core21:それぞれの翼Ⅱ
>読みやすくしました。
スマートパルスライフルから青い稲妻と爆音と共に小さな弾丸が発射された。レールガン方式で発射されるその弾は雷を纏い、一瞬で着弾したが複数のコアシールドによって防がれた。続けてショルダーキャノンを敵の頭の方に発射した。しかし当然のようにコアシールドで防がれた。コアが移動するまでも無く大量に敵の下にはコアシールドがある。
メインコアがまったく見えない。最初の攻撃が防がれてから2秒も経ってないが、辺り一帯がレーザーによって囲まれていた。避けられるのかコレを焦りと緊張そして次々に襲い掛かってくる恐怖の波を押さえ込む。
「-もっと動き回らないと当たります!常に建物の上を行きます!-」
ローマンが叫ぶ。視界は上空の敵を見ずに全力で走りジャンプする。レーザーの雨が常に身体にかすりこれでは10秒持たない。一度下に視界がいき、そこにはライラが大量の弾丸を発射した。ドドドと敵に着弾する。敵の頭から後部にめがけて一列に集中攻撃している。
だが敵の反撃も強烈だった。すかさず僕達のスマートパルスライフルで援護した。今頭を狙えばコアシールドが移動するはずだ。青い稲妻を纏った弾はさっきよりも敵の身体に少し近づいたところで防がれた。
「ローマン見えたか!頭部のシールドの方が少ないぞ!」
ライラの攻撃に続けてショルダーキャノンで追撃した。するとやはりシールドの隙間が少しだけある。
「-メインコアは地上側にはありません。コアシールドは頭部が10、後部が15、小レーザー30、横には中型レーザーが5、後30秒でドイツ機が投下されます。現在の相性は79%です-」
まだ初弾から30秒しか経ってないのか、ライラは地上を高速移動する、FLDにはライラのルートが表示され行動が共有されている。頭部に回り込む気だ、僕達は囮になる為に建物を移動して狙いを定めるも、なかなか狙いが定まらない。それどころかショルダーキャノンをはずしてしまった。
「-これではライラが狙われてしまいます。高めにジャンプするのでショルダーキャノンを連射してください-」
かなり危険だがやるしかなかった。FLDのオーバーヒートゲージが今にでも振り切りそうだ、回避ルートが建物に突っ込むルートになっている。もうむちゃくちゃだ。右足に力をこめてジャンプした。背中に当たる破片から振り向かなくても分かる、先ほどまで走っていた建物は跡形も無く木っ端微塵に破壊され、更に後ろには中型レーザーの恐怖の光が見える。
少しでも敵の真下から離れると中型レーザーを撃ってくる。爆風で軌道がずれてしまい、ぶれる視界の中、ロックオンアラートを僕は聞き逃さなかった。
「ざっけんなーーーーー!あたれぇええー!」
強力なショルダーキャノンの弾は敵のコアシールドによって防がれるも、ほんの0.5秒だけレーザーの雨に隙間が出来る。その間に姿勢を建て直し建物に足から突っ込んだ。スライディングしながらブーストで加速してこのまま突き抜けた。目の前の建物の壁目掛けてそのまま突っ込む、足を強引に壁に引っ掛け上にジャンプする。再び屋上という地獄へと。
「-ドイツ2機、投下されました。ダイブストリームまで10秒、敵を引き付けてください-」
ライラが叫ぶ。この距離からでも分かる。黄色の綺麗な機体。
「-もう、このおねーさまの出番が無くなるじゃないのよ!見てなさい。雷帝ちゃん!これが私のスパイラルシフト!このデカブツ!私達の太陽を遮ってんじゃあないよ!こじ開けろ!悲哀の翼!おりゃああああ!-」
ライラの大きなエンジンから二つの青い炎が噴出し、信じられないことに敵の集中豪雨のようなレーザーの中に入っていった。目では追えない程に高速で飛び回る。レーザーをかすりともせず。それどころかマシンガンで的確に一点集中させ反撃している。それはまるで青い翼を持った天使のようだった。
ライラの猛攻は敵のレーザーコアを破壊し、その隙間に出来た所にショルダーキャノンが直撃しコアシールドを数個破壊した。凄すぎる。
「-おっとー電池切れ。後はよろしくー-」
ライラの青い翼は消えてしまい落下する。敵に再度にらまれて、かなり危険な状態だった。早く援護しないと。すると敵上空が赤く光る。ドイツ機が近づいたんだ。援護しようとするも、ドンという音の後にフライングガンシップが揺れ、何かが直撃したようだった。あの大きな巨体が傾く。
さらに続いて、ドンと音がして敵の高度が下がる。コアシールドが上に行こうとするのですぐに援護して惹きつける。もう弾がなくなるまで撃ちまくるしかない。敵の攻撃にまとまりが無くなり、狙いが付けやすい。ロックオンした先に[x]のマークが出た。なんだ。まさかとは思ったが予感は的中した、なんとドイツ機が上から敵の身体を貫通して出てきたんだ!
