1月9日 昼休み 津島・高野・水屋・谷
「お菓子いる人ー」
テスト前の昼休み。私が自分の席で生物と格闘していると、どこからともなく水屋と高野、そして谷がやってきて、迷惑なことにも私をとりかこみ、奴らも生物と戦い始めた。
しかし、このメンバーでまじめにやれるわけがない。
谷がカバンからとりだしたお菓子により、大混乱となった。
「あっ!イチゴ味初めて見た!」
「いるいる!あー」
ちらりと見ると、イチゴ味のグミだった。グミもイチゴ味も、あんまり好きじゃない。
「高野ー、水屋ー、はい、津島ー?」
はい、と口の前に差し出されたグミを、私は見、首を振って一言、
「いらない」
と告げた。ふわりとイチゴの匂いが鼻腔をくすぐる。
この人工的なにおいが、だめなのだ。本物のイチゴなら、好きなんだけれど。
「え、何で?」
いつもなら食うやろ?と谷が驚く。
「うん、イチゴ味、あんま好かん」
「うえぇー!!」
とたん降ってくる三人の声。ああもう本当、いちご談義してる場合じゃないのに!
「ちゅーかその匂いがだめ」
すると。
目の前に二つ、人の悪いにやりとした笑みが見え、その瞬間さっきよりもきついイチゴの香りが鼻のあたりに充満してきた。
「わっ、おまえらやめろっ!」
「いーやん、イチゴの香り」
高野と水屋が、わざと息を吹きかけてくる。しかも、結構な至近距離で。
「くさっ!イチゴくさっ!」
「あっ!人の息くさいとか言うなし!」
「だってくさいんやもん、いちごっ!」
ばさばさと手に持っていたプリントで、顔の前をあおいでも、さして効果はなく。
いつの間にか笑っていた私は腹をまげて爆笑した。
「津島っ、ほら」
少し笑いがひいて起き上がっても、また水屋がイチゴの香りをまきちらし。
「わっ、おまえ握りっぺの原理使うなよ!」
息を吐いた口の前でこぶしを握り、私の前にそれを広げてみせた水屋に向かって、つっこむと、
「握りっぺの原理っ」
と高野が噴出した。
ああもう本当、こんなことやってる場合じゃないのに。
テスト開始まであと10分!
だけどどうしても、笑いは引いてはくれなかった。