファウストが高速で接近してくるのがレーダーに表示されているので分かる、緊張が高まってきた。エース相手では生半可な気持ちでは絶対に勝てない。


「ユッキー落ち着いて!ファウストは高さを利用した攻撃が得意なんだよ!」


 シュツカートの機体は、両足のサブエンジンが強力だけど細かい動きは出来ず、加速までに時間がかかる。だから予め速度を出さないと、と思っていたら・・・・・・。


「駄目、間に合わない!フリードステップでやり過ごすよ!」


「え?」


 シュツカートは建物を越さない程度に一気に上昇したかと思ったら、ファウストに対して正面を向いたまま直ぐに急降下した。殆どブースを使わず最小限の動きだった。これまでに見たことがない視界だった。


 地面に着地せずまた一気に上昇と下降を繰り返す。ファウストとの距離は100メートルほどだったが、気づいたら建物の影から3発もの赤いレーザーが飛んできていた。まるでコアレーザーのようだった。


 しかしそれは、シュツカートの残像を追うように外れていった。こんなテクニックがあるなんて。今まで見てから避けていたのに。だがこれは挨拶だったのだろう、更に加速してファウストが回りこんできた。


「これは正面に対してのみだから、横に回りこんでくる気だよ!攻撃しないと!」


 模擬戦に慣れてないとかじゃない、反応が本気で追いつかなかった。まさに一瞬だった。エンジンの爆音が恐怖を煽り右か左かを惑わす。逃げても逃げても横に回りこまれて、建物の上からのレーザー、そして下から建物を貫通したレーザーが同時に襲ってきた。避けられたと思ったのに。


 レーザーに気をとられていてファウストが真下にいるのに気づくのが遅かった。FLDのレーダーの弱点は上下が重なると分かりづらい。ファウストの攻撃は一直線に並んでいたからだ。


「-見せてもらおう!君の強さという物を!-」


 全身に鳥肌がたった。こんな事は初めてだった、これは殺し合いじゃない。お互いが自分自身を乗り越える為の戦いだと。だからこそ本気になれる!


 下から一気に上昇して急接近してくるファウストの背中のメインエンジンが火を噴いて、衝撃波とプレッシャーを纏って攻撃してくる。どんな攻撃か検討がつかない!


 シュツカートは寸前で交わして反撃するつもりだが、そうじゃないんだ。紅音やローマンと戦ってきたギリギリの戦闘は!


「ユッキー!?」


 僕は全身を回転させ、螺旋を描くように一見不規則に見える体制をとり加速させる、シュツカートも反応してくれてエンジンを最大出力させた!


「いくよ!ファウスト!」


 ファウストは下からレーザーを撃ちながら、アンチマテリアルナイフを構える。僕達はレーザーを大きく避けて、レーザーライフルを撃ちながら高速旋回する。1、2、3発、全部外れる。だけど本命は・・・・・・。あと1メートル!


 僕とファウストのアンチマテリアルナイフが重なる!僕達は回転させた体で右足で蹴りを繰り出した。


「-それはもう一度見ているんだ!-」


 やっぱり読まれてた!紅音の時に使った攻撃だったから、だけど今回は違うよファウスト!僕は紅音のように叫んだ!


「これは!スペシャルバージョンだってーの!」


 足を左手でガードされるけど、直ぐに足を引っ込め再度回転する。高速落下しながら二段蹴りだ!


 ファウストは右手で2段目を弾きお互い上下が逆転した。凄い!これを弾くなんて!

しかもファウストのナイフがメインターゲットに当たりそうだった。

僕達は着地した。急いで視界でファウストを探すけど見当たらない。レーダーには建物の中!?いや、上だ!


「ユッキー凄すぎ!目が回っちゃうよ!」


「攻撃合わせてくれてありがとう!ファウストって接近戦も得意なんだ」


「そう、なんでも出来るよ。また来るよ!うぅ・・・・・・。ファウスト怖い!バカ!」


「-私の訓練メニューをサボった罰だ!逃がさんぞ-」


 そうだ、僕は自分の戦い方ばっかりだった。さっきまでシュツカートが合わせてくれてたんだ。実際の戦闘は下手したら1分で終わる。そんな中自分の事ばかり考えては駄目だ。


 シュツカートの得意であり最高のポテンシャル、それは・・・・・・。


 ファウストが一旦建物に裏に隠れる。そう次の攻撃も建物を利用して上下攻撃で来る筈だ。レーザーは建物を貫通して下から。2発目のレーザーが上から来た!待っていた。ファウストが急降下する前に、思いっきり垂直ジャンプした。それも最大出力。高度は追い越し上を取った。


そのまま降下していかないように、レーザーで進路をふさぐ。さぁ追って来るんだ!


「-この私に空中戦を挑むとは!-」


 シュツカートもファウストと同じく空中戦が得意だ。フライングガンシップの猛攻を避けながら本体を貫通する程のテクニックを持っている。僕はアンリにはなれないけど、今なら行ける感じがした。


 ファウストは地面に付かずそのまま強引に上昇して追ってくる。ブーストは互角だろう。下から物凄い勢いで加速してくる、獲物は絶対に逃さない完全な捕食者だ。


 僕達は小鳥だ。絶対者である猛禽類の爪が今に食い込もうとする時。小さな翼で軌道を変え、左手でナイフを持ち突き出しながら急降下する。右手のレーザーライフルを構えて連射した。カウンターで来るレーザー、お互い回転しながら避ける。


 たった1センチの差だった。ギリギリまで引き付けたけど。リーチの差ではなくテクニックにより生み出された勝利だった。


「-ファウスト勝利です-」


 そのまま降下した。FLDには『YOU LOSE』とご丁寧に表示が出ている。着地したらシュツカートは地面に座り込んで地面を叩く。かなり悔しい感情と安堵が同時に僕に流れ込んできた・・・・・・。


「うわーん!負けたー!」


「-よく頑張った。リーチの差を埋めらるまで追い詰められた、まさかここまで成長しているとは-」


「ユッキーのお陰だよ!」


「僕は回避はまったく考えてなかった、ギリギリまで耐えて凄いと思ったよ!二人がかりでやられちゃったね、ははは」


「-少年。腕立て伏せ100回、シュツカートはサボった10回分の訓練メニューをこなす様に-」


「「うぅ・・・・・・」」


 コクピットから出ると、ファウストが仁王立ちして待っていた。シュツカートはシュミレーターと同じく。地面に座っていた。


「よし!腕立て伏せ!はじめ!イチ!」


なんで。僕が・・・・・・。5回も出来ず。何故か足がつってしまった。


「イテテテ」


「だらしないぞ少年!今日は時間はたっぷりあるからな、徹底的に訓練だ!」


 アイヴィーがお疲れ様でしたと飲み物を持ってきてくれたので立ち上がったら、自分の足に足を引っ掛けて豪快にころんだ。だけど何故か二つのエアバックによって守られた。こ、これは。


「ききき、君ってヤツは!二度も!許さんぞ!」


直ぐに離れたけど。突き出した両手がまた・・・・・・。


「ご、ごめんなさい!」


「なんども、なんども、なんどぉおおもぉおおお!」


「ユッキー大胆すぎ!」


「雪人さんはロストチルドレン専門のスケベですから」


「違うんだよーーー!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