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core28:超大型戦Ⅱ

「リナさんはこれはどういう事ですか!、こんな戦い方じゃ勝つ事なんて出来ないです、一緒にだって戦えない。彼女達を利用しろっていうんですか!」


「-どんな戦い方でも勝つのよ。誰が倒すかじゃないわ。ここで逃げたら日本には帰れないわよ、全人類で戦うの。分かっているでしょ私達が戦うの。この地球で生きる為に-」


 力が入らない。ローマンの手から離れていく。感覚が逃げていく。音も匂いも温度も風も熱も。何の為に戦っているか分からなくなってしまった。


「-雪人さん、私は雪人さんが守ってくれなければ生きていけません。私が生きていきたい理由はこんな世界でもこんな私でも私を人として翼として認めてくれる人が居るからですよ-」


 また迷ってしまった。どうして僕はこんなにダメなんだ。絶対守ると決めた人が居るんだ。当たり前のように感覚が戻ってくる。エンジンの鼓動が徐々に聞こえてくる。ローマンの声だ。


「-一人でも多くの機体の援護をしましょう、次の新型弾道ミサイルの爆発まで。そうすれば彼女達でも容易に今のタイタンなら倒せます、前線を押し上げましょう-」


「-新型弾道ミサイルの作戦ポイント外に地上ドイツ機が待機しています。空中空母マーベリックも待機中です。急降下電撃作戦まであと2分です。現在の相性は87%-」


「-いよいよ大規模作戦が始まるわよ。目標がパリに到着したわ。地上のドイツっ子を援護するのもいいけど、超大型の攻撃が始まったらそんな事をやってられないわよ。ローマンを全力で守りながら戦うのよ!-」


「-なんとしてでも、皆で一緒に日本に帰りましょう!-」


 視線をどこに向けても黒煙と炎、彼女達の絶え間ない攻撃、逆に赤い雨が降り注ぐ。それは血の雨のようだ。僕達の鼓動を早めようとするかの様に爆発の衝撃波が足を動かさせようとする。呼吸を整える。エンジンからはどんなことにも屈しない規則正しい音が蘇ってきた。


「-大規模作戦が実行されます。第五世代機の援護に回ってください。作戦ポイントまでのルートを表示します。現在の相性は88%-」


「-第五世代機ですって?聞いてないわよ!アイヴィーどういうこと?私の許可なしに作戦を決めるなんて。説明しなさい!!-」


 まさかのリナさんの反応だった。僕達の作戦は全てリナさんが決定する。オペレーターであるアイヴィーでは絶対に作戦を決めることが出来ないはずだ。


「-おいおいマジかよ!?アイヴィー制御不可だぞ。ロシアからのアップデートはローマンだけじゃなくオペレーターまでもだ。これじゃあ俺らは何にも出来ねえ。雪人もローマンから切り離し出来ないぞ。くっそ!ロックされている。なんてことしやがんだ!-」


「-作戦ルートを走ります。どうやら私達が進む道は決まっているようです。この作戦には逆らえません-」


 ローマンから不安と焦りが伝わってきた。とにかく進むしかない。いつもとは違う左足から踏み込んで行った。FLDの目的には『top secret』と表示されている、こんな状況で!突き進むしかない。


 高速で移動する中、黒い小さな機体によってタイタンが数体倒される所を見た。しかしその数倍小さな体がばらばらに散っていく。ローマンはずっと前を見ていた。自分達には何にも出来なく武器が使用不可になっているのに気づいた。


暫く無言のままだった。瓦礫の町は足場が悪く何度も着地した時に足とられるも、この不透明な作成の為に進み続ける。


 するとFLD上に青い目標のマーカーが作戦ポイントに近づいてきた。地上には見慣れた機体、青く美しく小柄な翼。そう雷花だった。


「-お姉様も!?これは一体どういう事ですの?強制的に作戦に参加される事に・・・・・・。黒いドイツの機体が命を捨てた戦いをしているというのにもっと助けなくては-」


流石、雷花と将吾と言った所か、機体が傷だらけだった。おそらく沢山助けて来たんだろう、目の赤い輝きは本当に美しく力強くそのエンジン音から息遣いまでもが聞こえるようだった。すると上から目標と表示されたグレーの機体が降りてきた。