「-お、こんにちはー!私シュツカートちゃんだよ。よっろしくねー-」
小さく黒い機体に金髪のツインテール、小さい身体に似合わない程大きなライフルを持っていた。再びドンドンと爆発音がする度にフライングガンシップの体が傾く。器用にシュツカートがレーザーを避けながら建物に着地した。
「-君達が下で囮になってくれたお陰で上はコアシールドとレーザー壊せたよー、えへへ、メインコアも見えちゃったしね、後はファウストが何とかしてくれるからね!-」
と余裕を見せながらこっちに手を振った。すると僕達を覆っていた大きな影が消える。上を見ると敵がバラバラに散っていく。ああ、もう一機がメインコアを破壊したんだ・・・・・・。人影が降りてきた。僕達のエンジンはとっくに焼きついており、オーバーヒートしてしまっていた。
その機体はくるくると回転しながら、逆さまになって降りてくる。黒い機体に銀髪のツインテールだった。するとこっちに向かってきて僕達と同じ建物に着地した。
「-任務完了、協力感謝する-」
シュツカートとは対照的な性格だった。機体のデザインもかなり女性的でじっと見つめているとローマンのこめかみ辺りがぴくっとした。
「ローマン、気が抜けてしまってぼーとしてたんだ。と、特に意味はないよ」
「-私もありません-」
完全に怒っている。下手な言い訳もしてしまい余計に怒らせたかもしれない。
「-目標敵コア破壊を確認しました。帰還ルートを検索中です。現在の相性は74%です-」
ライラもこっちに近づいてきた。超高速で動き回るスパイラルシフトは凄かった。確か第四世代の代名詞みたいなもんだって聞いたが、僕達も出来るのだろうか。ライラは後から降りてきた銀髪の人の隣に着地した。
「-おおーこれはこれは、ドイツのエース姉妹ファウストちゃんとシュツカートちゃんじゃなーい。うわー、かわいいわねー-」
あの人がファウストというのか、ライラはそのクールなファウストの頭をナデナデしてキスまでしてさらに抱きついている。しかしファウストはまったくも動じなかった。凄いなエースは。
間にシュツカートが割り込もうとして顔がつぶされていた。ファウストのクールな顔から少しだけ緊張が解けたのか穏やかな笑顔で、僕達に話しかけてきた。
「-君達が氷の雷帝ローマンだね、ランスポーツ見ていたよ。量産型であそこまでやるのは正直驚いた、それに今回もフライングガンシップ相手にほぼ無傷だ。二度も驚いたよ-」
再びローマンがぴくっとしたが。怒りはだいぶ静まっていたのでよかった。
「-私達はまだまだです。皆さんのように自由にスパイラルシフトが使えてませんから。まだ一度も出来てません-」
ライラとシュツカートが驚いた顔で話しかけてきた。
「-えー、まだなの!?一度も!?ラブが足りないんじゃないの?ラブよ、ラブ-」
二人して何でそうなるんだ。それにスパイラルシフトの練習なんてしてないし。そう話している間にFLDの帰還ルートが表示された場所は輸送ポッドの合流地点だった。
「-輸送ポッドまで、地上ルートで移動してください。現在の相性は70%です-」
帰還ルートを一緒に走る事にした。いつもならここで切断される気がするけど今日はされなかった。それにドイツのエース達は別の方向のようだった。シュツカートが近づいて話しかけてきた。
「-えーと、スパイラルシフトは使おうとして出来るもんじゃないからね。なんていうか。勝手に感じて一緒になると言うか~、よく説明できないや、あはは、またねー-」
元気よく手を振って、ファウストと一緒に飛びだって行った。ライラは僕たちと同じルートだろうか残っていた。
「-いっちゃったね。あの子達は可愛かったけど、ドイツオリジナルの量産型がね。うーんやっぱなんでもない。ほら、同じメッス基地でしょ。行くわよ-」
ライラは何かを言いかけて先に行ってしまった。相変わらず早く付いていくのが精一杯だった。一度焼きついたエンジンは最高速度までは出せないけど、肩の重荷が取れたのか軽快に走ることが出来た。ありがとうローマン、一緒に戦ってくれて。ローマンの頬に手を当てた。するとローマンが反対の手で僕の手を握ってくれた。
帰還ポイントに到着した。輸送ポッドに乗り込み安全を確認する。すると目の前が真っ暗になりFLDの表示だけ。完全に切断される。手足からビリビリと痺れと首や腰の辺りに急に重みを感じ、そして心臓がドクンドクンと大きく動き出し全身に血液を送る感覚が伝わってきた。暑さや匂い雑音が聞こえてくる。
ドアの隙間から光が差し込む。自動で開くドアの先にはリナさんが優しい笑顔で待っていてくれた。
「お帰りなさい」
「ただいま帰りました」
ほっとして足に力が入らない。手を差し伸べてくれて。抱きついてしまった。ぐっと顔に胸があたる。安心感に包み込まれ、そのまま寝てしまいそうになる。もう何も考えられない。
「脳に負担が掛かりすぎたわね、甘いもの食べて寝なさい」
唇にチョコレートだろうか甘いものに触れてそのままリナさんの指ごと口に入れてしまった。頭がぼーとする。甘くて美味しいな。もう駄目だ意識が遠のく。眠い。
合同投下訓練と言っていたがメセルの救出から飛行型撃破、チームでのフライングガンシップとの戦い。あまりにもいっぱい詰め込みすぎた。まだ中継基地にも着く前なのに。かすかにマイクさんとアイヴィーが視界に入るが。僕はそのまま寝てしまった。




