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スカイ・ヴォルテックス・オンライン 〜弱すぎて運営が削除したハズレ職「魔道具師」を、世界で一人だけ継続したら隠しスキルが発動した〜

作者: 天音 楓
掲載日:2026/01/26

 西暦20XX年。


 人類はついに、空を真の意味で手に入れた。


 次世代VRMMORPG『スカイ・ヴォルテックス・オンライン(略称:SVO)』。


 その正式サービス開始の報に、世界中のゲーマーが震えた。


 舞台は、地表という概念を喪失した超高層の世界。


 どこまでも続く抜けるような蒼天には、大小数千もの「浮遊島」が宝石のように散らばっている。


 島々の間を縫うように走るのは、巨大な上昇気流のヴォルテックス


 それは島と島を繋ぐ「空の高速道路」であり、この世界の血液でもあった。


 このゲームを神ゲーたらしめているのは、変態的なまでにこだわり抜かれた風の物理演算だ。


 プレイヤーは自らの飛空艇やウィングを操り、空を自在に駆ける。


 翼を叩く風圧、気流に乗った瞬間に体が浮き上がるG、雲を突き抜ける際のひんやりとした湿度。


 何より、それは「移動」という退屈な時間を、最高のスリルへと変貌させた。


「今まで遊んできたゲームは、ただの『箱庭』だったんだと思い知らされた」

「風を読めば、どこへでも行ける。この自由度はもはや暴力だ」


 2週間前からのβ版の評価は、空前絶後の満点。


 掲示板には連日、目まぐるしく変化する空の攻略法や絶景のスクリーンショットが溢れ、期待は最高潮に達していた。


 このゲームを、誰もが欲している。


 そう、この俺――どう) 董平くんぺい)も、その狂熱に浮かされた一人だった。


 ネットで一枚のスクリーンショットを見た瞬間、魂を抜かれた。


 夏休み&高校生という時間の有り余っていたため発売日当日、俺は朝5時からショップの前に並んだ。


 だが、9時に開いた扉の先で待っていたのは、無情な一言だった。


「――本日分、完売しました」


 即完売。


 このゲームの熱量を、俺は甘く見ていた。



 絶望の淵に立たされてから二日。


 執念で在庫を追いかけ、ようやくその銀色のパッケージを掌に収めた。


 たった二日。されど二日。


 だがゲーム内では6日。


 掲示板やレビューサイトには、すでに攻略情報と不遇職への罵詈雑言で溢れている。


 そんななか、俺はハードの電源を入れた。


 VRゴーグルを装着すると、網膜に光が走り、視界が切り替わる。


 始まる前から早速、神ゲーの予感がした。


「こんにちは、名前を教えてね!」


 ゆでタマゴのような見た目をしたマスコットらしき存在が、陽気に話しかけてきた。


 名前か。


 特にゲーム経験の浅かった俺は、深く考えずに本名を使うことにした。


『クンペイ』


「よろしく、クンペイさん!次は見た目を選んでね」


 提示された男のモデルを適当に調整し、俺は次のステップへと進む。


「次は、職業を選んでね」


 職業選択のウィンドウが、目の前に淡く浮かび上がる。


○○○


【職業選択】


・剣士(安定の火力職)

・魔術師(派手な花形)

・盾役(パーティーの要)

・僧侶(必須の回復役)

・狩人(遠距離のプロ)

・武器師(技術の匠)


○○○


 そして、リストの最後にあるのが魔道具師だった。

 事前レビューでの評価は、目を覆わんばかりの惨状だ。

『攻撃魔法が使えない魔術師の劣化版』

『素材コストが重すぎて成長が遅すぎる』

『選ぶ奴はドMの地雷』


 そもそも、二週間のβ版でこの職の「底」は見えていた。


 開放されたのは始まりの地付近のみ。現れるのはスライムとゴブリン、そしてエリアボス。


 他職がサクサクとレベルを上げる中、魔道具師は一匹を倒すのに数倍の時間を要した。


 パーティを組んでのレベリングも試みられたが、このゲームの仕様は非情だった。


 経験値は均等に分散される。


 火力の出せない魔道具師を抱えることは、パーティ全員の足を引っ張る寄生でしかなかった。


 結局、β期間中に職業の本領が発揮される「レベル10(スキル解放)」に辿り着いた者は、世界に一人も現れなかったのだ。


 それなのに、運営はこの惨状を放置した。


 彼らが心血を注いでいたのは、あくまで「空の物理演算」が正しく作動するかどうか。


 職業間のバランスなどは「正式サービスまでに適当に調整すればいい」という、技術屋特有の傲慢な楽観視で後回しにされた。


 その結果、武器師の次に、ゴミ職の烙印を押されたハズレ職となった。


 だが、誰もが右を向く中で左を向きたくなるのが、俺の悪い癖だ。


 効率? 王道?


