core18:ドイツ娘たちⅠ
「-シュミレーターをはじめます。目的:ハイドラの練習、武器なし、制限時間1時間30分-」
FLDには、ハイドラと中央下に表示されていた。
段々と視界が切り替わる、以前にも体験した殺風景なトレーニングルームだった。前回と違うのは1メートル四方のグレーのボックスが一つだけ。それが高さ10メートルほど上空で浮いていて、他には何も無い空間。
「-雪人さんの『スタート』の合図でボックスは最大、時速1300キロで前方に移動します。ハイドラとアフターバーナーの二段階加速で追いかけてください。最高時速は1800キロまで加速が可能です-」
「え・・・・・・」
それって、目の前に建物があってぶつかったら即死じゃないのか?訓練メニューは時速100キロ~1300キロと段階を踏んで行く様だが無理だろ。
前回ストライクユニットで音速を一瞬超えた事あるけど、あれは飛ぶことに特化した拡張ユニットで、アギルギア単体でそんな速度だと紅音が大変だろうな・・・・・・。まずは走る練習とアフターバーナー無しでの加速練習をやってみる。この機体は行き成り実戦投入でちゃんと旋回や最小限でのジャンプのやり方を試してなかったから。
とにかく体が軽いしブーストゲージが長い。シュミレーターだからなのかは分からないけど反応速度が若干高い気がした。僕はハイドラの練習に没頭した。最高速度に達すると視界が赤くなり全てが点と線になってしまいボックスどころではなった。結局、時速1200キロを超えると一度もボックスに触れることが出来ず、減速は出来ても急停止させる事が不可能だった。
「-シュミレーター終了まで残り1分です。ドレスデンに到着しました-」
あと1分か・・・・・・。終わるまでただ立っていた。
「大体の感覚は掴んだか?まあ最高時速はアギルギアが耐えられないからな。だが本当に雪人すごいな。瞬間的に加速させる技術は習得したようだな」
「使えそうなのは、アフターバーナーで二段階加速してからハイドラで高速移動を制御するんだと思います。機体への負担も軽そうですし」
「それでいい。なんせハイドラを使いこなせるのはブレアだけだとマーガレットが言っていたぞ」
「マーガレットと話したんですか?」
「ああ、お前が朝から散歩しているから、少しだけ話した。ほらもう着いたぞ」
シュミレーターが終了し外にでる。1時間半の練習は身についたと思う。いつもの半そでパーカーに着替えて外に出た。広場は結構広く中心には4つの小さな噴水付きの池。古い建物に囲まれており沢山の背の高いガラスの窓、高さは3階建てぐらいだろうか、上には数え切れない程にある人物の像に装飾だった。観光したいな・・・・・・。
だけど誰も居ない。アイヴィーに連れられて正面の大きな建物に入る。マイクさんは装甲車を別の場所に止めるとの事で中には来ないそうだ。
「雪人さん、こちらです」
アイヴィーはそう言って僕に手を差し伸べた。手を繋ぎ中に大きなドアを開けて部屋に入る。研究所とはとてもいえない場所でアンティークというかよく手入れされた家具が揃っている。奥へまた奥へと進むと大きな広間。そこには黒い丸型のコクピットが5台、いや5列あるから25台か。
すると一つのコクピットから白い足が一本出ている。綺麗ですらっとしていた・・・・・・。
「おにーさん、こっちよ」
綺麗な手がその足をなぞる。どうやって謝ろうかそう考えていると・・・・・・。
「ちょっと!返事しなさいよ!この美女が誘ってんだから!」
コクピットから出てきたのは、ミニスカートのスーツ姿のリナさんだった。どれだけ怒っているか分からないけど、でも嬉しかった。
「ジャガーノートはすみませんでした。でも助けたかったんです」
「ありがとうね、ローマン助けてくれて、しょうがないから許してあげるわ!じゃあシュミレーターやりましょうね!楽しみだわ!」
なんか、わざとらしいぞ。
「がんばります!」
「そのいきよ!黒い翼を倒したのは、あの二人とユッキー達だけなんだから、それにローマンだけで倒すなんて凄いわよ。スパイラルシフトを完全静止の為に使うとか凄いテクニックだったわ」
リナさんの視線の先には2人の影。あれは・・・・・・。
「少年、これでは初めてだな」
「うぉお!ユッキー!会いたかったよ!」
そうファウストの『これでは』は確かに初めてだ。アギルギアではなくアンドロイドの姿で。二人ともロストチルドレンの制服だった。ファウストは背が高く銀色の髪にツインテール、顔は凛々しくアギルギアの時のイメージそのままだった。だけどどこか恥ずかしそうだ。
「ふっふーん」
と、ご機嫌なのはシュツカート、僕と同じぐらいの身長で同じ銀色のツインテール。お揃いの青いリボンだ。ファウストの顔を覗き込んでいた。
「二人とも可愛いね!イメージにぴったりだ!」
何故かビクッと反応してファウストの目が点になった。
「あ!わ、わわわ私は規則どおりの格好になっただけだ!べ、別にアギルギアのままでも構わないからな!」
「うわぁ・・・・・・。ファウスト顔真っ赤だよ。ユッキー!ファウスト攻略は大変だよ。ファウスト応援するからね!このシュツカートちゃんに任せなさい!」
「何を言っている!こらぁあ!」
また綺麗にヘッドロックが決まった。フランスの基地で見た光景と一緒だった。ふと横を見るとリナさんとアイヴィーが凄く微妙な顔をしていた。もう僕にどうしろと。
「まー、ユッキーは紅音ちゃんとローマンちゃんに他数名をはべらせているから、高く付くわよ」
「何を言っているんですか」
「とりあえず、ユッキーどっちがいいの?」
「へ?どっちとか何を選ぶんですか!」
「何を焦っているの?どっちと組んで練習するんですかって事よ、いったい何を想像しているのですか~雪人さん?」
く・・・・・・。またはめられた。
「ほらほら、ユッキー私と組もうよ!たぶんあれじゃあ練習にならないと思うよ」
ファウストは腕を組んで横を向いたままだった。しかしどうやって練習するんだ。
アイヴィーは何故かまた変な顔で僕を見ながら説明してくれた。
「アギルギア同士の模擬戦になります。条件としてランクA+でなければなりません。
パイロットとして黒い翼と二度も戦った雪人さんが選ばれました。ロストチルドレンのお二人は専用のコクピットに入ります。雪人さんはいつもどおり専用のスーツを着て頂きます」
黒いパイロットスーツをリナさんから受け取る。何故かウィンクされた。
「じゃあファウストのパイロットは?」
「パイロット無しのゼロベースを作るので居ません、今日はここに泊まりますので訓練メニューが盛りだくさんですよ」
ハードというのはそういう事か・・・・・・。黒いパイロットスーツに着替える為に規則正しく並んでいるコクピットの間に隠れる。しかし何故かアイヴィーが顔半分だけ出して不気味な笑顔で覗いていた、それにシュツカートも・・・・・・。
「課金します」
「こ、これ凄いよ!うあぁあああ・・・・・・アンリごめん!」
「へ?」
なんだかやるせない気持ちでいっぱいだった。着替えが終わり、もう見られたくないのでコクピットに逃げ込んだ。
「あ、雪人さん。そこ違います」




