core09:真紅の破片Ⅰ
>改稿内容 旧イラストを削除
>読みやすくしました。
今日もリナさんの朝食から始まった。トーストの上に綺麗な黄色のスクランブルエッグを乗せてかじりつく。そしてアイスコーヒー、僕は苦いのが苦手なのでガムシロップを少し入れる。もう少し食べたいなと思うが訓練の為、早々に自動洗浄機にお皿を入れて支度した。
紅音とは一度も一緒になった事はないけど、訓練を重ねるにつれて会いたいと思う。だけど初めて重なる時は紅音の命を掛けた戦いだ。それは誰も望んではいない。100年前、隕石と共にやって来たコア生命体によってアメリカ大陸は壊滅状に陥り放棄された。それから誰も手をつけられず、そのままの状態が長く続いている。現在のアメリカはニューアメリカ艦隊合衆国として国自体が戦艦や空母で構成されている。この水の星で母を求める赤子のように大地を見つめている。
あまり他国には興味がなかった。アメリカを取り戻す、旧フランスを守る等とは高校生の僕にはとても重く現実離れしている。ただゲームをやっていただけなのに・・・・・・。それでも僕は何かの為に訓練をする。歯を磨きながらリナさんからの手紙を読むといつものかわいいウサギのイラストにそしてやる事が書いてあった。1買い物、2訓練、3お昼ご飯。
お使いリストを持って外へと出ようとするが、急に端末からメッセージの着信があった、いやこれは通話?緊急アラートのレッドカラーだった。焦りながらもすぐに応答する。
「まだマンション?装甲車へきて、紅音で出撃よ!」
血の気が引いた、怖かった。訓練中は紅音に会いたいと思っていたのに。メモを投げ捨て慌てて支度をした。失敗しても僕は死ぬ事は無い。だけど紅音は遠い外国で死んでしまう。そんなのは絶対に嫌だ。
「まだ部屋です、5分でいけます」
すぐに私服に着替え必要なものは無い事を確認する、身体一つで行くだけだ。急いで部屋を出てエレベーターまで走った。何とか直ぐに乗れ下へのボタンを連打していると急に、呼吸が荒くなり苦しくなる。両手で口を押さえて呼吸と気持ちを整えようとした。
いくら酸素を吸っても吸えないような状態だった。腕に痺れが来る。血の気が引く。落ち着くんだ。ゆっくり深呼吸をするんだ。
長く感じたエレベーターが一階に到着しあせらず装甲車へ向かう。これからフランスで戦いが始まるというのに平和な日本の朝日がまぶしく心地良く感じた。
今度はどんな敵だろう。最初の攻撃で決めてやる!長期戦はダメだ。肩に力が入ったまま装甲車へと向かう。頑丈なドアは開いておりリナさんが迎えてくれた。
「早かったわね、落ち着いてパイロットスーツに着替えて、状況はコクピットに入ってから説明するわ」
わかりましたと、うなづき赤いパイロットスーツに着替える。アイヴィーの隣でマイクさんの声が聞こえる。怒鳴り声だった。
「ちくしょう、ダイブする先がどこも埋まってやがる、このままだと直撃コースだ!早くしろ!雪人!アイヴィー何とか補正しろ今すぐだ」
すぐにコクピットに乗り込んだ。リナさんが自動で閉まるドアを両手で強引に閉じる。無言だったが目は怒ってなく、がんばってと声が聞こえたので少し安心させてくれた。
自分を落ち着かせなきゃ、このままじゃ相性だってあがらない。辺りが真っ暗になりオレンジ色の光、徐々に無音になっていく。目を閉じて全身の力を抜く。しだいに手足の先端から感覚が無くなり背骨の辺りから暖かさを感じた。つながる・・・・・・。深く深く・・・・・・。この感覚だ・・・・・・。
「-FLD見つめてください。目的を確認後、時間を目視してください。現在の相性は10%です-」
目的は飛行型、5mの破壊、制限時間は15分、ブラックバード2からのダイブ、装備はスマートパルスライフル4発、c1911ハンドガン、アンチマテリアルナイフ。
フル装備じゃないか!オレンジ色で文字だけが表示されている。紅音はどんな気持ちだろうか、15分必ず戦いきってやる!