 そんなものは二日遅れた時点で今さらだ。


 俺は魔道具師を選択した。


 その瞬間、警告が現れた。


≪職業は2度と変更できません≫


 俺は『了解』を選択すると、画面が変わった。


 まばゆい光に包まれたと思った次の瞬間、俺の体は高度数千メートルの虚空に放り出されていた。


「うお、おい!?」


 思わず叫んだ声は、猛烈な風圧にかき消される。


 眼下に広がるのは、どこまでも続く雲の海と、その合間に浮かぶ島々の断片。


 ダイビングから始まるという演出は聞いていたが、これほどまでとは。


 まずはチュートリアルだ。


 空中に浮かぶ光の輪をくぐり抜けるよう指示が出る。


 逆張り心が疼いた俺は、あえて輪を無視して明後日の方向へ飛ぼうとしたが、見えない壁に押し戻されるようにして元の位置へ強制送還された。


「……分かったよ、やればいいんだろ」


 仕方なく、翼を模した初期装備のハンググライダーを操作し、指示通りすべての輪を通過した。


 最後の輪をくぐり抜けると同時に、視界が急速に開けていく。


 そして俺は、始まりの地『スカイポート』へと降り立った。


 足が地面に着いた瞬間、真っ先に感じたのは、絶え間なく鳴り響く、風の唸り。


 だがそれは不快な騒音ではなく、まるで世界が呼吸しているような、どこか心地よいリズムを持っていた。


「……すげえな」


 頬を撫でる風が、驚くほどリアルだ。


 高所に特有の、少しだけ乾いていて、それでいてどこか冷たい空気の感触。


 風が吹くたびに、着ている初期装備の布地がパタパタと小気味よく震える。


 大きく息を吸い込むと、肺の奥まで澄み切った空気が満たされていくのが分かった。


 ただ立っているだけで、自分が空の一部になったような錯覚に陥る。


「風を読めば、どこへでも行ける……か」


 掲示板に書かれていた言葉を思い出す。


 俺の手元には、魔道具師の初期装備である、古ぼけたランタンと奇妙な形のレンチがあるだけだ。


 剣も持たず、派手な魔法も使えない。


 だが、この圧倒的な空を前にして、不思議と不安はなかった。


 俺は一歩、始まりの地の広場へと踏み出した。



 広場には、サービス開始二日目の熱気に当てられた新規プレイヤーたちが、これでもかと溢れかえっていた。


 活気に満ちた街を歩き出すと、嫌でも周囲の装備が目に入る。


 背中に巨大な鉄塊を背負った戦士、豪奢な装飾の杖を携えた魔術師、真っ新な革鎧に身を包んだ狩人。


 誰もがいかにも「これから戦記の主役になる」と言わんばかりの、強者としての佇まいを纏っていた。


 そんな中、腰に重たいレンチをぶら下げ、場違いなランタンを提げた俺の姿は、どうしたって異質に浮いてしまう。


「おいおい、マジかよ。見ろよ、あれ」


 不意に、進行方向から下卑た笑い声が飛んできた。


 行く手を塞ぐように立っていたのは、装備の質からして先行組だろうか、三人連れのパーティだった。


 中心に立つ大剣使いの男が、俺の腰元を指差して顔を歪ませる。


「お前、あれか? 掲示板でも話題の『魔道具師』を選んじまったのか?」


「ああ、そうだが……?」


 俺の短い返答に、男の隣にいた魔術師風の女が肩を揺らして吹き出した。


「うわ、本当だ。マジでいるんだ、絶滅危惧種。センスねぇなー。それ、一番の『詰みジョブ』だって有名だよ?」

「そうそう、悪いこと言わねえからさ、傷が浅いうちにアカウント作り直してキャラデリした方がいいぜ。時間の無駄だって、マジで」


 男たちは顔を見合わせ、さも愉快そうにゲラゲラと笑っている。


 彼らにとって、効率の悪い選択をする人間は、ただの憐れみの対象でしかないらしい。


 だが、言いたいだけ言わせておけばいい。俺は口角をわずかに上げ、丁寧すぎるほどの実直な態度で頭を下げた。