機体情報はシリアルコード:VKY050RTWN、ジュリア/ユリアと書かれている。


 アギルギア1体にロストチルドレンが2人?背丈はローマンよりも大きく髪は銀色で背中のエンジンは大きく、左手には丸く小さな銀色の盾のようなものと右手には大きな白い槍なのかランスというべきか初めて見る武装だった。


「-そう、たったの2機、ちゃんと働くのよ-」

「-あははは、雷花は使えそうだけど、そっちは初期量産型とか笑っちゃうわ、あはははは!-」


 自然と怒りはこみ上げてこなかった。最初に話したのは冷静なのか落ち着いた性格なのか余り人とは関わりたく無さそうだった。もう一人は完全に頭のネジがぶっ飛んだ感じだ。ローマンも僕も苦手なタイプだと思う。


「-私はローマン、量産型ではありますが援護します。しかしながら作戦ルートが超大型の下から攻撃するだけのようですが、ドイツ機は完全に無視して囮にするつもりですか?-」


 ローマンは冷静だった。FLDの作戦開始リミットはもう迫っている。新型弾道ミサイルもどんどん近づいて来ていてメーターの数値が一桁、また一桁縮まった。


「-アレは別物-」

「-別にいーじゃん、アレは私たちにとっては好都合だしぃ!-」


雷花と目が合った、ふざけんなって怒っている。


「-お姉様、彼女達は覇気がありませんでした。前に進む力は翼の力ではなくて・・・・・・。パイロットはまるでゲーム感覚のような-」


「-私も感じました。ですがもう作戦は始まります。一人でも多くの命を救う為に翼の輝きを見せてあげましょう-」


 僕達の意思とは裏腹に強制的な作戦が始まる。目標ユリア・ジュリアの援護及び超大型の撃破。リナさんとマイクさんの声が一切聞こえなくなった。


 僕の周りでは一体何が起こっているんだ。メッセージを送るも返信が無かった。アイヴィーどうしてだ・・・・・・。マップの殆どを超大型が埋め尽くしている。まったく状況が見えない。


 FLDの正面に作戦開始のカウントダウンが始まった。初めて見るデザインだ。10、9、8・・・・・・。右手、左手、両足、全ての神経がビリビリと電気信号が背中から頭へ伝わり、そして反射して身体の全てへとローマンへ注ぎ込んでいく。5、4・・・・・・。


「絶対に負けない、まだ倒れるわけにはいかないんだ!」


2、1、作戦開始!


 弾道ミサイルの強烈な閃光と衝撃波から始まり、爆音、轟音、地鳴りがどんどん近づいてくる。前が殆ど見えなくなり簡易的な映像と作戦ルートを目印に雷花を先頭についていく。ユリア・ジュリアを敵の真下まで引っ張っていく。


 超大型のレーザー攻撃が始まった。その矛先は恐らく上空からの大量の増援に向けてだろう。急降下電撃作戦が始まったんだ。それと同時に地上のドイツ部隊が最前線のラインを押し上げていく。強引過ぎる。


 一瞬にして消える味方の表示、しかし絶えることなく増えていく。命がただの表示、信号となり増えては消えるの繰り返しだった。


 大量のレーザーと爆風と砂埃で殆ど前は見えない。急な旋回やジャンプの連続だった、雷花の神業的な反射神経と判断力のおかけで後ろに居るだけで肩をレーザーがかすめるだけだった。またFLDのカウントが始まる、目的地まであと10、9、8、7、


「-お姉様、まったく別のドイツのチームが居ます!狙いは同じでしょうか。とにかくこのままユリアとジュリアが上空へ行くのを援護します。その後すぐに散ってください、私が少し踏ん張りますから-」


 雷花に任せてばっかりだった。しかし付いていくのが精一杯、目の前には大量のタイタン、ロックオンして攻撃して少しでも囮にならなければ。ドイツ量産型は回りには居ないが200メートル先に別チームのドイツ機が3体。


