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core30:螺旋の中央 <第一章 最終話>

>改稿内容 旧イラストを削除

>読みやすくしました。

「いつでもローマンに切り替えてください」


「-わかったわ、無茶しないでね-」


するとアイヴィーから通信が入った。もう大丈夫なのかな。


「-ローマン機へ接続開始します呼吸を整えてください。武器はショルダーキャノン、敵大型コアシールドを早急に破壊してください-」


 アイヴィーの声が頭に直接囁いているのがわかる。この感覚だ。今までの記憶が蘇る。屋上でロケットを渡した事、大切に持っていてくれた事。それはプログラムだからと説明出来ない程に優しい笑顔だ


った事。皆が居てくれたから僕は強くなれたんだ。そして今も改めて思う、もっと強くなりたいんだと。


「-雪人君、時間が無いから戦い方について、ユリアとジュリアと直接通信するわよ-」


「お願いします!」


まだ僕の視界は文字の表示だけで真っ暗だった、FLDがオレンジから青へと変わっていく。


「-遅い-」

「-お前ら!なにやってんだよ!アタシ達が居なかったら即死!即死!即死!どうしてくれんのよ!もう戦えないわよ!あんた達であれ倒してよね!-」


ユリア、ジュリアの機体情報を見ると攻撃可能武器なし。損傷大、作戦続行不可、帰還命令が出ている。何て事だ全力で守ってくれたんだ。


「ローマンと雷花を救ってくれてありがとう、本当に心から感謝しているよ、やっぱり君達も大切な仲間だ、だから必ず一緒に帰ろう」


「-無視-」

「-しらない、そういうことはアレを倒してから言って頂戴!ちょっとユリア!?アンタなに赤く熱もってんのよ、あーーーー、アタシもうしらない!-」


「-相性21%を超えました、視界が共有されます-」


 視界がローマンと重なる。目の前には黒い空、灰色の大地、そして全てを破壊する敵だった。だけどそんな絶望を前にしてもブレアエンフィールドがその恐怖を消してくれたから怯まずに足を前に出せる


。ローマンと再び繋がりエンジンの鼓動が聞こえてきた。何故か少し恥ずかしく、肌に伝わるはずのない風を再び冷たく感じさせた。だけど胸は熱い。


 あの紅音がローマンと僕に託してくれたんだ。ユリア、ジュリアが近づいてきた。機体はボロボロでも美しく、ランスのような武器やコアシールドの盾も無かった。肩のショルダーキャノンは銃口が焼きついてお


り破損していた。


 雷花も居る。武器は持ってないがエンジンは無事のようだった。心配させない為かいつものような愛らしい笑顔は無く、パイロット重なった覚悟を決めた表情だった。


 ユリア、ジュリアがさらに近づいてきて、その透き通るような唇からの息遣いまでも見えるほどに接近してきた。


「-作戦説明-」

「-なんでアタシがするのよ!てか近づきすぎよ!ああ、もう!いい!?あんた達、私がやつの下で暴れるから、敵に上がれ!雷花が敵の巨大コアシールドまで先導、ローマンで破壊!ほら簡単でしょ、


後は宇宙のあれが何とかしてくれる、失敗も後退もなし。以上!-」


今までどおりシンプルな作戦だった、雷花からメッセージが来る。


『お姉様、風は穏やかじゃないけど、感じ方を変えてみれば、皆で羽ばたき繋ぐ翼の為にこの風があると思えます。私は飛びたい。今日、この今を。明日という世界を守りたいから!』


するとディオーネとメセルからもメッセージが来た。


『私達も援護するわ、見せてよね君達の翼』


『お姉様、私も援護します。見ててください!ファウストさんとシュツカートさんが上でまってます。』


 みんなが居てくれる。もうFLDには作戦開始のカウントダウンが始まった。皆がエンジンを点火する。宇宙兵器リベレーターの発射準備が整った。現在位置は超大型の下から離れていて側面から飛べ


るように少しでも高い場所を確保した。


 ローマンは僕を見ていない。何故だろう同じ視界なのに同じ空を見ているのに。前だけと見つめている、そう感じる。エンジン音に紛れさせるようにそっと呟いた。


「-雪人さんが紅音と重なり、覚悟を決めたなら、私は全てを受け入れます-」


 僕は目標を見た。何も言わず。エンジン音が急激に激しくなる、身体中に電気が走ると共に、背中の熱さ、激しい振動、爆音、鼓動が心が感情が二人の中心の渦へと吸い込まれて行くのが分かっ


た。


「-2、1、0、作戦開始目標を撃破してください。現在の相性は79%です-」


 ユリア、ジュリアを先頭にして続く。敵の大量の小レーザー、中レーザーが絶え間なく降り注ぐ。ディオーネとメセルが左右に展開すると同時に雷花と僕達は敵上部を目指して一斉にジャンプした。敵の


下でユリア、ジュリアの背中が青く光り、巨大な敵を翼で覆いつくした!


