【第17話】崩れていく日々
誰も信じてくれなくなった世界で、唯一光の味方でいてくれたのは咲良だった。
「私は信じてるよ、光くんのこと」
ゼミの誰もが目を逸らし、陰口を叩き、無視を決め込むなか、咲良だけは変わらなかった。かつて彼女が「変に真面目すぎる」と笑ったその性格が、今の光にとっては唯一の救いだった。
だが、そんな咲良が――体調を崩し始めた。
最初は、少しだるそうにしているだけだった。けれど、日に日にその頻度は増え、大学を休む日も増えていた。
「ちょっと疲れてるだけだから」
そう言って笑う咲良の顔からは、以前のような張りがなくなっていた。病院に通い始めたという話も、後から聞いた。
そして、そんな彼女にまで、周囲の視線は冷たく向けられるようになる。
「なんかさ、咲良ちゃんまで変わっちゃったよね」
「やっぱアイツと関わってるからじゃない?」
囁かれる噂。
真実なんて何も知らないくせに、勝手に作られていくストーリー。
光は心の中で叫んでいた。やめろ、彼女にまで矛先を向けるなと。
けれど、声にならなかった。自分が関わることで、咲良まで壊れていくのではないかという恐怖が、彼の中に深く根を下ろしていた。
「僕が、そばにいるから…」
そう呟いた光の声は、自分自身に向けた呪いのようだった。




