core02:殻の外は同じ世界Ⅱ
「おい、雪人落ちつけ!」
端末から興奮状態のアラートがなった。防護服内で反響する。
どうして小さな命ばかりが選ばれて死んでいくんだ。
昼間の明るい日差しは命を生む太陽の光。それが死を照らし続ける。
所々反射する光が私たちはここに居ると教えてくれた。
僕は瓦礫の上でたたずむ。
「雪人さんが見つけてくれなければ彼女達は報われず、一生そのままでした。後でひまわりを手向けましょう。この為に持ってきたのですね」
そう、ひまわりの花言葉は、-私はあなただけを見つめる-
捨てられた世界こんな時代に生まれた同じ命。もう二度と犠牲を増やさない。
僕がもっともっと強くなって皆を守るんだと誓った。思い上がりだと言われるかもしれない。
それでも僕は全て受け入れて一つ一つ拾い上げて立ち向かってやる。
死の中を通り抜け回収ポイントに到達した。目の前には赤く光る小さな石。
僕の拳ほど。こんなに小さいのかヘルメットの表示が解析中と出ている。
「解析結果が出たぞ!うおおお!?ビンゴ!アギルギアエンジンに使えるコア結晶体だ!紅音のエンジンに使えるぞ!」
両手でそっと触れると赤く反応した。すると目の前に小さな光り。吸い込まれるように身体の感覚が無くなっていくそして声だけが聞こえる。
『たすけて、たすけて』
アラートが遠くで鳴る。なんだ!?これはまさか白い服の少女か?まずい身体に異常が起きているはずだ。早く意識を戻さないと。
それでも抗うことが出来ず意識が吸い込まれる。
ブツンと脳内で音が鳴った。何かが切断された音だ。神経と精神が切れたと分かった。
全ての世界がモノクロに見える。何故か感覚が遠くにあり防護服を着た僕自身が見える。周りを見渡すと無数の白い光りが螺旋を描いて空に上っていく。
向こうの僕の瞳から涙が零れていくのが見えた。ああ・・・・・・。皆待っていたんだ。黒い殻を破った小さな翼が天へと。
「もう大丈夫だよ」
何故か僕はそうつぶやいた。すると体中の感覚が戻っていくのがわかった。
「雪人!お前、生きているのか!?心臓停止していたぞ!アイヴィー引き返せ!大丈夫だ!」
振り返るとアイヴィーがこっちに向かってくるのが分かった。僕はコア結晶体を回収箱に入れアイヴィーを引き換えさせた。
そして灰色の殻へひまわりを手向けた。命を照らす光へ向くように。
僕は産まれた時からずっと端末と一緒に過ごしてきた。興奮すればアラートがなり落ち着けという。気持ちが落ち込めばアラートが鳴り元気を出せという。
いつも端末が心のアイコンで自分の事を教えてくれた。だけどもう違う自分自身で今の気持ちを知ることが出来たんだから。
装甲車の側面に着くと僕が出てきた所が再び開く、背中を向けて出てきた時と同じように入った。そしてゆっくりと装甲車の中に納まり目の前のドアが閉まっていく。
防護服が解除されやっと出ることが出来た。暑かったし息苦しくてあんまり快適じゃなかったけど心なしか少し寂しく感じた。
ここには二度と来ないだろう。
中ではアイヴィーが服を着替えていた。いや最中だ。汚染された服を専用の袋に包んでいる。助けに来てくれたので「ありがとう」とお礼をし僕はコクピットの横で端末を見ることにした。
そうだ確かメッセージがあるんだ。端末にはシーンレター1件ありタッチすると画面には水着姿のローマン、雷花、リナさんが映し出されていた・・・・・・。
雷花のアンドロイド姿を始めて見る。
ローマンより背は低いだろうかショートカットで本当に姉妹のように似ていた。
しかしシーンプレイをタッチ出来ない理由があった。
-再生するにはここをタッチ-
リナさんの胸を二つとも両指でタッチしなければならないからだ。アイヴィーは着替え中の様だからまあいいっか。恥ずかしいけど二本の指でタッチした。
『いやーーーんエッチ!』
最低の声から再生されたシーンメッセージは何故かイメージPVのように変なBGMと3人が海で遊ぶ姿。
それに砂浜は見たことが無いのでちょっと羨ましかった。
日本にもこんなに綺麗な場所があるんだと目のやり場に困りながら見入ってしまっていた。
『ユッキー!ちゃんとエンジョイしている!?私たちはしてまーす!それと紅音ちゃんの機体修復不可能だからお姉様ので戦えるように練習しておくのよ~』
また重要な事をついでのように説明してきた。お姉様のって事はブレアエンフィールドのか。きっとそれなら紅音も納得が行くだろう。たぶん第四世代の機体では性格からして拒否するだろうな。
リナさんは優しい。僕のせいで旧フランスに行き装甲車を大破させた挙句にローマンは要改修、紅音は修復不可能で本社から呼び出しをくらい相当な処分を食らうって話だったけど・・・・・・。
2分ほどのメッセージは終了し、ふと気がつくとアイヴィーが隣にいて何故か軽蔑の眼差しで僕を見ていた。とっさにシーンレターを消してしまった。
「う、これはその皆からのメッセージなんだ・・・・・・さっきのだよ」
思わず言い訳をしながらつばを飲み込んで固まってしまった。アイヴィーもこんな表情出来るのか。
「これは、<人とのコミュニケーションツール:軽蔑の眼差し>というアプリなんです。無料です」
アンドロイド側にはそんなアプリがあるのかと思わず安心してため息をついたが・・・・・・。
「うふふ、嘘ですよ」
「え!?」
そう言い放ってアイヴィーはいつもの場所に着き装甲車の助手についた。
僕は見えない外を見つめる。
道路では無い振動から少しでもこの場所を忘れないように胸に刻んだ。