「ご助言、ありがとうございます。参考にさせていただきますね」


 あまりに素直な反応に、男たちは拍子抜けしたように言葉を詰まらせた。俺はそのまま、彼らの脇を音もなくすり抜ける。


「では、またの機会があればお会いしましょう」


 背後で「なんだあいつ、気味が悪いな」と吐き捨てる声が聞こえたが、もうどうでもいい。俺はそのまま、人混みの向こうへと身を潜めた。


 まずは、ステータスを確認するか。


○○○


【プレイヤー・ステータス】

【名 前】 クンペイ

【職 業】 魔道具師

【レベル】 1

【体 力】 80

【魔 力】 120(+10)

【筋 力】 8

【耐 久】 7

【敏 捷】 10

【知 力】 15(+5)

【器 用】 22(+8)

【スキル】 なし


○○○


「スキル……なしか……」


 改めて突きつけられた、無一文ならぬ「無能」状態。


 普通のゲームなら、初期スキルとして何かしら「叩く」なり「撃つ」なりのコマンドがあるものだが、この魔道具師という職業は徹底してシステムから冷遇されているらしい。


 広場の隅では、剣を振って「スキル習得!」と無邪気に喜んでいる戦士や、的に火球を当てている魔術師がいた。


 彼らはシステムに導かれ、着実に強さの階段を登り始めている。


「レベルを上げればもらえる、か。……いや、そのレベル上げ自体が問題なんだよな」


 掲示板には膨大な攻略情報が載っている。それに則れば、誰でもある程度までは効率よく強くなれるだろう。

 こればかりは「逆張り」の範疇ではない。単なる合理的な選択だ。


 だが、そもそもこの職業を選ぶ酔狂な人間がいないせいで、攻略情報そのものが一行も存在しなかった。


 掲示板を覗いても、目に飛び込んでくるのは罵倒や憐れみだけだ。


「……手探りでやるしかない、か」


 俺は西門を抜け、始まりの街『スカイ・ポート』の郊外へと出た。


 門の先に広がるのは、大小さまざまな岩が浮かぶ緩やかな下り坂の広野。


 そこにいたのは、このゲームの最弱モンスター。


 淡い水色をした、透き通るような球体――『スカイ・スライム』だ。


 周囲では、戦士たちが大剣を一振りしてスライムを両断し、魔術師たちが火の粉を飛ばして瞬殺を繰り返している。


 一秒、二秒。彼らが一歩歩くごとに、スライムは経験値という名の光に変わっていく。


 俺は腰のレンチを右手に持ち替えた。ずっしりとした金属の重みが掌に伝わる。


 だが、これは獲物を狩るための「武器」ではなく、あくまで何かを調整するための「工具」だ。

 リーチも短ければ、刃が付いているわけでもない。


 スライムはポヨポヨと頼りなく跳ねながら、こちらをぼんやりと見上げている。


「……ふんっ!」


 俺はレンチを振り下ろした。


 ベチャッ、という鈍い音が響く。


 スライムの表面が少し凹んだが、ゴムのような弾力によってレンチは虚しく跳ね返された。


 表示されたダメージは――『1』。


「……マジかよ」


 あまりの低火力に、自分でも笑いそうになる。スライムのHPバーは微動だにしていない。対して、こちらの攻撃に怒ったのか、スライムが体当たりを仕掛けてきた。


 ドンッ。


「うおっ」


 衝撃は弱いが、ステータスの『耐久:7』のせいか、地味に身体が揺れる。


 一発殴って、一ダメージ。


 相手の単調な体当たりを避け、また一発。


 コツ、コツ、コツ……。


 もはや戦闘というより、石ころを叩いて整形しているかのような地味な作業だ。


 通りがかったプレイヤーたちが、レンチを必死に振り回す俺を見て「え、何あれ……」「魔道具師がスライムと格闘してるんだけど……」とヒソヒソ声を漏らして通り過ぎる。


 屈辱? いや、そんなものを感じる余裕すらない。俺は、この「効率の悪さ」を、一撃ごとに噛み締めていた。

 

