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core16:幾つもの闇を越えてⅢ


 目が合った気がした。何度も吸い込まれそうになった赤い瞳・・・・・・。交互に光り始めて右手の震えが止まったようだ。


 しかし追い討ちを掛けるかのように、ローマン目掛けて1体の人型コアが歩いてきた。まずい。僕の身体は何で動かないんだ。


 

 これから起こった事は夢だったかもしれない。こんな場所に人が居る分けないからだ。『金色の髪の少女が人型コアのメインコアを銃のような物で破壊する。そして直ぐに立ち去っていった』


 人型コアとはいえ、どんな武器を持っていても軍人や訓練された人じゃないと破壊できないというのに・・・・・・。もう考える事すら出来ない。


まだ死にたくない。だってもう僕は・・・・・・。



 気がつくと白い空間。いやここは病室?気配を感じ隣を見るとロングヘアーに赤い大きなリボンを付けた可愛い少女が腕を組んで立っていた。だけど非常に目つきが悪い。


「バカ(ヒト)の癖になにえらそーに!救出ゴッコしてんだってーの!このバカ!バカ!」


 大きな赤い瞳が現れると一斉に沢山の涙が溢れた。そして思いっきり耳を引っ張られ千切れるじゃないかと思うぐらいに。そうだ僕は生きているんだ・・・・・・。とても痛いけどうれしい痛みだった。


 後でアイヴィーに説明を聞くと、ローマンが再起動してナノマシンウィルスを焼ききり、損壊した両手で僕を担ぎ上げエンジン全開で壁を蹴って登ったの事。

それに、ローマンの機体は暫くの間メンテナンスで戦闘に参加出来ないそうだ。


「雪人さん、リナさんからメッセージです。『ユッキー!ジャガーノート壊した上に捨ててきたんだって!?やっるぅ!?あれ超高いんだからね!!沢山働くのよ!いい!?』です」


 アイヴィーの口からリナさんの声で再生され。怒りが病室に響き渡った。そうだレーザー直撃したんだ。頭痛が走る。そうだ何か危険な物に遭遇したような・・・・・・。思い出せない。


「ここはポツダムの病院です。あれから5時間程寝てました。汚染度は低いのでほぼ完治しておりますが少し安静にしてください」


 紅音の後ろから女性の咳払いが聞こえる。誰か居るのだろうか。紅音をよく見ると見慣れない服。これはドレス?長けは足元まで長くひらひらしていて、白くてまぶしかった。


また、後ろから咳払いが聞こえる。紅音と目が合う。


「そっかナイトの叙任式に行ってたんだよね・・・・・・。ここまで着てくれたんだ」


更に大きな咳払いが聞こえる・・・・・・。


「お姉様、バカ(ヒト)さん。バカですね」


 すると紅音の後ろから、紅音より髪の短く同じ服を着ていて、双子のようにそっくりで可愛い女性が現れた。


「私はマーガレット。ランスポーツでローマンさんと一緒に走りましたね、直接お会いするのは初めてですね」


「あ、はじめまして」


「お姉様。本当にバカ(ヒト)さんですね」


 いちいち紅音に囁いている様だが、思いっきり聞こえるんですけど。さっきから僕の事をバカバカ言ってくれる。紅音の事をお姉様と呼んでいる。そっか姉妹なのか。するとアイヴィーが割り込んできた。


「雪人さんは大気汚染レベル9に晒されて、その影響で今だけ知能が低いのです。後で戻りますから。おそらく・・・・・・」


 アイヴィーまったくフォローになってないよ・・・・・・。するとマーガレットがアイヴィーを連れて行き部屋から出て行った。僕と紅音は二人きりになる。紅音は背を向けて僕のベットにそっと腰を下ろした。こん


なに綺麗なのか紅音の背中は・・・・・・。


「退院したら、シュミレーターでハイドラの練習してろってーの。あれ早く使いこなさないと駄目なんだから」


可愛い声が上ずる。


弱気なのだろうか。


 自然と紅音の手を握る。体温を感じとても柔らかく、そう意識すると思わず強く握ってしまった。紅音はびくっとなり。こちらを向く。


「ねえ」


「うん」


「これ・・・・・・。可愛いかな」


 そう言って金色に輝く髪をゆっくりと撫でる。赤い瞳はゆらゆらと揺らぎ目は合わせず、唇は小さく震え、顔はほんのり赤く染まって行く。その仕草全てが可愛く目を離すことは出来なかった。僕は手を繋


いだままで、片方の手で髪を触った。心のように繊細な髪を。


「とても可愛いよ、紅音にぴったりだ」


「本当?」


「本当だよ」


 どんどん近づく。自然だった。当たり前の衝動。紅音の頬を触り、もう何も見えなくなってきた・・・・・・。


が・・・・・・。


『にゃーん興奮状態だにゃー!にゃーん興奮状態だにゃー!落ち着いてくださいにゃー!落ち着いてく・』


 あぁ終わった・・・・・・。僕の端末が音速を超えて窓ガラスを突き破って空を飛んでいった。紅音様は超ご立腹だった。


ガタン!ドアが壊れるんじゃないかってぐらいに開く!


「お姉様に手を出すにはまだ早いです!この私を倒してからです!」


「雪人さん!まだ除染がすんでないようです!脳が汚染されています!」


 もうめちゃくちゃだった。僕は病人のはずなのに病院をランニングする。アンドロイドの看護士に直ぐに捕まりベルトで拘束されて別の病室にぶち込まれた・・・・・・。


 身体はボロボロになったけど、このたった数時間で。強くなった気がする。勢いや強引に切り開いていった道ではなく自分で選んだ戦い。誰よりももっと強く。誰よりももっと前に。


 ここベルリンで、もう何かが始まったと感じた。まだ幼いままの光を背にして駆け抜けていくしかない。


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