 機体は黒く髪は金。機体情報はシリアルコード:FRG003DPRT、FRG004DPRT、FRG005DPRT、第八雷撃隊という表示だけだった。タイタンを一体ずつ的確に倒していく。なんてスピードだ。どうやってメインコアを破壊しているか見えなかった。


 カウントダウンが終わると新型弾道ミサイルでの攻撃が終了した。次にイギリス本土からの巨大レールガン、レオニズから高密度重金属弾を光速で飛ばす。シールドを無効化するのが目的だ。大陸に着弾したら都市は軽く吹き飛ぶらしいが、そんな事を思い出しているとローマンの視線が上へと向く。


「-ユリアにジュリアが上空で苦戦しています、あんなに長く飛べるなんて・・・・・・。それでも近づけない、これ以上は私達も持ちません-」


 小さな盾から赤いシールドが出ている。あれはまるで敵のシールドと同じじゃないか!?なんて物を開発したんだ。絶え間なく僕達を襲うレーザーよりも激しい攻撃なのに、軽くかわしているように見えた。


 危険アラートが脳裏に焼きついて危険の感覚が麻痺してきている。このままだと、あと数十秒しか持たない、それにここから離脱するってのも無理かもしれない。上空の超大型からのレーザーは攻撃はタイタンを貫通してでも僕達を狙っている。どんどん正確な攻撃になっていく。意思でもあるのか恐怖が翼の上に圧し掛かる。雷花から通信が来た。


「-上空のドイツ機が敵に乗り込みました。急降下電撃作戦成功です!私はユリア、ジュリアが張り付くまで援護しますのでお姉さまは離脱してください!早く!-」


「-駄目、逃走には死を-」

「-アンタなんか、ここからでも簡単に殺せちゃうんだから!あははは、弾がもったないから一発ぐらいはレーザーの的になってっよ!死ぬ時は言ってね!見ててあげるよ-」


 ローマンの身体の反応が鈍った。するとすぐにレーザーが右肩をかすめてスマートパルスライフルを破壊されてしまった。右手の感覚が少しずつ薄れていく。右手の感覚の代わりに思いっきり叫ぶ。


「ふざけんなああああああああ!自分の命を守る為に戦っているじゃない、僕達はこの時代、この時間を共に過ごして来た仲間の為に戦っているんだ、君達も雷花も紅音も、リナさんやマイクさんアイヴィーだって同じ仲間なんだ!」


「-それは違う、同じ命ではない-」

「-あはは!こいつ完全にバカだ!私達は脳みそボールと呼ばれて、動くサッカーボール、除雪車、動くゴミ箱!なんだってやってやったよ!同じ?なにが?ただの肉の塊に言われたくないよ!肉どうしで仲間ごっこでもやってな!-」


 もう少し先の未来も想像出来なくなってきた。戦う理由、目的が心から離れていく・・・・・・。ロストチルドレンとは本当に救われた命なんだろうか。ローマンも紅音も長生きしたが一生戦い続けなければいけない。コアが全滅するまで。


 僕はもし二人を失ったらまたパイロットとして復讐と言って戦うのだろうか。いくらでも補充は居るだろう、いつまでもロストチルドレンは存在し続けるだろう。


 同じ命と感じていた。それは間違いなのだろうか。名前を知ったら名前を叫んで同じ仲間として一緒に飛べると思っていた。


「-私達は自由になる-」

「-コイツをぶっ殺して、自由の身体を手に入れる!お前らが死んでもな!-」


「必ず、僕達は生きる。何度でも君達の名前を叫んでやる!もう仲間だからだ!こいつを倒せなくても、君達が身体を手に入れるまで付き合う!そうじゃなくても買い物でもなんでも一緒に行こう!どこまでも付き合うさ!」