 五分後。ようやく、一匹のスライムが霧散した。


≪経験値を獲得しました≫


 微々たる経験値のバーが、数ミリだけ動く。


「ハァ、ハァ……。これ、レベル2に上げるだけで何時間かかるんだ?」


 だが、俺はレンチを握り直した。たった一ダメージ。


 その感触を繰り返すうちに、俺はスライムの「核」がどこにあるのか、レンチの重さをどこに乗せれば一番響くのかを、本能的に覚え始めていた。


 現実世界で1日、ゲーム内で3日が経ち、俺は少しだけ仮眠を取ることにした。






○○○ SVO攻略掲示板 ○○○



12 名無しのスカイランナー

 おい、例の「西門のレンチ男」まだスライム叩いてるぞ。数時間前ログアウトしたけど、まだいるぞ。

 ゲーム内だと1日か?


13 名無しのスカイランナー

 あー、クンペイだろ? 俺も見た。

 一発殴るごとに1ミリくらいしかHPバー減ってなくて、もはや哲学的な何かを感じたわ。

 

14 名無しのスカイランナー

 魔道具師ってだけで「縛りプレイ」確定なのに、あいつ初期装備のままなんだよな。

 せめて街の露店で安い剣でも買えばいいのに。

 効率度外視にも程があるだろ。


15 名無しのスカイランナー

 >>14

 魔道具師は筋力終わってるから、鉄の剣なんて持ったら重さで歩けなくなるんだよw

 あいつには一生、その錆びたレンチがお似合いってこと。

 まさに「生きた化石」だわ。


16 名無しのスカイランナー

 マジで誰か教えてやれよ。

 「このゲーム、空を飛ぶのがメインだよ」って。

 地面でスライムと格闘してるあいつだけ、別のゲームやってるみたいで可哀想になってくる。



○○○






 それから、俺の孤独な戦いが始まった。


 この世界『SVO』には、現実の3倍の時間が流れている。現実の一時間がゲーム内では三時間。この時間加速が、俺の「逆張り」を狂気へと変えた。


 夏休み。


 高校生の俺に与えられた唯一の武器は、有り余る時間だった。


 飯と睡眠以外、文字通り不眠不休。


 他プレイヤーがはるか高みの浮遊島へと旅立ち、街から「二日遅れのルーキー」がいなくなっても、俺は始まりの地の郊外でレンチを振り続けた。


 現実で一週間、二週間……。


 ゲーム内ではすでに一ヶ月以上が経過していた。


 一匹のスライムに五分かけ、微々たる経験値を啜る。その単調な作業を、俺は三ヶ月分繰り返したことになる。


 その間、世界は二つの大規模イベントを消化し、攻略の主流はすでに中層域へと移っていた。


 掲示板では、いまだにレベル一桁でスライムを叩き続ける俺の姿が「西門のレンチ男」「生きた化石」として、もはや娯楽コンテンツのように晒され続けていた。


 だが、現実世界で一ヶ月が経ち、2つのイベントが終わった頃だった。


 ベチャッ、という耳鳴りがするほど聞き慣れた音。


 通算、数万匹目となるスライムが霧散した瞬間、俺の網膜に黄金の粒子が舞い踊る。


≪レベルが10に到達しました。職業スキルが解放されます≫


「……やっと、きたか」


 誰もが「不可能」と断じた魔道具師のレベリング。


 執念だけでこじ開けたレベル10の扉。


 だが、俺がその達成感に浸る間もなく、視界を真っ赤なシステムウィンドウが覆い尽くした。


【緊急システムアップデートのお知らせ】


 それは、街が夕刻の淡い光に包まれた瞬間のことだった。


 視界の中央に、真っ赤なシステムウィンドウが強制表示される。


「……あ?」


 全プレイヤーが動きを止めた。


 正規サービス開始して、異例中の異例となる緊急メンテの告知。


 掲示板での凄まじい反感――「この職業を選んだだけで詰む」「マルチに来るな」「運営の調整ミスだろ」という罵詈雑言の嵐に、運営がついに屈したのだ。



○○○



【重要:職業バランスの抜本的見直し】

 本日をもちまして魔道具師を無期限で停止します。

 あまりに低い性能と、プレイスタイルの難解さにより、プレイヤーの皆様に多大な不利益を与えたことをお詫び申し上げます。


これに伴い、以下の措置を実施します。


• 今後、新規プレイヤーによる「魔道具師」の選択は不可能です。

• 現在「魔道具師」の方は、特別措置として一度のみ、無条件で他職業への変更を受け付けます。