「-相性30%、視界が共有されます-」
少し時間がかかった。どんな状態なんだろう。真っ暗だしこれはブラックバード2という飛行機の中の格納庫のようだけど、吊るされた状態で身動きがとれなかった。手を目の前に動かす。それはとても綺麗で暗闇さえも紅く染める真紅の手だった。
「なにじろじろ見てんだっつーの」
とても可愛らしい声だが初めての会話がそれですかって突っ込みたくなったが、タイミング悪く格納庫の扉が開いていく、下は雲だった。風を切り裂く音、高速で流れていく視界、始まるんだ。力を入れる。
「紅音、雪人君、完全に敵の背後を取ったわ、だけどこのままだと激突コースだから、軌道を変更して後ろから狙撃するのよ」
とりあえず作戦に間に合ったのかと思いほっとしたが、紅音からの不快感が流れてきた。こんな感情を受け取ったのは初めてだった。何とか僕が安心させないと行けないと思ったが無駄だった。
「-紅音機投下します、目標まで1km、軌道を修正し後ろから狙撃してください、相性は46%です-」
紅音の視線はルートとは外れて直撃コースだった、もしかしてダイブストリームか!?だとするとこの高速飛行のままアフターバーナーを使用してさらに加速だぞ!危険だ。
僕の焦りを紅音に気づかれないようにしようとしたが、ガタンという音の後、飛行機から投下された。背中のメインエンジン、両足のサブエンジンが火を噴く、高速飛行のままさらに加速する。訓練どおりのいい音が出ている。今は話しかけてはいけない、機体がふらふらになって来たのでとにかく姿勢制御をするんだ。意識を紅音へと集中する。
目標へと一直線へ、敵コア飛行型が見える。黒く飛行機のような形をしており、エンジンのようなものから赤い光が出ている。なんてスピードなんだ。飛行型の背中にx(未確認コア)が1つだけ何とか見える。
「-敵に接近しすぎです、衝突まで10、9、8・・・・・・-」
敵の姿が近い、腰についているアンチマテリアルナイフを取り出し、そして強く握り締めて構えた。もう後には引けない。アフターバーナー。そう、点火するタイミングが紅音と僕で一致した。1度だけ角度をずらすんだ、ほんの1mm程度だ。
敵がこちらに気づき背中のx(未確認コア)コアが赤く光りだす、レーザーを打ってくる気だった。x(未確認コア)が○(レーザーコア)へと表示が変わるけど、そのレーザーの軌道上にはすでに僕達はいないんだ!
アフターバーナーを点火し軌道をずらし敵の背面上空から左側面へと加速しギリギリでレーザーをかわした。視界が遮られるも、先頭に△(メインコア)があるのが一瞬見えた。今だ!
「紅音いくぞ、E.B.R.S!」
一瞬呼吸が止まり心臓が強烈に鼓動した。意識が飛びそうになり、視界が霞んで行くがオレンジ色のドームが広がっていくのだけは見える。ほんの一瞬赤く光るものが見えた。視界はもう針の穴の程しかないが、それでもしがみつこうと敵のメインコアをロックオンした、紅音と一つ一つの指が重なり攻撃する。
ほんの0.01秒ほどの世界だった。右手に持ったアンチマテリアルナイフが敵メインコアへと突き刺ささる。やってやった!そそのまま僕達は下へと急降下し、まだオレンジ色のドームが広がっている最中だった。
そしてここからが問題、強引に攻撃したので着地の事を考えておらず地面に激突してしまう。E.B.R.S中はルート表示やオペレーターの補助がないので、回避方法がまるで検討もつかなかった。
無理やりエンジンを全開にして減速する。近くの広い道路があったので飛行機のように着陸しよと地面すれすれにバランスを保ち右足をつけるが地面にすぐに足がはじかれた。
だが諦めない。再度右足を地面につけて走るかの用に必死に足を動かして地面につく。すると紅音が地面に足を着けた瞬間に反応して身体を反転させ左手を地面に付き、エンジンを使い強引に止めた。
オレンジ色のドームは砕け散りFLDが表示される。綺麗とは言えないけど敵を撃破して着地成功だ。