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core15:幾つもの闇を越えてⅡ

 電子汚染も凄くレーダーは作動しないし、最低限の生命維持装置だけが動く。それに通信暗号ブースターはちょうど使い切ったし、残ってても外に置いても動かないだろう。


「-電子汚染が非常に高い為、地上に完全に出ないでください。ナノマシンウィルスのサンプルを採取中です。現在20%-」


 アイヴィーの声だけど遅延しているのかちょっと聞き取りづらい。暗号通信ブースターの限界と電子汚染の影響だろう。辺りを見渡す。メインカメラはアナログとデジタルが切り替えられるから試したけどデジタル系のセンサー、レーダー類は全滅だった。


 破壊された小さなビルが数棟あり、他は平坦で殆ど道路だった。このままベルリン工科大学前の大きな通りを200メートル程突っ切り、ラントヴェーア運河手前で右に曲がる。そのまま隔離壁沿いに行けば、ローマンの落下地点にたどり着くはずだ。


 ここから先は電子機器は役に立たない。頭に叩き込んだ地図を必死に思い出し何度も記憶する。銃は弾薬150発。電子スイッチではなくスプリングとシアで出来ていて、トリガーを油圧で引く古い兵器だから動作は問題ないはず。メインカメラ中央の十字マークに集中しいつでも撃てる様に構えた。


「-周辺のナノマシンウィルスの特定しました。アギルギア用のプログラムを転送します-」


 もう少しだ。酸素量も問題ない往復出来る。落ち着いて酸素を消費しないようにしないと・・・・・・。もう病院送りは嫌だ。


「-プログラム転送完了、作戦続行して下さい-」


「ここから先は通信できない。必ず帰ってこいよ!」


「任せてください!」


 大きな機体だが小さな一歩で地上へと足を踏み出す。小さくした機体を元に戻した。正面の操縦席には誰も居ないけど恐らく操縦桿や、フットペダルが僕の操作にリンクして勝手に動いているだろう。そう思うとちょっと寂しいけど前に進んだ。


 視界を正面にして自動ではなく自分の操縦で慎重に進む。なぜ背後がいいかと言うと、正面は被弾率が圧倒的に高い。防護服が傷つけば僕は死ぬ。それに射撃は背面の方が操作の精度が高いからやられる前にやってやる。そんなシンプルな理由だからだ。


 ベルリン工科大学は右手にあり横に長く大きな建物だった。メイン道路は沢山の車が大破しており障害物になっている。人型コアが居たら発見が遅くなりそうだが、いざとなったら強引に進めそうなので多少遠回りだがメイン道路を選んだ。


 大気汚染は光を永遠に遮り木々や生き物は育たない。そして誰も居ない為、ジャガーノートのエンジン音と大破した車にぶつかる音が響き目立つ。金属を引きずる音は人間しか出さない。


100メートルほど進んだ所で、うっすらと何かが見える・・・・・・。


 赤い点、敵だ!しかもかなり居るぞ。ここはレンドルフ隊が避けるほどのルートだしやっぱり危険だった。後50メートル程で運河の前なのに運が悪かった。戦いは避けたいので大学の建物の隙間を通るしかない。大学内で戦闘するには狭く灰色の木々は更に危険。人型コアのレーザーは木なんて何本も軽々と貫通してくるので絶対に避けたかったが。この際仕方ない。


 旧フランスで戦った時も基地からやつらは追ってきたし、けして早いスピードでは無いけど囲まれたら、レーダー無しでの戦闘は正直一体でもキツイ。迷っている暇は無い、ベルリン工科大学の建物の隙間を通る。エンジン音が大きく響き渡り戦闘態勢に入った。全身の毛が逆立つ。一つ一つの動きに無駄の無い用に前進した。


 感覚とかじゃない、危険察知能力があるわけじゃない。だけど本能だった。ジャガーノートの大きな機体を反転させ姿勢を低くすると、小レーザーが頭上をかすめた。


 直ぐにレーザーの位置を特定した。木を数本貫通してきて、その先には2体。一発でしとめる自信は無く2発ずつ叩き込む。


 メインコアが砕け散っていくのが見えた。すぐに体制を立て直しローマンの方向へ向かうおうと頭の中の地図を確認する。こんな所で止まっては居られない。一歩踏み出すとかろうじて舗装が残った道のお陰でスピードが出せた。大きな建物を曲がると目の前には人型コア4体が居て、逃げれば逃げるほど増えていく気がした。


 待っていたかのように、こちらを認識すると接近してきた。突っ切るしかない!メインエンジンを全開にして、左手で人型コアを一体地面に叩き潰す。そしてそのまま通過し、右手の操縦桿の視界切り替えを長押した。視界を背後に回す。銃も背後を向き2発ずつ打ち込む。メインコアに当たらなくても直撃させるんだ。


 2体は大きな音を出しながら吹っ飛んで行くのが見え1体は完全に破壊した。直ぐに、数十メートル離れ視界の悪さから見えなくなっていく。防護服からアラートがなる。大気汚染レベル9。生身では1分持たないだろう。


 現在位置は大きな隔離壁沿いの道路だった。高さ30メートルはある筈なのに気づかなかった。どんどん視界が悪くなっていく。完全に周りの状況が分からない。強い風も感じるようになってきた。こんな場所でローマンが待っている、絶対に孤独にさせない。


 しかし、そんなにうまくいくわけは無く。赤いレーザーが自分身体の直ぐ隣を貫通した。機体内に反射する赤いフラッシュ。後ろから撃たれていたのか方向を失い何かに激突する。絶望するのは後でいいんだ。


 機体をレーザーの方に向けトリガーに集中する。ジャガーノートから赤いランプとアラートが響き防護服も少し破損していた。ゆらゆらと動く赤い光りが2つ。二連射して確実に撃破する。機体に穴が開いたせいで射撃の爆音が鼓膜を破壊し、頭の中を電子音のような音が響き渡り平衡感覚を失ってしまった。


駄目だこれ以上は戦えない・・・・・・。


 前は見えず手を前に突き出してジャガーノートから脱出する。どうやら壁に激突していたようで、機体は倒れこんでいた。たった50センチほどの高さからジャンプしたけどうまく着地できず転んでしまった。


 しまった。これは平行感覚じゃなくて、大気汚染による身体の異常だ。直ぐに防護服の収縮を解き内部の補修インナーを展開させた。すでに生命維持装置は停止しており。ただ酸素の残量が表示されているだけだった。息がとても苦しく。壁に手を付き歩く。


 視力が落ちてきた・・・・・・。勝手に目が閉じてしまう。目を開けようとしても開ける力が無い。ああ・・・・・・。歩いていると思ったけど錯角だった。まったく動いてなかった。


 こんな所で終わってしまうのかと。空を見ようとしても大気汚染のせいもあり、皆と飛んだ空は見えない。そのまま倒れこむ。体の感覚が無くなっていくけど、少し開いた視界には小さな光り。そうだローマンを助けなくっちゃ。手探りで防護服のヘルメットについているカメラを起動させる。


 望遠モードにすると木にもたれ掛かり座り込んでいるローマンが居た。しかし美しいはずの赤い瞳が片方しか光っていない。それに破壊された右手がガタガタと震えているようだった。早くしないと・・・・・・。ナノマシンウィルスの抗体プログラムをイメージリレーネット方式で転送する。どうか受け取って。


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