※その際、レベルは引き継がれます。

・万が一そのまま継続を希望される場合、本職に関する今後のアップデート、スキル調整、専用クエスト等のサポートは一切保証されません



○○○




*メンテ明け後・掲示板*


 ○○○ SVO攻略掲示板○○○


【悲報】運営、魔道具師を公式に「失敗作」と認め、無期限「削除」へwww


1 名無しのスカイランナー

 メンテ明け、クソワロタwwwwwwwwww

 公式が「魔道具師はゴミです」って言っちゃったよ。


2 名無しのスカイランナー

 まじかよ。新規選択不可とサポートなしって、事実上の削除じゃねーか。

 まぁ、あのスライム相手にレンチで5分かかる動画見たら、納得だわ。


3 名無しのスカイランナー

 職業変更の権利、神対応すぎる。

 さっき広場で、魔道具師だった奴らが一斉に「光の戦士」になってて草生えた。


4 名無しのスカイランナー

 >>3

 そりゃそうだろ。あんな苦行、誰が好き好んで続けるんだよ。

 一人残らず、速攻で剣士か魔術師に乗り換えてるはず。


5 名無しのスカイランナー

 【速報】全プレイヤーのアクティブ職業分布、更新。

 剣士:35%

 魔術師:28%

 ……

 魔道具師:0.0000...%


6 名無しのスカイランナー

 >>5

 ゼロじゃねーかwwwwwwwwww

 絶滅完了おめでとうございます。


○○○




*メンテ明け後・クンペイ*


 俺の目の前に浮かぶ【職業変更を希望しますか?】というウィンドウ。


「――『いいえ』だ」


 選択を確定した瞬間、システムからこれまでにない冷徹な警告が流れる。


≪警告:『魔道具師』を選択し続けるプレイヤーは、今後一切の職業別アップデート、スキル調整の対象外となります。また、専用クエストの発生も保証されません。本当に、このまま継続しますか?≫


「ああ、望むところだ」


 再度の『了解』。


 その瞬間。

 

≪全サーバーにおける『魔道具師』の生存を確認……完了。現在、該当者はクンペイ1名のみです。≫


≪固有パッシブスキル【孤独職人オンリーワン】が自動発現しました≫


「固有スキル!?」


 おれは思わずステータスを見た。



○○○


【スキル】

孤独職人オンリーワン:同職不在によるステータス超補正(器用・知力にボーナスを付与)


○○○



 孤独職人オンリーワン


 なぜ、運営がこんなスキルを用意していたのかは分からない。


 だが、今の俺にはこれが、折れずにしがみついた者への「挑戦状」のように感じられた。


 ステータス画面に刻まれた、漆黒の輝きを放つスキル名。


 運営が匙を投げたこの職業が、世界でたった一人になった瞬間に牙を剥き始めたのだ。

 

「調整対象外……サポート保証なし、か」


 それはつまり、このゲームを縛る『バランス』という鎖から、俺だけが解き放たれたことを意味している。

 

 俺は腰のレンチを強く握り直した。

 

 掲示板の嘲笑も、運営の謝罪も、もはや遠い雑音でしかない。


 俺は人混みに背を向け、まだ誰も見たことのない『空』を掴むため、静かに歩き出した。

 



 ここまで読んでいただきありがとうございます!


 運営すら投げたこの「魔道具師」が、誰もいない空でどんな非常識な発明をしていくのか……。


 もし「続きが気になる!」「逆襲が見たい!」と思ってくださる方がいましたら、評価やブックマークで応援いただけると嬉しいです!


 反響が多ければ、すぐに続きを執筆して連載化したいと思います。




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― 新着の感想 ―
>その結果、武器師の次に、ゴミ職の烙印を押されたハズレ職となった。 >だが、誰もが右を向く中で左を向きたくなるのが、俺の悪い癖だ。 >だが、誰もが右を向く中で左を向きたくなるのが、俺の悪い癖だ。 コ…
いわゆるクラフトで10lvまで経験値貰える弟子入り系チェーンクエスト的なモノ実装すれば違ったのではなかろうか
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