「-呆れた-」

「-じゃあ見せてよ!あんた達の翼を!早くあいつをぶち抜いてよ!!!!-」


 もう限界だった。ユリア、ジュリアも。3機のドイツ機も超大型に近づけなかった。雷花の動きが少しずつ遅くなっていく。しかし敵のレーザー攻撃が少しだけだが弱くなってきた。先ほどから連射されていた、中型レーザーがピタリと止まった。


「-お姉様!レオニズが発射します。シールドに当たった時の衝撃波が未知数です!タイタンを盾にしましょう!-」


 上空で戦い続けたユリア、ジュリアも地上に降りてきた。なんて滞空時間だったんだ。数分も飛び続けていた。


「-間に合わなかった、だけど・・・・・・-」

「-先を越される。やっぱりメインコアは中心じゃん!アレが着弾したら速攻で近づくから、あんた達ちゃんと援護してよ!・・・・・・。あはは!超大型レーザーコアがイギリスの方に向かって集まっている、大陸ごと吹き飛ぶのはイギリスじゃん!-」


 ローマンからさっきまでとは違う焦った感情が大量に押し寄せてきた。美しい声ではなく、震え怯えた声が漏れた。


「-そんな!あの射線上はニューアメリカ艦隊、紅音も居ます!こっち側からでは阻止できない-」


「-阻止なんて無理-」

「-あんなの無理に決まってんじゃん!?守るんじゃないの?な・か・ま-」


ローマンや雷花が何とか通信を飛ばしているのが分かった。すると誰かからか返事が来た。


「-分かっております、私の国を守るのは私の役目、少しだけでも攻撃を逸らさせますので皆さんは地下などに退避してください-」


 答えてくれたのはブレアエンフィールド、第三世代機のイギリス皇族機だった。だが敵超大型の形が少しずつ小さくなっている気がする、赤い目のようなレーザーコアやシールドコアがその薄暗く不気味な身体の中に埋もれていき、真っ黒な塊になっていく。


 超大型レーザーを発射する為なのか?何が起こるのかが、まったく想像も付かなかった。タイタンも体の動きが止まり。恐怖を起こす為の準備だろうか静まり返った。ドイツの地上部隊の攻撃がタイタンから超大型へと向けられる。しかしまったく効果がない。敵を倒す為にはコアに当たらなければ意味がないからだ。僕達も攻撃しようと思ったが無駄弾を撃つわけには行かない。


「-お姉様!きます!何かが!超大型レーザーじゃない!これは!?-」


 突然超大型の体が真っ赤に光る、影をも赤く染め、一瞬で通信が切れた。何が起こったんだ。僕の右手、左手、両足に痛みと共に感覚が蘇る。まずい、まずい、ローマンと完全に切断された。同時に地震が車を襲う。平衡感覚が狂っているが完全にここは装甲車の中だ!パニック状態だった。


「雪人君!大丈夫?レニオズのレールガンが超大型に着弾して、超大型のレーザーコアを破壊したけど、もうひとつの超大型レーザーがイギリスに命中して損害が未知数だわ!」


耳から情報として入ってくるが。目が全然見えない。両頬には暖かい手が触れる。


「おそらく、赤い光に包まれた機体はコアシステムの再起動が掛かっている、5分は動けないわ。早く着替えるのよ!紅音のパイロットスーツに!あいつらも動き始めている」


「一体何が起こったんですか?前が見えない、早く、早く、ローマンに繋いで欲しい!」


 息が苦しい。鼻と口から酸素を吸うのが難しい。すってもすっても空気が酸素が吸い込めない。足音がする。男性の足音、おそらくマイクさんか。


「突然やつの体が縮んだと思ったら、思いっきり膨張して赤い閃光を出した。周辺のアギルギアが全て停止したんだ。原因は分からないがおそらくアギルギアのコアシステムが再起動された。ニューアメリカ艦隊から紅音の乗ったブラックバード2が後3分で到着する。紅音のパイロットスーツに着替えろ!」


 しかし僕の高校生という殻はまったく動かない。魂が入ってないのか、誰か僕に入って動かしてくれ・・・・・・。すると耳に通信が入る独特の感覚が蘇った。これは。ああ、そうだ。


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