core20:それぞれの翼Ⅰ
「-前線の輸送ポッドが撃墜されました。突然変種の飛行型、フライングガンシップが発生しまた。ルートを検索中です-」
輸送ポッドって6人は無事だよな。ローマンも不安だろうがお互いに今は祈るしかなかった。
「-検索が完了しました。フライングガンシップ 40メートル級、ルート、中継基地メッス基地へ直進しており、高高度を保っております-」
40メートルって当でかいぞ。突然変種がいるとは聞いていた、人型やクモ型でも突然変異がいてかなり厄介な相手だと。リナさんから通信が入った。
「‐最悪ね。至急、迎撃隊を編成する事になるわ。私達が近いから戦う事になるから。修理ポットでは近づけない。途中で別の隊と合流するのよ。一人で戦える相手じゃないから-」
「-作戦内容の検索が完了しました。4機で編成を組みます。ドイツ2機、イタリア1機。イタリア機の輸送ポッドに合流します。ルート検索中です。現在の相性は79%です-」
FLD上に合流ポイントが表示された。ルートは途中で修理ポッドから降りて地上を移動する。それも短時間でだ。
「-修理ポッド降下地点に到達しました、目標の建物の屋上に着地してください-」
修理ポッドから手を離し降下した。ブーストは極力使いたくないので、ローマンに任せて最小限で着地した。ルートにそって地上を高速移動する。このままなら2分ほどで合流地点に到着できる。
「-今、各機体と連絡をとったわ、ローマンとイタリア機は下から。上はドイツ機に任せるわ。しかしドイツ機は高高度で戦えるなんていったいどんな機体なのよ。あなた達はなるべく高い建物を選んでジャンプしながら地上で戦うのよ。大量のコアシールドがあるからむやみに撃っても倒せないから、コアシールドの移動の邪魔とレーザーの囮、そしてメインコアを探すのよ。ヤツは名前のとおり飛ぶ砲台。攻撃量はタイタンの比じゃないから、タイミングを合わせるの-」
タイタンだって何とか倒せたのに。飛ぶレーザー砲台の囮なんて・・・・・・。何とか集中力を保つんだ。イタリア機との合流ポイントが見え、輸送ポッドは建物の死角にいて地上で待機していた。
中に入ると5人いる。最初の時と一緒で立ったまま固定シートにつかまる。イタリア機は薄い黄色で戦闘用だけどデザインがかっこよかった。他の機体見たこと無いし国旗やチームのマークがあるが考えている暇が無かった。イタリア機と目が合う。
「ライラよ、あなたは確かランスポーツでビリだったけどかなり早い子ね。えーと、氷の雷帝だったかしら。フライングガンシップとか最悪だけど、よろしくね!」
ローマンのこめかみ辺りが再びぴくっとした。そういえば、雷花は今頃前線にいるのだろうか。無事ならいいんだが。
「私はシリアルナンバーVKY005R ローマンです。パイロットは雪人さんです。よろしくお願いします。地上からの作戦ですが、私のスマートパルスライフルとショルダーキャノンでは弾幕が張れません。気を引くのは数秒が限界でしょう。囮として回避に専念します」
ローマンの冷たい眼差しがライラの胸元を見ていた。女性的デザインが少し大きいような気がする。というかこれは僕の視点なのだろうか・・・・・・。
「まー気楽にやってよ。ぶっ放すのは私は得意だから、あなたは走り回って頂戴。さて、上で戦うドイツの子達からの情報は無し。落としてくれることを願いましょう」
ライラの隣には2メートルはあるだろうか、大きな銃が置いてあった。ライフルというかマシンガンと言った方がいいのだろう。弾薬のようなボックスも足元に置いてある。今までチームで戦った事が無いので頼もしく感じた。FLDには作戦開始ルートが表示され、少しずつ近づいてきた。ライラのエンジン音が少しずつ大きくなってくる。
「そろそろね、暫く地上を走る事になるから付いてきてね。そういえば君に似た子にも走り方を教えたっけ。さーて行くわよー」
ライラのエンジンはふかしただけで爆音がする。他の機体達は冷静に見つめていた。よく見ると皆傷だらけで。殆ど汚れていないのは僕達だけだった。みんな死線を乗り越えてここまで来たんだろう・・・・・・。思わず、ローマンの手をぎゅっと握るように力を入れた。
「了解です」
