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core24:記憶を景色に残してⅢ

 アイヴィーが運転席から振り向いてくれた。ロケットを握って。アイヴィーの運転はハンドルを持たず運転できるので運転席から戦闘の準備の為、端末を操作していた。


「メッス基地に敵が侵入しました。飛行型2体、クモ型1体、人型も数体接近しています。基地の自爆装置は解除しております。到達まで後60秒です」


 僕はすぐにコクピットの中に入った。リナさんとマイクさんが装甲車から出る準備をしている。人型はローマンやメセルのアンチマテリアルナイフなどで一発で倒せるが、生身では重火器でないと絶対に倒せない。武器も持たず命がけだった。失敗したらみんな死ぬかもしれない。


「目標、ローマン機まで20メートルに到達しました、これより先は徒歩になります。降車してください」


 コクピットの中では真っ暗で何も見えない。FLDも表示されておらず。足音だけがした。集中しなきゃ。一瞬でも早く動けるようにしないと。車の燃料も途中で補給したが、次の基地まで正面突破しなければならない程に燃料が持たない。


 ここで時間を使うわけには行かない。手足全体の力を抜く。雑念や意識を空っぽにしてすべてを感じ取るんだ。暫く深く深呼吸を続けた。だけど車がいきなり傾き、何かに攻撃された。


「-装甲車が人型に囲まれました、一旦離れます。メセル機のショルダーキャノンが使用限界値に到達しました、ショルダーキャノンは使用出来ません。後2分です-」


 装甲車には武器を搭載してないのでピンチだった。ガタガタと揺れる。みんな無事で居て欲しい。FLDの表示が出てきた!アップデート80%・・・・・・。とすると、かすかに視界が見えてきた。


「-アップデート90%、現在の相性は0%です-」


大丈夫だ、大丈夫だ、必ず。ローマンは僕の事を覚えている。


「-アップデート完了しました、視界が共有されます。相性は0%です-」


 目の前にはリナさんとマイクさんが居た、逃げて欲しい。音が聞こえる爆発音だ、建物が崩れる音、近くが爆発し瓦礫の破片が降ってきた、マイクさんがリナさんをかばう。


 早く早く、体が動かない。横を見るとメセルも飛び続けているのが分かった。武器も無く、囮になって回避してくれているんだ。


「ローマン、お願いだ!返事をしてくれ!ローマン!」


 しかし反応がない。手に何も感じない。暖かさも心やエンジンの鼓動も一切感じない。完全に一人ぼっちだ。一瞬視界が真っ暗になり、身体に異変を感じた。おそらく装甲車が攻撃を直撃したんだ。このままではみんな・・・・・・。


 自分の涙が零れ落ちたのがわかる。後悔しに来たんじゃない。守る人が大切な人が居るんだ。もう一度、もう一度君の翼を見たい。


「こんな時代でも、こんな世界でも、君がいなきゃ駄目なんだ。君の翼は鋼鉄の翼なんかじゃない!鳥のように自由に大空を羽ばたくんだ!その希望の翼で!」


 涙が再び零れ落ちた。とても暖かい。いま会いに行くよ。指先と指先が触れる。手を繋いで。怖がらなくていい。今からでも思い出を作ればいいんだ。僕との記憶がなくったって、最初からでもいいんだ。もう君さえ居れば・・・・・・。


「-また、迷っているんですか?雪人さん。私の翼は希望の翼。素敵な名前をありがとう。また一緒に飛んでくれますか?-」


 目の前に光が見えた。呼吸がひとつになり。エンジン音からすべてを感じる。FLD上に目的が映し出された。


「-目標、飛行型1体、クモ型3体、速やかに排除してください。現在の相性は90%です-」


「一緒に飛ぼう!もう離れない!すぐ君の隣で世界中の空を見るんだ!」


「-目の前の壁がただ黒くもう越えられないと思いました。でももう違う。越えるのは壁ではなく今という時、その全てが越えられるんだと一緒に飛んでください、雪人さん!-」


 力を入れて、ジャンプしすぐに建物の上に立つ。メセルが苦戦している。一瞬で終わらせてやる!エンジンに力を入れる。敵がこちらに気づいた。地上のクモ型に向かって飛んだ、降下中にも加速させる、ランスポーツの時よりも早く。地上に降りレーザーに囲まれるも高速を保ったままクモ型に接近しスライディングで懐に潜り込む、上の飛行型と一直線に並んだ。