「-全てを破壊せよ、輪廻の翼-」

「-ぶっとべえええええええええええええええ!燃え尽きるまで!蘇れ!転生の翼ぁあああああ!-」


 その青い翼は一瞬にして敵の下まで急降下して円を描くように旋回する。青い光の輪が出来た。敵の赤いレーザーをも青く染めそれは無敵という言葉がふさわしい光景だった。ジャミングワイヤーを焼


ききり、そしてその輪の中で守られるかの様にディオーネメセルが戦っていた。タイタンを蹴散らす。


 雷花と僕達は並んで目の前のレーザーを一気に切り抜ける。そして敵上部へと到着した。足元には大量のレーザーコア、コアシールドがある、ただそれは○と□だけの表示だけど一瞬でもその上で止まれ


ば僕達は木っ端微塵だ。


「-お姉様!付いてきてください!私の翼で道を切り開きます!うぉおおお!明日と共に咲け!紫電の翼!-」


 雷花の赤い炎の翼が青い機体に触れ、紫の雷の花となる。明日への世界へと道を示した。その背中に付いて行く。たとえエンジンが焼きつく限界を突破してでも。FLD上の雷花の機体情報が通信


不可になっている!ジャミングワイヤーに絡まれて雷花は将吾と通信できず攻撃も出来ない!それでも道を切り開く!


 ファウストとシュツカートから通信が入る。FLD上の2人の位置は中心から離れて、殆ど外側だった。もう2人以外のドイツ機はどこにも居ない。


「-この戦場で再び会える事、待っていたぞ、少年!-」


「-おそい、おそーい!もうこっちはとっくに弾切れだよ!メインコアと大型コアシールド発見したから、あとはよっろしくー!私達は撤退するね!-」


 僕達はチェインドライブのお陰で通信が出来た。二人から貰ったデータを元にFLD上に作戦ルートが表示された。雷花と完全に重なるように進む。雷花が大気をも切り開くので空気抵抗は無く、僕達


も超高速で走り回る事が出来た。雷花はなんて凄いんだ。


目標まで、10、9、8・・・・・・、敵の上なのにタイタンに飛行型もいる。雷花がジャンプして作戦ルート上のタイタンに激突して強引に押し倒す。


3、2、1、やってやる!


「-お姉様ああああ・・・・・・ああああ!行ってください!・・・・・・-」


 一瞬で雷花とすれ違い指先同士が触れて接触回線で声が聞こえた。その中でも目が合い、強い翼を受け継いだ。雷花の翼で僕達はジャミングワイヤーには触れなかったが、突然ローマンとの通信が


ブツブツと途切れ始め前が見えなくなる!


通信が切れたらローマンは攻撃は出来ない!


すると僕の体が激しく揺れるのが分かった。リナさんが叫ぶ。


「-紅音!無理しないで!その身体で大破した装甲車を押すのは無理よ!-」


「-行け!行けってーの!前だけを見ろっつーの!ぶったたけぇええ!-」


 僕達の装甲車が大破してしまったんだ!紅音が僕をローマンに近づけようと強引に押しているのが分かった。がたがたと激しく揺れる。少しずつ通信が蘇る。


そして視界が戻る!


「-相性急上昇90%、98%、99%、スパイラルシフトを使用出来ます。目標に到達しました-」


 スパイラルシフト、幾つも見てきた翼、僕達には希望の翼だった。そうみんなを守る為、使い方なんて理解してなかった。それでももう分かる、感情が昂ぶる。大型コアシールドが展開しようとしていた。


 FLD上、僕達の真上には宇宙兵器リベレーター、通称太陽レールガンから大型の劣化重質量弾を超高速で発射していた。その摩擦から生じる強烈な閃光はまさに太陽のように明るく真っ黒な超


大型を勝利への光で包み込んでいた。


それでも大型コアシールドで簡単に防がれてしまう。僕達が今度は道を切り開く番だ!


 背中のエンジンが強烈に反応する。全身の感覚が伝わってくる。ローマンの全てを受け入れる。僕の全てを受け入れてもらう。


「この世界に明日という翼がある限り!僕達は希望を照らし続ける事が出来るんだ!」


二人の感覚が光りとなり、2つの光が螺旋の中央へと近づき一つの意思となる。そして翼が開く。二人で叫ぶ。


「「輝け!希望の翼!」」


 FLDの表示が全て消えた。全てがスローモーションになった、それでもいくらでも高速で動ける。光が止まったように感じるがそれは錯覚ではない。大量のレーザーを打とうとするが恐怖の微塵もない。スロ


