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core06:刻を止める鳥Ⅰ

 ぼく達はポツダムに着いた。辺りは川と湖に囲まれており灰色に霞んでいて東の方、ベルリン側を端末の望遠カメラで見ると隔離壁がうっすらと見える。人間とアンドロイドによる第三次世界大戦の爪跡だ。


 あそこには兵器の研究施設があったようで集中攻撃され、戦後はあまりにも大気汚染、電子汚染が酷く誰も近寄れなくなってしまった。


 誰も入れないようにする為、ベルリン一帯を約半径20kmに渡り円状に隔離壁が出来た。12地区に分かれていて、汚染度と立ち入り禁止区域のレベルが設定されている。


 僕たちには関係無い事だが、風景に端末をかざすだけで教えてくれた。日本の授業では教わらないし、こういった公開情報は端末が勝手にダウンロードする。ここでしか見れない一時的な情報だけど。


 端末は便利だ。こっちの学校を受講できドイツ語は日本語に変換されている。僕のプロフィールは中学校卒業で高校は退学になっているようだ・・・・・・。


ドイツは長居しない様なので、入学ボタンは押さないで置こう。押すつもりは無いけど。


ドン・・・・・・。


 紅音様がアタシを無視するんじゃないと、肘うち後ものすごい目でにらみつけてきた。腕を組み川沿いを一緒に歩く。輸送機が来ると行っていたが到着時間まで30分はあった。マイクさんとアイヴィーもそのぐらいには到着するとの事だった。


突然、衝撃波が襲ってきた。パーカーをビリビリと振動させた後に音とは言えない強制的な爆音が身体を襲う。


 ベルリンの方からの大きな黒煙があがる。これはかなり大きいぞ!知っていたかのように直ぐに爆発の方へ輸送機が飛んでいく。黒煙に端末を向けて距離を測ると約18km、シュテーグリッツ周辺と表示されていた。タクシーで19分と表示されていた。さほど遠くは無いな。


「雪人、行くわよ」


「どうして?紅音の機体は?」


「私達がわざわざドイツに呼ばれた意味があそこにあるんでしょ、だったら行ってみればいいじゃない、みんな次の戦地ブラジルに向かっているんだから。」


 紅音は僕の腕を掴みタクシーを呼び寄せた。爆発周辺は隔離壁近くなので拒否されたが、近くまでならと車を急発進させてくれた。だんだんと煙と輸送機の轟音がタクシーを揺らし僕たちを恐怖が襲うが直ぐに降車し紅音について行った。


 誰も住んでいないと人目で分かる住宅街。輸送機が着陸しエンジンの風圧で建物がガタガタと揺れる。ここから少し遠いが輸送機の中から機械で武装した人が10人ほど降りてきた。


「あれはライオットアーマーね、第一世代よ。人間に外骨格の強化フレームをくっ付けて戦う原始的な兵器よ、その程度の敵の為に私達を呼ぶなんて、一体何が起こるんだってーの」


 暫く紅音は様子を伺っていた。手を引っ張られてオンボロの2階建ての家に入る。窓越しに外を警戒した。


 窓いっぱいの隔離壁の圧迫感が強烈だった。高さは30メートルはあるだろうか、向こう側は死の世界と直感した。恐らく中の時は止まっているだろう。黒と灰色と所々に木々が生えていており作られてから数百年は経っていると分かる。


 隔離壁沿いに薄っすらと何か不気味な影がいる。あれは・・・・・・。


「人型コアじゃない。ドイツは少し居るとは聞いていたけど、これの為なの?まって、雪人!ここは危険!何ぼけっとしてんの!逃げるんだっつーの!」


 突然紅音僕の手を握り走り出す。戦慄が走った、大量の赤いレーザーが僕たちの頭上をかすめて着陸しようとした輸送機が撃墜された・・・・・・。


 激しい爆発音と熱風、全身の毛穴に響く衝撃波。レーザーの恐怖は初めて生身で受ける感覚だった。なんて熱いんだ・・・・・・。


 それにさっきのは小レーザー、この数、射線、タイミング、これは一体じゃない。20体以上は居る。


「紅音!ポツダムに戻ろう!20体以上は居る。それに一つ違うレーザーが見えた!」


「分かってんじゃないの!一体、おかしいやつがいる!ライオットアーマーじゃ勝てない、あの輸送機に近づくわよ!覚悟しろってーの!」


 もう紅音についていくしかなかった。紅音の言うとおりたぶんライオットアーマーと呼ばれる機械化の性能では勝ち目は無いと確信した。燃え上がる輸送機は自動で消火され、中には高さが3メートルはあるだろうか大きなロボットいる。これは?


「やっぱりね、これは第二世代のジャガーノートよアタシこれ得意なんだから!二人乗りよ、行くわよ雪人!」


「え!?えええええ!?」


 二足歩行タイプのグレーのロボット。そうだゲームに似ている機体だ。右手にはライフルのような物、左手は四角く指等は無いが大きな腕で武装は分からない。胴体正面のドアが開き紅音は入って行った。


「なにとろとろしてんのよ!背面のハッチから乗れっつーの!」


 ロボットの後ろに回りこむと上に隙間が開いており滑り込むように入るようだ。足を引っ掛けるワイヤーが降りてきたのでそれにつかまり、何とかロボットの一番上に到達した。後ろからでも紅音がイライラしているのが分かるので直ぐに背後のハッチの隙間から入る。


 目の前は機械だらけでかなりアナログだった。中は立った状態で背後を見るようになる。シートベルトを締め両手に操縦桿のグリップと両足にはフットペダルだった。小さなHMDヘッドマウントディスプレイを装着した。


「聞こえている?返事する!?」


「うん!」


「操縦はアナログだけどワタシの時と一緒よ。私が基本操作するからアンタは射撃、それ以外は視界を背後に切り替えて背後を警戒。HMDの視界を正面と背後を切り替える!ごっちゃになるんじゃないのよ!」


「りょ、了解!」


 僕の端末からアラートがなる。極度の緊張状態だ。さらにマイクさんからのメッセージが鳴った。


『-お前らなにやってんだ!?ジャガーノート!?逃げろ!-』


「うるさいってーの!アタシたちを何だと思ってんだっつーの!」


 急発進する。背後を向いている形なのに視界は紅音と一緒の正面だった。HMDの手のアイコンは分かりやすく右手の親指のスイッチを押すと視界が背後に切り替わった。

そのまま押し続けると右手の武器も背後に回る。


「紅音!視界の切り替えが大体分かった!いけるよ」


 正面に味方が10人。まだ誰もやられること無く人型コアを数体倒している。だけど、本命は違うレーザーを放つ特殊コアだ。時速40kmほどだろうかタクシーよりは遅く感じる。二足歩行だけど足がキャタピラのようになっていたのですべる感覚だ。


 紅音が示したロックオンマークが建物の上の人型コアにあう。直ぐに僕がトリガーを一度引く。一発だけ発射された弾丸が人型コアを直撃し一発で倒した。そして直ぐに通り過ぎていった。


「やっぱりね、アンタ才能あるわよ。単発(セミオート)にして正解だったわ」


次々に人型コアとすれ違いにロックオンマークが動く。機体を滑らせながら回転させ、四方向に囲まれた状態でも一発ずつ打ち込んだ。ほぼ同時に撃破だ。それに残弾数145発もある。これならいくらでも倒せるな。


「-こちら第2機甲師団レンドルフ隊、貴様何者だ!-」


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