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転送管理局~人生2周目は観察係だった件~  作者: 秋川悠
第一章

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【最終話】選択の先に

 管理局の白い廊下を、光はゆっくりと歩いていた。

 

 何日ぶりだろうか。どこか懐かしいこの空気を、今はようやくまっすぐに吸い込める気がした。


 行き先は決まっていた。

 

 観察室――自分がかつて立っていた場所。

 

 ドアの前で一度、立ち止まる。ほんのわずかな躊躇。

 

 けれど、それを押しのけて、光は扉を開けた。


 中には誰もいない。

 

 それでも端末はいつでも稼働できるように、静かに待機している。


「…戻ってきた、か」


 その言葉は、誰に向けたものでもなかった。

 

 けれど、確かに“今の自分”の意思だった。



 数時間後。光は再び記録室にいた。

 

 処分が解かれたわけではない。だが、管理局は彼に最後の選択を委ねた。


『再び観察係として立つか、それとも…新たな転送先を選び、生まれ変わるか』


 与えられた二つの道。そのどちらを選んでも、もう後戻りはできない。その問いの答えは、彼の中では決まっていた。


 光は端末の画面を開き、未処理のログ一覧を見つめる。

 

 そこに新しい転送者のデータが表示される。


『T-1241(記憶保持者)』


 その文字列をクリックしようとした瞬間、背後から声がした。


「選んだのね」


 振り返ると、雨宮が静かに立っていた。


「はい。俺は…もう一度、ここでやっていきます」


「理由を、聞いてもいい?」


 光はわずかに笑った。


「…前は、“誰かのために”って思ってました。でも今は、俺自身が“誰かを見ていたい”って、そう思えるようになったんです」


「それは、“信じる”ってことなのかしら?」


「かもしれません。たとえ過去に裏切られても、最後に俺の手を離さなかった人がいた。だから、俺もまた、誰かを見つめていたいんです」


 雨宮は、穏やかにうなずいた。


「そう...改めて、ようこそ、観察係へ。」


 光はまっすぐ前を向いた。


 画面の先に広がるのは、また別の“人生”。

 

 そこには悲しみも、怒りも、そして希望もあるだろう。

 

 だが今の彼には、それをただ見届ける資格がある。

 

 かつて絶望の中で終わった命が、ここで新しく始まろうとしていた。


 “もう一度、生きるように”

 

 観察係・高槻光の、新たな物語が、静かに幕を開けた。


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