ーモーションでレーザーの赤く強烈な光が僕たちを包み込み、青いローマンの体が真紅の紅音のフォルムと重なるかのように赤くなるのがわかった。


ただ一瞬の出来事なのに。すると僕達の背中を紅音の手が押してくれた。


大型コアシールド目掛けてショルダーキャノンを打ち込む。


「僕達には!飛ぶ為の明日があるんだぁあああああああ!」


 世界は明日であり、明日は翼でもあるんだ。皆が教えてくれた。超高速で発射された、青い閃光が大型コアシールドを破壊していく。激しく砕け散りその残骸が辺りを覆いつくした。だがまだ終わっては


居ない。太陽のように強烈に光る物体が頭上から高速で近づいてくる。まだ僕達の翼は閉じてない。雷花の胴体に強引にアンカーを突き刺し引っ張り走り続ける。敵の攻撃はやんだのか、感じないの


かもまったく分からない。とにかく走る。


 少しでも距離を稼ぐんだ。一瞬、頭上の太陽が消え色さえも消えた。それと同時に全てを破壊する衝撃波が襲い掛かる。雷花を強く強く、抱きかかえる。


ッブツ。


 目の前が真っ暗だ。何も聞こえない。どこが地面なのか自分の状況がまるで分からなかった。体中に激痛が走る。強引に切断されたからだ。少しでも体を動かすのであれば、脳から痛みの信号が伝わ


ってくるのが分かった。目を開いても何も見えない。


「・・・・・・大丈夫か?」


マイクさんだ。手を前に差し伸べる。力強く握ってくれて抱きかかえられる。


「やったわね。本当にあなた達は・・・・・・」


 リナさんだった。だんだん視力が戻ってくる。装甲車はひっくり返っていたようだ。皆はどうしたんだ。ローマン、紅音、雷花、ユリア、ジュリア、ディオーネにメセルも。手足もろくに動かせないけど支えられて立


つことが出来た。だんだん身体を動かせるという感覚が戻ってくる。外にはブレアエンフィールドが横たわっていた。


アイヴィーが優しい笑顔でロケットを握ったまま僕に端末を渡してくれた。


「作戦完了です」


「ありがとうアイヴィー。本当にありがとう・・・・・・」


 そうだ、紅音は近くに居るはずだ。装甲車の外側から物音がした。足が思うように動かないが近づく。すると真紅の機体、紅音が座り込んでいた。両手は無く顔もボロボロだけど唇が緩んだ。自然と僕


の涙が零れ落ちる。紅音の身体を抱きかかえると、とても熱い。エンジンが焼ききれるまでに全身で装甲車を押してくれたんだろう。


「紅音、紅音!紅音!」


強く抱きしめた。


「どこさわってんだってーの!」


端末から声が聞こえる。


「ずっとずっと会いたかった!約束は必ず守るよ」


「当たり前だってーの!絶対引きずりまわして遊んでやるんだから!だから!はなせってーの!こんな身体じゃやなんだから!ちゃんとした可愛いのを用意してもらうんだから!ふん!」


 そういって紅音は黙りこんでしまった。それでも強く抱きしめる。外は暗く、黒煙が空高く舞っていた。端末から音がなる。ローマンの声が聞こえるが通信状態が非常に悪い。


「ブツ・・・・・・。帰還・・・・・・・ルート・・・・・・。検索中です・・・・・・・」


すると空に光が見えた。紅音をそっと装甲車の側面に座らせた。有難う紅音。


 よく見えないのでひっくり返った装甲車の上に乗っかる。そうするとだんだん近づいてくる希望の光が見えて来た。それは初めて会った時の様にその青く美しい機体、髪は金色、瞳は赤く吸い込まれてし


まう程に綺麗だった。着地地点を探してふらふらし始めた。目が合う。僕は両手を広げた。


ローマンを受け止める。


「・・・・・・帰還・・・・・・しました・・・・・・」


「おかりなさい」


大切な人に言いたかった、やっとこんなに簡単な言葉を伝える事ができた。


この2週間、先の見えない暗闇の中で見つけたとても温かくとても小さな光。


それは、毎日、いつでも、これからもずっと。

第一章 最終話となります。


一話だけでも、イラストだけでも、またはこの後書きだけでも見て頂きありがとうございます。それに感想やレビューまでして頂き感謝の気持ちでいっぱいです。


約17年前に観たアーミテージ・ザ・サードに強く影響を受けました。このタイトルの由来でもあります。

いつか、作品として作りたいと思いwebでの投稿に至りました。



第二章 ドイツ編

残りの作業の為に旧フランスに留まったあと、雪人とマイクはドイツへ向かう。

そして紅音との約束。

リナ、ローマンと雷花は日本へ。


ドイツ隔離壁、第7地区での計画を知る・・・。



投稿は2~3ヶ月後にまとめて致します。

ツイッターで報告したいと思います。

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