 左手のアンカーに仕込んだアンチマテリアルナイフを高速で射出し、クモ型のコアを貫通し撃破した、そのまま勢いを保ったナイフが上空の飛行型の胴体に突き刺さった!そしてレーザーを避けながらアンカー引っ張り飛行型を地面に叩き付ける。逃がさない。


「ぶちぬけええ!」


 飛行型にショルダーキャンノンを直撃させた。装甲車がリナさんとマイクさん、そしてメセルを回収したのが見えた。残るはクモ型2体。


「-この基地から脱出するわ、軍から基地の自爆要請が出たから、5分後に基地全体が吹き飛ぶ。攻撃しながら脱出よ-」


 装甲車が全速力で走る。周りを見ると大量の人型に囲まれていた。戦っていたらキリがない。人型が小さなレーザーを撃ってくるが命中精度が低いのか簡単に避けれる。撃つたびに体が崩壊していくがすさまじい威力だった。


「-あの小さなレーザーでも当たると、一発でやられます!雪人さん、背中任せます!-」


 ローマンが高速でジグザグに移動する。ショルダーキャノンを背後に向け、カメラから敵の位置を確認してレーザーの射線を予測する。その先の敵に向かってショルダーキャンを発射し撃破しながら人型を振り切った。しかし高速で地面をクモ型が接近してくる。装甲車ではクモ型を振り切れないので、振り返って背中に目掛けてジャンプした。


 右手のバレルバーストで直接メインコアを撃破した。再び僕達は高速移動に移る、後クモ型1体。基地自爆範囲から安全地帯まで移動し装甲車から離れた場所でクモ型と一騎打ちになる。


 負けるはずが無い。クモ型目掛けて一直線に走る。レーザーを避け、爪を避け接近しアンチマテリアルナイフがメインコアに突き刺さり散っていった。信じられなくくらいに今まで無い反応速度だった。新戦闘システムのお陰なのだろうか、僕には分からなかった。


「-目標を撃破しました。基地自爆まで5秒、衝撃波に備えてください。3、2、1、0-」


 全てを多い尽くす閃光の後に衝撃波が僕達を吹き飛ばした。装甲車は丘を盾にしていても、ひっくり返りそうだったが何とか持ちこたえた。爆音と黒煙が上がる。


「-次のシャトー前線基地まで5時間です、補給を受けられます。現在の相性は91%です-」


 装甲車の上に乗る。メセルは傷だらけだったが損傷は殆ど無く休憩し切断する為、中で待機してもらった。僕自身が下に居ると思うと不思議な感じだった。リナさんとマイクさんの無事も確認でき今度は僕達が警戒に当たる。ここから先はコアの記憶が無いので、かなり危険な道のりとなる。


「-どうして来たんですか。こんなに危険なのに。雪人さんが死んでしまっては。私は・・・・・・-」


 とても悲しく寂しい感情が流れ込んできた。みんなを危険な目に合わせてまで。何も言えなくなってしまう。なんて答えればいいんだ。


「その、あの・・・・・・」


「-スキだー愛してるー って言えばいいじゃない。ねえ?-」


「-今がチャンスだぜ!なあアイヴィー-」


「-目的は、ローマンさんの戦闘の記憶を取り戻す為です-」


「-雪人さんらしいですね、ありがとうございます-」


 みんなありがとう。このあまりにも大きな戦いの中で僕達は一歩遅れているけど、それでいいと思う。みんなで乗り越え無事でいられると思っていた。常に敵が居ないかサーチして戦闘にならないようにルートを探した。途中タイタンと戦ったのだろうか大きな爪跡がいくつもあり、基地に近づくにつれて殆どの建物が瓦礫と化していた。激しい戦いだったんだろう・・・・・・。


 目の前はもう基地だ。マップで見ると緑に囲まれた川沿いの大きな町だった。壁に囲まれ即席キャンプだった。上空を見渡すとひっきりなしに修理ポッドや輸送ポッドが離着陸を繰り返していた。滑走路まである。


「-シャトー基地に到着しました。徒歩で補給場所まで移動してください。現在の相性は75%です-」


 装甲車が止まる。沢山のテントには各国の機体が待機していた。どうやら人はいないようだ、FLD上のルートは日本のテントを示していた。雷花は居るのかな。整備車両や輸送車両も多く渋滞していた。メセルの手をとり降ろす。


「-私の妹。本当に良くがんばってくれました。心から感謝します-」


「-お姉様・・・・・・-」


 メセルはローマンの胸に飛び込む。そして手を取り合った。この空間は優しさと暖かさという時の無い形へと包まれていく・・・・・・。今を大切したい。僕はそう思った。


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