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core01:殻の外は同じ世界Ⅰ

不自然に1メートル四方の黒いキューブが地面にある。光を反射せず周りの小さな光を吸い込む不思議な物体。


博士のような格好の男は端末を持ちそのキューブに話しかける

それに答えたのだろうかキューブが端末の光を吸い込み数字が映し出される。


『49881』


男は確認すると座り込む。ただキューブを見つめていた。




この一週間、僕にとって守るべき空があった。

駆け巡る刻の境界線で永遠と孤独に周り続ける漆黒の翼を追う。



旧フランスの侵略を阻止してから3日が経った。僕は酷い大気汚染、電子汚染まみれになり直ぐにベルサイユの病院で治療を受けた。その間にローマン、雷花、リナさんは日本へ紅音はイギリス海峡のニューアメリカ艦隊へ向かった。


今日は退院だった。病院の外ではアイヴィーが待っていてくれて服はいつものメイド服ではなく薔薇のようなデザインのひらひらした淡いピンクのノースリーブのワンピース姿だった。


「雪人さん、退院おめでとうございます。端末に皆さんからのメッセージが入っていますので。後で見てください。さあ行きましょう」


アイヴィーの表情はいつもよりも明るく可愛かった。端末を受け取ると胸元にはロケットがある。するとアイヴィーがロケットを手に取り広げて見せた。それは僕と一緒にとった写真。そうだこの写真はリナさんのマンションの屋上でで取った写真だ。


本当に生きていて良かった。「さあ」とアイヴィーに連れられて、いつもの装甲車が待っていた。かなり傷だらけだけど動くようだ。


運転席からマイクさんが降りてくる。


「除染は済んだようだな、俺は2日で退院出来たけど、雪人は運動不足じゃないのか?まあこれから重要な仕事があるから、超大型が出現したポイントまで行くぞ。この装甲車も修理がちょうど終わったしな」


思わず手が震えてしまった。またあそこに戻るのか・・・・・・。もうあそこには行きたくない。沢山の命の光が消えていった場所だから。


「マイクさん、寄り道いいですか?」


「おうよ、どこだ?通り道ならいいが、店は殆ど無いぞ」


この病院の近くに、ベルサイユ宮殿跡地がある、装甲車を10分ほど走らせると、緑と黄色が永遠に広がる場所が見えてきた。


放置された噴水庭園は大量のひまわりが植えられていた。ここも大気汚染と電子汚染の影響が少しあるので、5分ならいいと言われて専用のマスクをつけて装甲車から降りる。


「わぁ、綺麗!なんて素晴らしいのでしょうか、電子の黄色ではなく真の黄色。本当に生きている色ですね」


アイヴィーも手伝ってくれて一緒に十数本のひまわりを刈り取る。両手いっぱいに持つと保護用のビニールに包んでくれた。そしてすぐにパリへと向かう。


「これからの目的は、紅音とブレアエンフィールドで倒した、特殊タイタン80mのコア結晶体の回収だ。イギリス政府と皇室からコア結晶体の所有権を譲渡された。しかし回収するのはそっちでやってくれとの事だ。ブツが当たりならいいんだが。」


「当たり?質とか金額ですか?」


「コア結晶体は大まかに二種類、アギルギアのエンジンか飛行系のエンジンかだ。空中空母のマーベリックはフライングガンシップのコア結晶体で作ったエンジンを10機使っている。俺らが欲しいのはアギルギアのエンジン用だ」


「空中空母はエンジンが10機も?その分ロストチルドレンが10人いるんですか!?」


「そういう事だ。マーベリックは10人のロストチルドレンが動かしている。あれは殆ど地上に降りないからな。交代制とは聞いているが・・・・・・いかんせん人間は一人も乗ってないからあまり情報は無い。知っているとすればファウストやシュツカートが常駐しているな」


なんて事なんだ。彼女達は殆ど子供なのに孤独に空を彷徨っているのか。この戦いは始まっても終わっても残酷のままじゃないか・・・・・・。


装甲車の中は外は見えない。僕はじっと床を見つめていた。


「到着したぞ、ここからは汚染が酷いからコクピットの反対側の柱のスイッチを押せ。アイヴィー手伝ってやれ」


「はい、雪人さんこちらです。」


アイヴィーが柱のようなところに手をやるとドアのように開いた。カプセルになっており一人入れるサイズだ。


一面が分厚い布で手を入れるのだろうか2つの穴がある。下には足を入れる為のスリットがあった。


「ほれ、二つの穴に手を入れてぴったりはまるように入るんだ。それが防護服になる。なんせアイヴィーはこれは使用出来ないからな。人間専用だ」


言われるがままに両手を入れながら脚もフィットさせる。するとギュッと締め付けられ。頭にはヘルメットが自動的にかぶさった。すると背中の扉が閉まった音が鳴った。


目の前の扉が開く。


「このまま外に出れるんだ。身体が締め付けられますけど思ったより重くないや」


「それは宇宙服を元に作られている。それなら大気汚染と電子汚染から人を守ってくれるが、電子バーストが酷いと通信回線が遮断される。アギルギアと違って超高性能の衛星通信じゃないし、高速移動で突っ切れないからな。とりあえずあと10m歩いてこっちを見るんだ。」


足を慣らすために少しずつ歩き10m程で言われたとおり振り返る。すると装甲車の側面に小さな黒い四角い窓のようなものがある。ヘルメットにターゲットマークが表示されその黒い四角に自動的に重なった。


「よし聞こえるか?」


「聞こえますよ」


「これはイメージリレーネット方式だ。俺の声もプログラムで変換された声なんだ。その黒く四角い表示板にプログラムが表示されていて、その防護服に予めインストールされたセキュリティーキーを使用して読み取れる。だからカメラで解析できる距離であれば、目に見えない通信障害も関係なくデータ通信できるんだ。防護服には右肩にと背中に同じ表示板があるんだ」


「凄いですね」


「人間対アンドロイドの戦争ではしょっちゅう使われていた技術だぜ、千年前はモールス信号って言っていたがな。防護服のカメラは100mぐらいが限界だから気をつけろよ」


目的地まではあと50mだこれ以上進むと汚染が酷くなる。装甲車を洗浄する費用もバカにならないので僕が行くことになったという訳だ。


一歩ずつ瓦礫の山を進む。転ばないように。全てが灰色だった。

戦闘から3日しか経っていないから殆どそのままだった。


足に瓦礫では何かがあがる。黒く小さくそして閉じた翼。


「あ・・・・・・。ぁああ。」


思わず拾い上げてしまった。どうしてこんなに無残に。これは建物の瓦礫じゃない。この大量の灰色は殆どが機体じゃないか。

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