僕達もエンジンを動かす。規則正しく一定のリズムで。何度でもやり切って来たんだ。今回だって最後まで戦いきってやる。
「-慣性移動に移ります、投下まであと60秒-」
他の機体もエンジンをかけ始めたが、おそらく安全の為だろうか思いっきりではなかった。ライラのエンジンの爆音が僕達のエンジン音をかき消す。なんて力だ。照明が消えて背中の壁が開いていく。一気に風が入り込み目の前のランプが赤から緑に変わった。あの時と同じ光景だ。ビーーーとアラームとアナウンスがなり続ける。
『降下してください』
後ろにジャンプした。一気に落ちていく。上を見上げると輸送ポッドはすぐに上昇し見えなくなってしまった。ライラを必死に追う。ブーストを使用し何とか後ろに付くようにし、建物の隙間を滑空し見事に敵の死角になるように着地した。すぐにFLD上の検索が動き出す。
「-目標を確認しました、ライラ機とローマン機で接触後、1分後にドイツ2機が高高度より投下されます。それまでの間、囮となってください。現在の相性は78%です-」
目的までのルートが表示された。ライラはマシンガンと弾薬BOX抱えて辺りを見渡している。戦いなれた感じだった。
「-戦闘ポイント周辺の建物が思ったより低いわね。これは苦戦するわよ。じゃあ、付いてきなさいよ雷帝ちゃん-」
ライラの風圧が僕達を直撃する。なんてスピードだ。見とれている場合じゃない。ローマンの高速移動を見せ付けないと、僕達だって負けられない。常に建物に隠れるように走った。敵にエンジン音はごまかしきれないので小さくジャンプして少しでも距離を稼ぐ。
次第に上空の目標、フライングガンシップが通常の目視で捕らえることが出来た。僕達が引き受ける下側には30個あまりのx(未確認コア)がある。なんて数なんだ・・・・・・。それでもかなりの高度を保って移動している。これでは届かない。
「-雷帝ちゃん、いい?私のすっごい貴重なエスコートジャマーでおびき寄せてあげるから、暴れまわってね!カッコイイところ期待しているわ-」
ライラが拳ほどの弾丸をマシンガンの先端に取り付けた。上空の敵に銃口を向ける。これから戦いが始まる。僕達は少し高い建物にジャンプし屋上で待機する。ローマンが深呼吸するかのように胸に手をあてて言った。
「-問題ありません、ライラ開始してください-」
一緒に生きよう。こんなところで死ぬわけには行かない。メセルだって救えたんだ。僕達は。ライラからの励ましのメッセージが来た。
『いくよ!少しだけ踏ん張る。後はおねーさんに任せなさい!』
ライラのマシンガンの先端から弾丸が発射された。弾速はそれほど早くないと思ったら、弾丸が2度爆発して加速した。強烈な閃光でまるで太陽のように明るく、FLDでは表示しきれず記号となった。
フライングガンシップが反応する。大量のレーザーの雨が弾丸めがけて発射された、x(未確認コア)が大量の○(レーザーコア)へと表示が変わる。弾丸には当たらず、それどころか弾丸が急にばらばらになり地上めがけて落下した。リナさんから通信が入る。
「-あなた達、始まったわよ。地上にエスコートジャマーがばら撒かれたわ、暫くの間光って囮になるからその間に体制整えて、その後はあなた達が囮になるのよ!-」
息を呑んだ。敵がその大きさを僕達に見せ付けるかのようにゆっくりと降下してきた。大量に散った強烈な閃光めがけてレーザーを連射する。それは集中豪雨のようだった。爆発と煙で視界が悪い。さらに爆音で位置がつかめない。
「-ノイズキャンセリングします。多少のずれがありますので注意してください。行きましょう-」
視界がクリアになるが少しぼやけている。音も小さくなり必要な音だけが聞こえる中、建物の屋上を最小限で移動する。敵の後部に付くように高速移動した。まだ気づいてない。常にスマートパルスライフルを構えて隙をうかがう。
タイタンの時のようにまずはコアシールドのコアの位置を見極めるんだ。FLDにはレーザーの発射位置から特定したレーザーコアのマークが大量に表示された。少しずつエスコートジャマーの光が弱くなってきたが、まだ敵は完全に釘付けだ。
「ローマン!僕達だって出来るんだ!戦いきってみせる!」
「-はい!雪人さん!-」




