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転送管理局~人生2周目は観察係だった件~  作者: 秋川悠
第一章

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22/23

【第20話】再起動

 前世での人生を見終えた俺は、ホログラムパネルを無言で閉じた。


「俺、本当の死因は、自殺だったんですね...」

 

 雨宮は光の呟きに対して無言で頷く。

 沈黙が流れる。


 光は、自分の胸の奥で何かが軋むような感覚を覚えながら、問いかけた。

「俺は…なぜ、非記憶保持者として転送されたんですか。なぜ、こんな形で…」


 雨宮は小さく息を吐き、静かに語り始めた。

「あなたの前世を見たとき、私はこう思ったの。この人は、本当は誰よりも優しくて、誰かのために動ける人間なんだって」

 

 光は、目を伏せた。

 優しさが、自分を壊したのだ。

 人に尽くして、信じて、裏切られて、壊れてしまった。


「…でも、あなたは最後、自分で命を絶った。そして、もう誰も信じられなくなっていた」


「そんな感じだったんですね…」


「そんなあなたが、記憶を持ったまま新しい世界に行っても、何も変えられない。むしろ、また誰かを傷つけてしまうかもしれない。そう考えたのよ。だから私は、記憶の消去を申請したの」


 光は、驚いたように雨宮を見た。


「あなたが…俺の記憶を…?」


「ええ。勝手なことだと思ってる。でも、信じていた。記憶を失っても、あなたの“核”は残るって。もう一度、誰かのために動ける人間に戻れるって」

 

 光は、胸の奥が締め付けられるような感覚に包まれた。


「…観察係に選んだのも、あなたなんですか」


「そう。研修制度を見直す新プロジェクトの一環として“観察係としての再生モデル”を提案できる人間が必要だった。管理局からの承認も、得られたわ。でも、私は仕事としてだけじゃなく、あなた自身の“更生”を願っていた」


 雨宮は立ち上がり、光の前に歩み寄った。


「あなたは、人を救えなかったことに苦しんだ。でも、あのとき確かに動いた。陽菜を見て、見捨てられなかった。あれがあなたの本質よ。記憶がなくても、あなたはやっぱり、誰かのために動ける人だった」


「…それでも、俺はあの子を救えなかった」


「でも、“救おうとした”。その行動が、私の信じたあなたそのものだったのよ」


 静かに、雨宮は手を差し伸べた。


「さあ、光。ここから先は、あなた自身が“選ぶ”番よ」


 光は、その手を見つめる。

 かつて誰も信じられなかった自分が、誰かを信じて歩き出すことができるのか。 

 答えは、次の一歩に託された。


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